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252 祝福と幸運
しおりを挟む「おめでとモジャー!」
「ごふっ!?」
「きゃっ!」
散々はしゃいだ後、床に降り立った。
と思ったらタマにタックルされた。
中々の衝撃で、なんとか耐えたけどびっくりした。
それをきっかけにしたのか、みんなも動き出した。
お祝いの言葉を口にしながら迫ってくる。
お祝いされるのってこんなに激しいものなのか?
タマはタックルした姿勢のまま、俺とミルキーに抱き着いている。
葵も同じようにしている。
どちらかと言うとミルキー側だ。
「おめでとうミルキー。ナガマサが頼りなかったら言って……!」
「ふふっ、ありがとう」
至近距離でミルキーにお祝いの言葉を伝えて、ミルキーと二人で照れている。
なんだこれ天国か?
幸せすぎて死んでない? 大丈夫?
二人が避けたところで、次はおろし金の突進だ。
あまりの勢いについ避けようと思ったが、きっとこれも愛情表現。
なら受け止めるべきだろう。
今の俺はきっと無敵だ。大丈夫。
抱きしめっぱなしだったミルキーの身体を離す。
名残惜しい。
流石にミルキーを間に挟んで受け止める訳にもいかないし、仕方ない。
死にはしないだろうけど、鬼畜過ぎる。
奥さんは大事にしないといけないからな。
激突寸前にがばっと立ち上がったカナヘビモードのおろし金の身体を受け止めた。
ダメージも特に無いし大丈夫だな。
斜めになったおろし金は、頭が俺の肩の上に来ていた。
タマがやっているように盛大に撫でてやる。
「よーしよしよし、お前も祝ってくれるのか?」
「キュル!」
「よしよし、ありがとうな」
しばらく撫でまわした後、おろし金を床に下ろした。
邪魔にならないようにささっと避けてくれた。
気遣いの出来る良い子だ。
そこらへんの魔王モドキにも負けないくらい強いしな。
そういえば、ワールドクエストの発生前にクリアしたんだっけ。
あの≪魔の者≫とかいうのはどうなったんだろう。
他にもいるんだろうか。
『二人とも、いや、三人か。ともかく、おめでとうなのじゃ』
「石華。ありがとう」
「ありがとうございます」
『わらわもナガマサに救われた身、そなたらの為ならば喜んでわらわの全てを捧げるぞ』
石華が自分の太ももを撫でながら怪しく笑う。
普段は気にならないのに、今はどうしても視線がいってしまう。
「それは嬉しいんだけど、そんなに気にしなくてもいいよ。それで、その後ろの騎士達は何?」
石華の後ろには騎士達がいた。
透き通っていて、明らかに人間じゃないのが分かる。
≪ダイヤモンドナイト≫が一体と≪クリスタルナイト≫が五体だ。
気になって仕方がない。
『ああ、これは祝いの剣舞でも披露しようかと思うてな』
「気持ちは有難いんだけど、またの機会に外で見せてもらっていいか?」
『仕方ないのう、ではそうするのじゃ』
石華の言葉に合わせて騎士達が消える。
見てみたいが、室内だしな。
テーブルをどかしてワクワクしていたタマ達には悪いけど、また今度。
せっかくの新築(?)に傷がついたら大変だ。
石華が後ろに下がる。
次は、ムッキーがそこにいた。
両腕を広げて歩いて来ている。
え、ムッキーも? さっきまで居なかったと思うんだけど。
やめてくれ、筋肉がうつる。
とは言っても、お祝いのハグを避けるのもあれだ。
ミルキーがさっと俺から距離を取った。
まさかの裏切り。
しかしそうはいかない。
隣に瞬間移動して、がっしりと肩を抱く。
「ミルキー、俺達婚約したんだよね?」
「それとこれとは話が別といいますか……!」
ミルキーの抵抗も虚しく、ムッキーの熱い抱擁を二人で受け取った。
ムッキーの筋肉は固かさの中に柔らかさとしなやかさがあった。
宝石化してるのに何故だ。
宝石化してても、筋肉は筋肉ということだろうか。
ミゼルは一部始終を遠巻きに眺めていた。
勿論笑顔だ。
これから三人で夫婦として暮らしていくのか。
これまでよりも、もっと楽しい人生が送れそうだ。
いや、絶対にそうしてみせる。
めいっぱい祝福してもらった後は、一旦食事となった。
ミゼルとミルキーが二人で作ってくれるらしい。
せっかくだからと俺も手伝いたかったが、座っているように言われた。
タマと葵がリバーシで遊んでいるのをぼーっと眺めて時間を潰す。
石華特製で、盤も駒も、全て結晶で出来ている。
キラキラ光って豪華で綺麗だ。
駒は裏表で色の区別は無い。
リバーシはやったことないんだけど、それで成立するものなんだろうか。
二人は楽しそうだし、気にすることじゃないか。
「「「いただきます」」」
「いただきまーす!」
出来上がった料理を、皆で食べる。
今日も美味しい。
笑顔が増えた分、きっといつもより美味しい。
ミルキーとミゼルも仲良くお話しているし、これからが楽しみで仕方がない。
あっ、俺のお肉!
「おいしいモジャー!」
「まったくもう……。そういえばミルキー、メッセージの件だけど――」
「あれは、呼び出す為にちょっと大袈裟に書きました」
やっぱりか。
普通に帰ってきてと言ってくれても帰ったのに。
多分、何かあったか確認はするだろうけど。
それを嫌がったのかな。
「それなら良かった」
「ナガマサさんがいるのに、あれくらいで不安になったりしませんよ」
不意打ちだった。
どうしよう、すごく嬉しい。
けどなんか照れる。
「な、なんて思っちゃったりですね、あ、あははー」
ミルキーも時間差で恥ずかしくなったようだ。
いつになく混乱している。
可愛い。
ミゼルが嫁いでくることになって、用意はしてたけどミルキーにもプロポーズすることになるとは思わなかった。
今日銀を拾っていて良かった。
ありがとうモジャの神。
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