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261 手料理と予定
しおりを挟む畑仕事を終えた俺達は、食卓についていた。
葵とムッキーも一緒に帰って来たから、全員揃っている。
中々の人数だけど、リビングは広いから全く問題ない。
テーブルもうちの家族だけなら、充分なスペースがある。
ミゼルの家で使ってたやつだからな。
大きくて高級感がある。
元々ウチで使ってたやつは仕舞ってあるが、お客さん用にするか。
「お待たせしました」
「お待ちどうモジャー」
出来上がった料理をタマAとミゼルが運んでくる。
俺も手伝おうと思ったけど、やんわりと断られた。
ミルキーもだ。
最初の食事くらいは、なるべく一人の力で準備したかったそうだ。
タマが手伝っているのは、タマがミゼルにどうしてもとお願いした結果だ。
可愛くてつい許可しちゃったんだろう。
よく分かる。
タマにお願いされたら大抵のことは許してしまう自信があるぞ。
「こちらモジャサラダになります!」
「やったー!」
そのタマは二人に分裂して、席に座るタマBに配膳している。
タマBも大喜びだ。
いや、モジャサラダってなんだ。
俺の目の前にも大皿に乗ったサラダが置かれる。
「どうぞ、モジャサラダですよ」
「えっ、ほんとに?」
「ふふ、冗談ですわ」
聞き返した俺に、ミゼルは悪戯っぽく笑った。
くそう、そんな笑顔も出来るのか。
なんて可愛いのか。
ミゼルまでモジャネタで来るのは予想外だった。
大皿と小皿が並べられて準備が整った。
全員が手を合わせて、一斉に食べ始める。
いつものことながら、タマの食べっぷりはすごい。
しかも今日は二人分だしな。
まさか二倍食べたりするんだろうか。
「皆さん、お味の方は如何ですか?」
「うん、美味しいよ」
「美味しいです」
「ガツガツモジャモジャ」
「ガツガツモジャモジャ」
「美味しい……! あ、それは私のだよタマ!」
「早い者勝ちだよ葵!」
『所詮この世は弱肉強食か……世知辛いのう。ん、おろし金よ、これも美味じゃぞ』
「キュル!」
ミゼルが気合いを入れて作ってくれただけあって、料理はすごい美味しい。
ミルキーにも引けを取らない。
王女様だったのに、すごいな。
俺達の為に頑張ってくれたんだろう。
有難いことだ。
それにしても騒がしい。
主にタマと葵のバトルが原因だな。
皆慣れてしまったのか、動じてない。
「くっ、強い……!」
「タマはさいきょーだからね! 本気はまだまだこんなものじゃないよ!」
「タマはさいきょーだからね! 本気はモジャモジャこんなものじゃないよ!」
「三人とも、ご飯は大人しく食べないとダメですよ」
「「「はーい」」」
葵と二人のタマが立ち上がったところで、ミルキーの注意が入った。
三人は素直に、大人しく食事を再開した。
仲良くこれ美味しいよ、なんて言い合っている。
微笑ましい。
「ナガマサさんも、注意してあげないとタマちゃんが立派に育たないですよ」
「ごめんなさい」
俺も怒られた。
確かに、叱るべきところはきちんと叱らないといけないな。
教育って難しい。
相棒って、そういう面で成長するんだろうか?
でもタマは以前よりも賢くなってるし、気を遣ってくれてるような気がするんだよな。
このゲームのAIは高性能過ぎてどこまで出来て、どこからが出来ないのか分からない。
「沢山作ったので、どんどん食べてくださいませ」
「ありがとう」
ミゼルが空になった小皿にサラダを盛ってくれる。
笑顔のトッピングでいくらでも食べられそうだ。
食事の後は作戦会議だ。
今日一日の予定はある程度決まっているが、完璧に詰めてあるわけじゃない。
各自の行動予定を聞いて、把握しておきたいというのもある。
俺の予定は、≪純白猫≫に頼んでおいた装備の受け取り。
葵へのプレゼントだから、重要な用事だ。
これだけは絶対に外せない。
後は余裕があれば、≪忘却の実験場≫の探索。
あそこのギミックを弄ればMVPモンスターが出てきそうな気がする。
もしかしたらゴーレム系統のボスで、≪ゴーレム結晶≫が手に入るかもしれないから、出来れば今日の内に倒してみたい。
何せ今日の正午がサービス開始だ。
全員が全員同時にログイン出来る訳でもないだろう。
それでも、最大一万人は多い。
その一般プレイヤー達がゲームを始めたら、しばらくは狩場が混雑してもおかしくはない。
≪ストーレ鉱山≫は難易度的にそこまで高くないようだから、一般プレイヤーもすぐに押し寄せてくるだろう。
あの狭い通路で出来たダンジョンが混んだら……。
移動がひたすら面倒になるな。
≪忘却の実験場≫自体は大丈夫だろうけど、道中に一般プレイヤーがひしめき合うだけで行く気は失せる。
後回しにするにしても、二日くらいが限度かな、多分。
でも何度か通うことを考えたらやっぱり今日行ってしまいたい。
全体の予定としては、今日は18時から葵の送別会がある。
俺達家族は、12時からは極力家を出ないようにする。
だからそれまでで用事を済ませる必要がある。
ミルキーと葵は、ミゼルを連れて近所に狩りに行きたいらしい。
これは親睦と、ミゼルのレベルアップを兼ねている。
ミゼルのレベルアップに関してはミルキーとも話し合って決めたことだ。
守るつもりではあるが、レベルが高くて困ることもないだろうしな。
不測の事態には備えておきたい。
おろし金はミルキー達に同行する。
葵とミゼルは空を移動出来ないから、乗り物になってもらう。
勿論ミゼルの護衛も兼ねている。
金剛石華は村の酪農家を周るそうだ。
そんなに頻繁に見る事があるのかとも思ったが、話し相手になるだけでも喜ばれるらしい。
ミルキーによれば、この村のお年寄りの中ではアイドルみたいな扱いになっているんだとか。
流石女王、コミュニケーション能力が高い。
なんだ、各自予定はしっかり決まっていた。
最後に、12時には家に帰ってくるように改めて伝えた。
何が起きるか分からないからな。
最悪数日はこの家に引きこもって様子を見るつもりもある。
今は午前7時。
さあ、行動開始だ。
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