9 / 38
8 ハズレクラスとゴミスキル、おまけに不遇なステータス
しおりを挟む声がした方へ視線を向けると、二人のプレイヤーが立っていた。
片方はソフトモヒカンで軽装の男。
もう一人もソフトモヒカンで軽装の男。
色合いや雰囲気は違うけど、同じような装備をしている。
流石に武器は違うっぽいけど、顔はよく似てる。
双子か?
「誰ですかこの人達?」
「もずく兄弟……!?」
レンが驚いたように二人を見ている。
二人の名前は、≪モズ≫と≪ズク≫。
二人合わせてもずく、ってか。
「いや、本当に誰ですか?」
「有名なプレイヤーだよ。CPOのβテストでかなりがっつりとやりこんでたっていう」
「そう、オレ達こそがCPOの最先端をひた走る最強プレイヤー兄弟!」
「モズと!」
「ズクだ!」
その最強プレイヤー兄弟とやらが何故絡んで来るのか。
俺達はまったりプレイのエンジョイ勢だぞ。
「そっちのエルフ、お前≪空間爆縮≫なんて取ったのか?」
「そうだけど、何か?」
「あーあ、可哀そうに。あんなゴミスキル取っちまうなんて。なぁ兄者」
「そうだな弟者。あれはよっぽど条件を揃えてなんとか使えなくもないかもしれない程度。貴重な初期スキルの枠をそんなものに割くとは、哀れ以外の何ものでもない」
二人揃って大きな高笑いを上げる。
なんだこいつら、本当に煽りに来ただけなのか?
悔しそうに拳を握るレンの前に出る。
「用が無いならどこかへ行ってもらえませんか?」
「おおっと、オレらが用があるのはカオルちゃんだけだから。なぁ兄者!」
「そうだぞ弟者! カオルちゃん、こんな産廃初心者放っておいて、オレ達と狩りしない?」
「お断りします」
考えるまでもない。
何故楽しむ為のゲームで、こんな不快な奴らと遊ばないといけないのか。
っていうか、こいつらの目当て俺だった!
俺が可愛過ぎるのがいけないんだな畜生!
カオルちゃんなんて可愛い呼び方やめてくれ!
現実でも散々からかわれていじめられたんだから!
「いやいやいや、さっきの見たでしょカオルちゃん。あのスキルはくっそメンドイ連携をこなしてやっと当てられるようなスキルだぜ? なぁ兄者!」
「全くだな弟者! 詠唱の間、前衛はモブが動かないように足止めしないといけないし、巻き込まれないようにギリギリのタイミングで逃げなきゃいけないんだ」
「前者をするのに避けタンクだとしんどいし、後者は受けタンクだとタイミングがシビア過ぎる。なぁ兄者」
「その通りだ弟者。それだけ苦労して得られるメリットは、一体を倒せるだけ。この辺なら他のスキルを使うか、素直に殴った方が早いよマジで」
「……詳しいですね」
「そりゃオレ達だって色々試しまくったからよ。なぁ兄者!」
「そうだな弟者! だからそいつのクラス≪破壊者≫も散々実体験したんだぜ? そうやって辿り着いた結論が、≪破壊者≫は不遇クラス。≪空間爆縮≫はゴミスキル、ってわけよ」
そうか、こいつらβテスターって言ってたな。
βテスターというのは、製品化前にお試しプレイをした人達のこと。
「あとあれだな、≪魅力≫は振る意味無さ過ぎるゴミステータス。なぁ兄者」
「その通りだ弟者。どれだけ振ってもNPCがおまけしてくれたり、しょっぱいイベントが発生する程度。≪魅力≫依存のスキルはどれも使い勝手が最悪だ」
何故かついでのように俺まで馬鹿にされた気がする。
こいつらに俺のステータスは見えない筈だから、単純に流れで口にしただけなんだろうけど。
そんなに役に立たないのか、≪魅力≫って!
流石に一足先にプレイしてるだけあって、その知識は馬鹿にならない。
しかもβテスターには少し特典もついてたんだったか。
言葉通り、このゲームでは最強クラスのプレイヤーなのかもしれない。
だけど、大きなお世話だ。
言葉を続けようとしたところで、俺の前に立つ影があった。
レンだ。
「忠告ありがとう。だけど僕達は僕達で、使い道を探したいんだ。放っておいてくれ」
「はっ、自分で模索したい気持ち、分かるぜ。なぁ兄者!」
「全くだな弟者! ならばその心意気、汲まないわけにはいかねぇな!」
割と素直?
βテスターでも物凄い活躍したらしいし、自分達で色々試さないと納得出来ない人種なのかもしれない。
口は悪いしなんかノリが軽いけど。
「しかし、そのままって訳にもいかねぇよな、兄者」
「よく分かってるな弟者。レン、そしてカオルちゃん、二人に決闘を申し込む!」
「決闘!?」
「分かった、受けて立つよ」
「ええ!?」
こうして、何故か俺達は決闘することになってしまった。
とはいえ今すぐではない。
次の次の日曜日、リリース十日目を記念して初のイベントがある。
それは、プレイヤー同士の大決闘大会。
そのタッグマッチの部で決着をつけようということらしい。
向こうが勝てば、俺はあいつらとパーティーを組む。
こっちが勝てば、ゴミスキルと言ったことを謝る。しかも、レアなアイテムを慰謝料代わりにくれるらしい。
俺が驚いてる間にレンが話を纏めてしまったから、これで決定してしまった。
もずく兄弟はご機嫌な様子で去って行った。
二層へ続くダンジョンのボスを倒しに行くらしい。
「ごめんなさい、勝手に決めてしまって」
「うー……」
まぁ、決まったものは言っても仕方がない。
ようは勝てばいいんだ。
勝て、ば?
