225 / 338
217 伝説の素材
しおりを挟むここからだと城を経由するよりも、そのまま外に出た方が早い。
一番早いのは教会ワープだが、万が一PKに出待ちされていたら嫌だからな。
おろし金で飛んでいけば、PKがいてもそのまま突っ込めて話も早い。
タマと二人で門から外へ。
タマの放ったコインからおろし金が召喚された。
「おろし金、ウチまで頼む」
「キュルル!」
多少の人目はこの際気にしない。
初心者もほとんどいなくなったようで、そんなにプレイヤーもいないし。
おろし金の背中でミルキーにメッセージを送る。
あっという間に村が見えてきた。
速度と高度が落ちていき、我が家が近づいてくる。
PKらしき集団や、争っている雰囲気は見えない。
≪モジャの家≫の裏手に備え付けられた放牧ゾーンに、おろし金が降り立った。
金剛の建てた結晶の城も健在。
特に変わったことはなさそうだ。
「おろし金、ありがとな」
「キュルル!」
お礼替わりに、俺のとっておきを口元目掛けて放り投げる。
おろし金は緩やかな弧を描いて飛ぶ≪食用クワガタの丸焼き≫を口でキャッチした。
バリバリグシャッという音を背中に聞きながら、裏口の扉を開ける。
「ただいま」
「ただいまー!」
「あ、おかえりなさい。今お返事送ったところでしたよ」
「ほんとだ」
「おかえり……!」
リビングにはミルキーと葵がいた。
開きっぱなしのメッセージ画面に、新着メッセージが表示されている。
タイミングが丁度だったようだ。
俺が送ったのは、何か変わったことがないかを聞くメッセージ。
ミルキーからの返事には、特に何もないがどうかしたのか? ということが書かれていた。
「実はタケダさんのところで武器を持って隠れてる怪しい男に遭遇したから、葵ちゃんの方にもそういうの来てないかなと思って」
「そうなんですね。いつものように畑で特訓して、今は休憩中でしたけど特に何も無かったですよ」
「そっか、なら良かった」
この村は相変わらず平和だったようだ。
ただ、念の為今日は俺とタマとミルキーの三人体制でしっかりガードしておこう。
今日は素材集めに出るのは止めておく。
葵の装備に関してはとりあえず今ある素材をあるだけ渡して、進めてもらえばいい。
「葵ー! 元気だったー!?」
「わわっ……!? 師匠にあと一歩のところで勝てない」
「ビュッ! っていってズバッ! っとしてドカン! ってやれば勝てるよ!」
「うん、ちょっとわかんない」
ほとんど持っていない金属系の素材に関しては、一つ試してみたいことがある。
これが上手くいけば、鉱山へ突撃する必要もなくなる。
しかも、下手な素材よりも強力な素材が手に入ると思う。
物は試しだ。
放牧エリアへ出ると、おろし金がドラゴンモードのまま日向ぼっこしていた。
丁度いい。
「おろし金、お願いがあるんだけどいいか?」
「キュル?」
「おろし金の素材を、なんでもいいから分けて欲しいんだ」
おろし金は、色々なコインを吸収して今の姿になっている。
モンスターとしての正式名称は≪滅魔神剣金蛇(めつまカナヘビ)エボリュート≫。
金の蛇だ。
この金はゴールドじゃなくて、メタルの金だろう。
その鱗はギザギザでトゲトゲしいが、金属の光沢を持っている。
そんなおろし金の素材なら、純白猫から送られたリストの金属素材として使えるかもしれないと思った訳だ。
「キュル!」
おろし金は短く鳴くと、ぶるぶると身体を振るわせた。
その振動で翼にいくつも生えた剣のようなものが数本落下。
地面へと突き刺さった。
「キュルル」
「えっ、これをもらっていいのか?」
「キュル!」
元気よく鳴きながら、首をぶんぶんと縦に振っている。
もらっていいらしい。
剣のような部分は長さが俺の身長くらいある。
幅も、20cmくらいかな。
鱗を一枚とかそういうレベルのつもりだったからびっくりだ。
黒っぽいものと銀色の二種類あるそれに触れて、ストレージに仕舞う。
二本ずつで計四本もくれた。
これだけあれば足りるだろう。
≪滅魔金蛇の神剣棘≫
レア度:S+ 品質:S
滅魔神竜の翼が変化した、闇を裂き魔を断つ剣。
その切れ味は、あらゆる魔を滅すると伝えられている。
伝説を超える素材であり、この素材でつくられた武器を携えた者は英雄と呼ばれるだろう。
≪滅魔金蛇の魔剣棘≫
レア度:SS+ 品質:S
滅魔神竜の翼が魔剣の力を取り込み変化した、光を裂き神を討つ魔剣。
その切れ味は、滅魔竜をも両断すると伝えられている。
伝説を超える素材であり、この素材でつくられた武器を携えた者は英雄と呼ばれるだろう。
素材の説明とレア度がやばい。
っていうか、これに柄だけつけても武器になりそうな気がする。
今度一本貰って試してみるか?
せっかく生産スキルが取れそうな職業(ジョブ)になったわけだし。
「ありがとう。これですごい装備作ってもらうからな」
「キュルル!」
「よしよし」
寄せてきたおろし金の頭を撫でてやる。
トゲトゲゴツゴツしてて、まさしくおろし金。
鱗の流れに逆らったら本当に卸されそうだ。
さて、素材は後は宝石か。
予備だから数はそんなにいらないかな。
ミルキーが残してたら買い取らせてもらおう。
「ミルキー、ちょっと相談があるんだけどいい?」
「はい、なんでしょう?」
宝石類を売って欲しいことを伝える。
使い道も合わせてだ。
あっさりとOKをもらった。
むしろ、何故早く言わないのかと怒られた。
いくらでも協力してくれるらしい。
どれくらい必要なのかはまだ分からないから、後で純白猫に聞いて必要な分提供してくれることになった。
「葵ちゃん、今からストーレに行こう」
「何しに行くの?」
「≪魔導機械士≫用の装備を作ってくれる人のところに行こうと思って。タマからもらった素材でサブウエポン作るって話、あったでしょ?」
「すぐ準備する……!」
準備と言っても装備を変更するだけだ。
葵はギルドでもらった≪魔導機械士≫用の初期装備を装備した。
0
お気に入りに追加
1,181
あなたにおすすめの小説
異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。
転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?
N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、
生まれる世界が間違っていたって⁇
自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈
嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!!
そう意気込んで転生したものの、気がついたら………
大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い!
そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!!
ーーーーーーーーーーーーーー
※誤字・脱字多いかもしれません💦
(教えて頂けたらめっちゃ助かります…)
※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる