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新たな始まり

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 相棒のスキルは、プレイヤーと同じ部分もあり、違う部分もあった。

 まず、二種類に大別されるのは同じ。
 一つはパーソナルスキルで、これも同じ。
 違いとして、もう一つは≪特徴スキル≫と呼ばれる。

 この特徴スキルは、相棒達が取得出来る共通のスキルの中から選んで取得する。
 相棒の持っている資質に関係なく、どの相棒でも同じスキルが取得できる訳だな。

 ただし、同じスキルでも相棒によって微妙に効果の大小は違うそうだ。
 苦手なこともカバー出来るけど、得意な奴には勝てない感じか?

 それでも、スキルの一覧を見てると色々夢が膨らむ。
 サイズを大きくしたり小さくしたり、浮かせたり飛ばしたり。
 数を増やすスキルもある。

 気を付けないといけないのが、スキルのレベルアップだ。
 パーソナルスキルは、ポイントを消費してLv1で取得する。
 その後は、使っていくことでスキルレベルが上がっていく。

 しかし、相棒の特徴スキルはそうではない。
 ポイントを消費して取得までは同じだが、レベルアップにもポイントを消費しなければならない。
 単純に、ポイントを割り振ってカスタマイズする感じだな。

 感覚的にはステータスに近いのかもしれない。
 効果や項目が多岐に渡るだけだ。

名前:ルイン
相棒/金貨/魔法道具/???
Lv:1
Str:1
Vit:1
Agi:1
Dex:1
Int:1
Luc:1

相棒Lv:1
スキル:なし
特徴スキル:光沢 Lv1

 そしてこれが、ルインのステータス。
 見事に真っ平らだ。
 特徴スキルを一個持ってるが、テカッとするだけのスキルだった。
 なんだこれ。

 チュートリアルでステータスのボーナスポイントを5点もらったが、まだ振ってない。

 ルインってどういうステータスがいいのか分からないからな。
 また後で、パーソナルスキルを見てから決めようと思う。

「説明はこんな感じよ。分かったかしら?」
「はい、大体は」

 頷くと、ルインの上に花火が上がった。
 相棒レベルが上がったらしい。
 演出は同じなんだな。

「ゼノ、早速スキルを取るわよ!」
「はいはい。相棒レベルってことは、特徴スキルか」

 待ち遠しそうなルインに急かされて、リストを開く。
 特徴スキルは共通なだけあって、かなりの種類がある。
 項目ごとに整理されてはいるが、把握するのは時間がかかりそうだ。

「んー、ルインはどのスキルがいいんだ?」
「リスト見せてもらえる?」

 あまりにも数が多い。
 じっくり時間をかけて決めたくなるし、ルインに丸投げしよう。
 ルインなら、パッと欲しいものが思いつくかもしれないし。

 スキルリストのウインドウを、ルインの方へついーと投げる。
 ある程度なら遠隔で操作出来るようだ。

「うーん、どれにしようかしら。これもいいし、あっ、でもこれも良さそう。うーん……」

 ルインもリストを眺めているのか、悩ましげな声をあげている。
 時間が掛かりそうなら後でもいいんだけど。

「決まりそうか?」
「待って、今……決めた! ≪浮遊≫にしてちょうだい!」
「はいよ」

 ルインの希望に応えて≪浮遊≫を取得。
 すると、ルインが俺の掌から浮かび上がった。

「やった、飛んでるわ!」
「おお、すごいな」

 ふよふよと頼りない感じではあるが、確かに飛んでいる。
 飛んで喋るコインとは、また珍妙なものになっていってる気もするが、嬉しそうだから言わないでおこう。

「ふふん、これであんたに持っててもらわなくても大丈夫よ!」
「え、もしかして俺に気を遣ってそのスキルにしたのか?」
「べ、別にそういう訳じゃないわ。いつまでも持っててもらうのも癪だからよ」
「はいはい、ありがとうな」
「違うってば!」
「分かった分かった」
「絶対分かってないでしょ!」

 ぎゃいぎゃい騒ぐルインを適当にあしらっておく。
 どうやらこの世界では、肉体的な疲労やスタミナという概念はなさそうだ。

 さっきまでずっと肘を曲げて掌にルインを乗せていた。
 多分現実なら腕がだるくなっていただろうが、全く疲れていない。

 だけどルインは気にしてくれたようだ。
 態度はどこか偉そうだが、優しい感じもするんだよな。
 スキルなんて好きなのを取ればいいのに。

「スキルはばっちり取れたかしら?」
「はい、お蔭様で」
「そう。それじゃ説明は以上よ。知りたいことがあれば、またいらっしゃい」
「ありがとうございます」
「ありがとね」

 お礼を言ったところでまた花火が上がった。
 ここでも相棒レベルが上がるのか。
 サービスがいいな。
 基本レベルは変わらずだから、その分かもしれないが。

「おっ?」
「帰って来たみたいね」

 気付けば、元の草原にいた。
 チュートリアルが終了したらしい。

 見渡せば、既にプレイヤー達が駆けずり回っている。
 ここからが俺達の冒険の始まりだ。

「さー、楽しむぞ! いけるか、ルイン」
「任せときなさいよ。あんたこそ、私の為にしっかり働いてよね」
「へいへい」

 とりあえずは現状把握と、それが済んだら近くの街へ行こう。
 マップで確認したところ、ここのすぐ隣に≪ストーレの街≫がある。
 ここで狩りをするのもいいが、まずは情報収集がしたい。

 じゃあ現状把握からか。
 俺の装備はどうなってるかなっと。

 ふむふむ、普通の服を除けば≪初心者用皮鎧≫と≪初心者用ナイフ≫だけか。
 しょっぱいな。
 ストレージは……≪初心者用ポーション≫10個のみ。
 
 武器はこのナイフしかないのかよ。
 俺魔法型なんだけど。
 うっわ、ミスったなぁ。

「くすくすくす」
「こらルイン、何が可笑しいんだ」
「だって、武器がナイフしかないのに魔法型って、ぷすす」
「杖くらいあると思うだろ! ったく、しょうがない、最初はこれで地道にレベルを上げるしかないか」

 まだノービスだし、転職まではこの短剣でなんとかなるバランスなんだろう。
 多分。
 というかそうじゃなかったらマジで困るから頼む、そうであってくれ。

 じゃあ次はスキルでも見るか。
 さっきのチュートリアルで基本レベルが上がって、ステータスは振った。
 だけどスキルは振ってない。

 パーソナルスキルはどんなのがあるんだろうか。
 楽しみだ。
 βテストでは猛威を振るったらしい、ユニークの一つや二つ生えてると面白いんだけど。

「ねぇゼノ」
「どうした?」
「何か走って来るわよ」
「うん?」

 何か来てる?

 操作ウインドウに集中していたが、ルインの言葉で顔を上げる。
 しかし、遅かったようだ。

「あっ――」
「えっ――」
「あーあ」

 ルインが、すーっと上に上がっていく。
 そして後ろから、衝撃。
 何の心構えも出来ていなかった俺の身体は、簡単に吹き飛ばされてしまった。

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