俺は魅力極振りで、変な騎士に絡まれる姫。
レンは唯一の攻撃スキルが使い勝手最悪の、魔力極振り魔法使い。
対する向こうは、β時代からやりこみまくった有名プレイヤー。
装備も動きも、色んな意味でレベルが違う。
勝てるか?
いや、勝つんだ。
あんなのとパーティー組むとか、常に効率狩りを要求されて息が詰まりそうだ。
「こうなったら、なんとかして勝ちましょう。≪空間爆縮≫さえ使いこなせればきっと勝てます。そして、ぎゃふんと言わせてやりましょう!」
「ありがとう、カオルちゃん」
カオル、ちゃん?
ああ、俺今女の子だった。
なんとなくだけど、恥ずかしい。
「カオルちゃん、っていうのはちょっと、恥ずかしいといいますか」
「あ、ごめん。それじゃあ……姫ちゃんっていうのはどう?」
「……姫?」
「えっと、カオル、さんのクラスって≪プリンセス≫なんだよね。装備もお姫様みたいだから、そう呼びたいんだけどダメ、かな?」
姫、姫かぁ。
本名じゃないしセーフ?
クラスを仇名にするくらい、ゲームで知り合ったばかりなら自然だよな。
よし、そう呼んでもらうことにしよう。
「それくらいなら大丈夫ですよ」
「じゃあ、姫ちゃんって呼ぶね。僕のことも好きに呼んでいいから」
「分かりました」
こうして、俺とレンは≪空間爆縮≫の使い道を必死に探すことになった。
≪空間爆縮≫に拘る必要はないんだけど、どうせならこのスキルで見返してやりたい。
俺とレンの思いは一つだと思う。多分。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
ゲームで第二の人生を!~最強?チート?ユニークスキル無双で【最強の相棒】と一緒にのんびりまったりハチャメチャライフ!?~
俊郎
SF
『カスタムパートナーオンライン』。それは、唯一無二の相棒を自分好みにカスタマイズしていく、発表時点で大いに期待が寄せられた最新VRMMOだった。
が、リリース直前に運営会社は倒産。ゲームは秘密裏に、とある研究機関へ譲渡された。
現実世界に嫌気がさした松永雅夫はこのゲームを利用した実験へ誘われ、第二の人生を歩むべく参加を決めた。
しかし、雅夫の相棒は予期しないものになった。
相棒になった謎の物体にタマと名付け、第二の人生を開始した雅夫を待っていたのは、怒涛のようなユニークスキル無双。
チートとしか言えないような相乗効果を生み出すユニークスキルのお陰でステータスは異常な数値を突破して、スキルの倍率もおかしなことに。
強くなれば将来は安泰だと、困惑しながらも楽しくまったり暮らしていくお話。
この作品は小説家になろう様、ツギクル様、ノベルアップ様でも公開しています。
大体1話2000~3000字くらいでぼちぼち更新していきます。
初めてのVRMMOものなので応援よろしくお願いします。
基本コメディです。
あまり難しく考えずお読みください。
Twitterです。
更新情報等呟くと思います。良ければフォロー等宜しくお願いします。
https://twitter.com/shiroutotoshiro?s=09
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
狭間の世界
aoo
SF
平凡な日々を送る主人公が「狭間の世界」の「鍵」を持つ救世主だと知る。
記憶をなくした主人公に迫り来る組織、、、
過去の彼を知る仲間たち、、、
そして謎の少女、、、
「狭間」を巡る戦いが始まる。
私の召喚獣が、どう考えてもファンタジーじゃないんですけど? 〜もふもふ? いいえ……カッチカチです!〜
空クジラ
SF
愛犬の死をキッカケに、最新VRMMOをはじめた女子高生 犬飼 鈴 (いぬかい すず)は、ゲーム内でも最弱お荷物と名高い不遇職『召喚士』を選んでしまった。
右も左も分からぬまま、始まるチュートリアル……だが戦いの最中、召喚スキルを使った鈴に奇跡が起こる。
ご主人様のピンチに、死んだはずの愛犬コタロウが召喚されたのだ!
「この声? まさかコタロウ! ……なの?」
「ワン」
召喚された愛犬は、明らかにファンタジーをぶっちぎる姿に変わり果てていた。
これはどこからどう見ても犬ではないが、ご主人様を守るために転生した犬(?)と、お荷物職業とバカにされながらも、いつの間にか世界を救っていた主人公との、愛と笑いとツッコミの……ほのぼの物語である。
注意:この物語にモフモフ要素はありません。カッチカチ要素満載です! 口に物を入れながらお読みにならないよう、ご注意ください。
この小説は『小説家になろう』『カクヨム』にも投稿しています。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる