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217 伝説の素材

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 ここからだと城を経由するよりも、そのまま外に出た方が早い。
 一番早いのは教会ワープだが、万が一PKに出待ちされていたら嫌だからな。
 おろし金で飛んでいけば、PKがいてもそのまま突っ込めて話も早い。

 タマと二人で門から外へ。
 タマの放ったコインからおろし金が召喚された。

「おろし金、ウチまで頼む」
「キュルル!」

 多少の人目はこの際気にしない。
 初心者もほとんどいなくなったようで、そんなにプレイヤーもいないし。

 おろし金の背中でミルキーにメッセージを送る。
 あっという間に村が見えてきた。

 速度と高度が落ちていき、我が家が近づいてくる。
 PKらしき集団や、争っている雰囲気は見えない。

 ≪モジャの家≫の裏手に備え付けられた放牧ゾーンに、おろし金が降り立った。
 金剛の建てた結晶の城も健在。
 特に変わったことはなさそうだ。

「おろし金、ありがとな」
「キュルル!」

 お礼替わりに、俺のとっておきを口元目掛けて放り投げる。
 おろし金は緩やかな弧を描いて飛ぶ≪食用クワガタの丸焼き≫を口でキャッチした。
 バリバリグシャッという音を背中に聞きながら、裏口の扉を開ける。

「ただいま」
「ただいまー!」
「あ、おかえりなさい。今お返事送ったところでしたよ」
「ほんとだ」
「おかえり……!」

 リビングにはミルキーと葵がいた。
 開きっぱなしのメッセージ画面に、新着メッセージが表示されている。
 タイミングが丁度だったようだ。

 俺が送ったのは、何か変わったことがないかを聞くメッセージ。
 ミルキーからの返事には、特に何もないがどうかしたのか? ということが書かれていた。

「実はタケダさんのところで武器を持って隠れてる怪しい男に遭遇したから、葵ちゃんの方にもそういうの来てないかなと思って」
「そうなんですね。いつものように畑で特訓して、今は休憩中でしたけど特に何も無かったですよ」
「そっか、なら良かった」

 この村は相変わらず平和だったようだ。
 ただ、念の為今日は俺とタマとミルキーの三人体制でしっかりガードしておこう。
 今日は素材集めに出るのは止めておく。
 葵の装備に関してはとりあえず今ある素材をあるだけ渡して、進めてもらえばいい。

「葵ー! 元気だったー!?」
「わわっ……!? 師匠にあと一歩のところで勝てない」
「ビュッ! っていってズバッ! っとしてドカン! ってやれば勝てるよ!」
「うん、ちょっとわかんない」

 ほとんど持っていない金属系の素材に関しては、一つ試してみたいことがある。
 これが上手くいけば、鉱山へ突撃する必要もなくなる。
 しかも、下手な素材よりも強力な素材が手に入ると思う。

 物は試しだ。

 放牧エリアへ出ると、おろし金がドラゴンモードのまま日向ぼっこしていた。
 丁度いい。

「おろし金、お願いがあるんだけどいいか?」
「キュル?」
「おろし金の素材を、なんでもいいから分けて欲しいんだ」

 おろし金は、色々なコインを吸収して今の姿になっている。
 モンスターとしての正式名称は≪滅魔神剣金蛇(めつまカナヘビ)エボリュート≫。
 金の蛇だ。
 この金はゴールドじゃなくて、メタルの金だろう。

 その鱗はギザギザでトゲトゲしいが、金属の光沢を持っている。
 そんなおろし金の素材なら、純白猫から送られたリストの金属素材として使えるかもしれないと思った訳だ。

「キュル!」

 おろし金は短く鳴くと、ぶるぶると身体を振るわせた。
 その振動で翼にいくつも生えた剣のようなものが数本落下。
 地面へと突き刺さった。

「キュルル」
「えっ、これをもらっていいのか?」
「キュル!」

 元気よく鳴きながら、首をぶんぶんと縦に振っている。
 もらっていいらしい。
 剣のような部分は長さが俺の身長くらいある。
 幅も、20cmくらいかな。
 鱗を一枚とかそういうレベルのつもりだったからびっくりだ。

 黒っぽいものと銀色の二種類あるそれに触れて、ストレージに仕舞う。
 二本ずつで計四本もくれた。
 これだけあれば足りるだろう。

≪滅魔金蛇の神剣棘≫
レア度:S+ 品質:S
滅魔神竜の翼が変化した、闇を裂き魔を断つ剣。
その切れ味は、あらゆる魔を滅すると伝えられている。
伝説を超える素材であり、この素材でつくられた武器を携えた者は英雄と呼ばれるだろう。

≪滅魔金蛇の魔剣棘≫
レア度:SS+ 品質:S
滅魔神竜の翼が魔剣の力を取り込み変化した、光を裂き神を討つ魔剣。
その切れ味は、滅魔竜をも両断すると伝えられている。
伝説を超える素材であり、この素材でつくられた武器を携えた者は英雄と呼ばれるだろう。

 素材の説明とレア度がやばい。
 っていうか、これに柄だけつけても武器になりそうな気がする。
 今度一本貰って試してみるか?
 せっかく生産スキルが取れそうな職業(ジョブ)になったわけだし。

「ありがとう。これですごい装備作ってもらうからな」
「キュルル!」
「よしよし」

 寄せてきたおろし金の頭を撫でてやる。
 トゲトゲゴツゴツしてて、まさしくおろし金。
 鱗の流れに逆らったら本当に卸されそうだ。

 さて、素材は後は宝石か。
 予備だから数はそんなにいらないかな。
 ミルキーが残してたら買い取らせてもらおう。

「ミルキー、ちょっと相談があるんだけどいい?」
「はい、なんでしょう?」

 宝石類を売って欲しいことを伝える。
 使い道も合わせてだ。

 あっさりとOKをもらった。
 むしろ、何故早く言わないのかと怒られた。
 いくらでも協力してくれるらしい。
 どれくらい必要なのかはまだ分からないから、後で純白猫に聞いて必要な分提供してくれることになった。

「葵ちゃん、今からストーレに行こう」
「何しに行くの?」
「≪魔導機械士≫用の装備を作ってくれる人のところに行こうと思って。タマからもらった素材でサブウエポン作るって話、あったでしょ?」
「すぐ準備する……!」

 準備と言っても装備を変更するだけだ。
 葵はギルドでもらった≪魔導機械士≫用の初期装備を装備した。

 
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