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新たな始まり
286 新たな盾と噂話
しおりを挟む盾の見た目をじっくり眺めた。
大きさが一メートルを越えてそうな大盾だ。
二枚の正方形を重ねて、丁度四十五度ずらしたようなデザインをしている。
角が倍の八つもあるから刺々しく見える。
中心部には、格好いいドラゴンの絵が彫ってある。
うん、相変わらずセンスが良い。
とんでもないカッコよさだ。
「カッコイイですね。いい感じです」
「そうか、気に入ってもらえたんなら良かった」
「タケのデザインセンスは見た目通り、ずば抜けておるからな。大した男だわい!」
「ふっ、照れるぜ」
素直な感想を伝えると、筋太郎が更に褒める。
それに対してタケダは、照れたようにポーズを決めた。
すごい筋肉だ。
ゲームのクオリティの差なのか。
それともタケダの筋肉のポテンシャルの成せる技なのか。
どっちかは分からないが、≪ボディビルVR≫で見た筋肉と比べても明らかに格が違う。
もう存在感からして違う。
これは、世界を背負う筋肉だ。
って、また筋肉に引きずり込まれそうになっていた。
ダメだ、心を強く持たないと帰って来られなくなる。
次は、盾の性能を確認する。
≪暗黒時空竜盾ゴーレム≫
武器/盾/ゴーレム レア度:A+ 品質:B
Def:618 Mdef:229
盾の形をした小型のゴーレム。装備品として使用出来るが、ゴーレムなので簡単な命令を与えれば自動で行動することも可能。
更に、装備者の魔力によって遠隔操作も行う事が出来る。
遠隔操作時、自律行動時の速度は装備者のIntとDexに依存する。
攻撃を受けたことのあるモンスターからのダメージ-20%。
攻撃に盾を使用した時、Atk+100
スキル:≪自律行動≫≪遠隔操作≫≪浮遊≫≪飛翔≫
物理防御の数値が高い。
魔法防御も、俺の盾ゴーレムよりは低いものの、充分な数値がある。
保有スキルは変わらないが、盾自体に効果が増えている。
攻撃を受けた相手からのダメージを軽減?
それって盾としてはかなり破格の効果の筈だ。
詳しく調べてみると、やっぱりそうだ。
この≪攻撃を受けたことのあるモンスターから≫、というのは同一個体を意味する言葉じゃないようだ。
簡単に言えば、同じ名前、同じ見た目のモンスターからの攻撃、ということになるらしい。
これは、二回目以降の攻撃なら誰に対しても20%の軽減が出来るということだ。
一回しか攻撃を受けないようなことは、普通なら無いだろう。
かなり強い気がする。
どの素材の効果だろう。
なんとなく、≪歴史装甲板≫とかいう板から来てるんじゃないかと思う。
「強いですね」
「それに関しちゃ、俺の腕というよりは素材の強さだ。雑晶以外の素材はレア度が俺の大胸筋レベルだったからな」
「おお、そりゃすげぇや! タケの大胸筋とくりゃ国宝級だぞ!」
「なるほど、よく分かりません」
「こくほー級のマッスル! すごい!」
タケダと筋太郎の表現は、俺には難しすぎる。
ゴロウとはまた違うベクトルで理解しにくい。
感性の違いだろうか。
単純に、筋肉が足りないのかもしれない。
いや、タマは理解してるようだから筋肉じゃないか。
Strの数値なら、俺もタマもぶっ飛んでるんだけど。
おっと、もう一つ用事があったんだった。
筋肉に気圧されて忘れる所だったよ。
「タケダさん、お願いがあるんですけどいいですか?」
「何だ? ナガマサさんの頼みなら、大抵のことは引き受けるぜ」
「これなんですけど」
初心者シリーズの一本を取り出して、俺の考えを話す。
ストーレにいる初心者達に行き渡らせる為に、安く売るから少しだけ上乗せした値段で流してほしいと。
家を囲まれたとか、その辺りは話す必要も無いので伝えていない。
自分のせいで、なんて思われてもあれだからな。
「それくらい全然構わないぜ。俺にも儲けのある話だからな」
「ありがとうございます」
「おお、今巷で噂のモジャってのはあんただったか。こりゃ光栄だわい!」
「噂?」
なんと、彗星の如く現れた凄腕武器職人、という感じでモジャの名前はかなり有名になっているとのことだった。
ソロで狩りに明け暮れていた、一人のβNPCがいた。
来る日も来る日も狩りに出て、モンスターを狩ってレベルを上げる日々。
しかし、彼はソロだった。
目的も無く、ただ危険と戦い続けることに疲れた彼は、一人の少年と出会った。
その少年はお金に困っており、身の丈に合った武器を持っていなかった。
そこらで拾ったと思われるくたびれた剣は、切れ味も悪く、少年が扱うには大きすぎた。
なんやかんやあって仲良くなるうちに少年に武器を買って渡そうとしたが、頑として譲らなかった。
少年は、自分の稼ぎで新しい武器を買うのだと、笑っていた。
しかし、少年は死んだ。
いつもより少し強いモンスターに挑み、剣を扱いきれず死んだ。
そのことを嘆き悲しんだ≪モジャ≫は、武器を捨て、小さな村に引きこもった。
そこで、初心者の為の武器を作る為に。
こんなストーリーもセットだと、筋太郎が野太い声で語ってくれた。
長い!
なんだこの設定は。
っていうかこれ誰だ。
βNPCが死ぬとか認識してるの?
どういうことだ?
「βテスト終了とリリース開始では、少し間が空くだろう? その間もβNPC達は自動で行動しておって、死んだ場合は今と同じくゲーム内から消えるようだ。そんなことを、一般プレイヤー共が話しておったわい」
ううん?
分かりづらいが、一応噂として成立はするってことか?
それにしても、どうなったらそんな物語が完成するんだ。
武器を流したら余計に加速しそうだけど、それは仕方がない。
タケダと武器を渡して、お金を受け取った。
最後に、また近いうちにフルーツアイランドへ行くことを約束した。
筋肉の島にはあの筋肉錬金術師の筋太郎も興味を示したので、一緒に連れて行くことになった。
筋肉×筋肉×筋肉か。
すごい絵面になりそうだ。
ミルキーや葵は連れて行かない方が良いだろう。
用事も済んだ。
ご機嫌な二人に挨拶をして、タケダの露店を後にした。
さあ、次だ。
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