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206 休憩とポーション作成

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 日もすっかり昇った午前9時頃。

 葵がオレンジ細マッチョに運ばれてくる。
 そっと寝かされた葵は、すぐに立ち上がろうとする。
 めげないなぁ。
 放っておくと何度でも突撃して行くから、少し休ませた方が良さそうだ。

 ゲームの世界だから肉体的な疲労はない。
 だけど頑張り過ぎるのは良くない。
 脳に負担がかかってしまうと危険だと、そう説明を受けている。

「お疲れ様。一時間くらい休憩しよう」
「きゅう……」

 葵は息とも返事ともつかないものを吐いた。
 そのまま力を抜いて、畑の縁に寝転がった。
 ぐったりしているが死んではいない。

 俺やミルキーが休憩というのに修行を続けようとすると、無理矢理休まされるのを昨日体験してるからな。
 無理するのは早々に諦めてくれた。
 今は、少しでも早く回復するように省エネモードになっているだけだ。 

「お疲れ様。ゆっくり休んでくださいね」
「おつかれー! 果物取ってくる!」
『ではわらわは水でも汲んで来ようかのう』
「キュル!」
「……皆、ありがとう」

 ミルキーが労いの言葉をかけて、優しく頭を撫でてあげている。
 タマはフルーツを収穫しに走り、石華も水を汲みに行った。
 おろし金はドラゴンモードになって、剣のようなものが幾重にも連なった翼で陰を作った。

 俺も何かしてあげたい。
 でも他に何があるだろう。
 何か、何かないか。

 そうだ、そろそろ小腹が空いてもおかしくない。
 タマがフルーツなら、俺はがっつり食べられるものにしよう。

 俺はストレージから、≪食用クワガタの丸焼き≫を取り出した。
 これは先日のバーベキューの時に隅でひっそりと焼いた、俺のお弁当兼非常食だ。
 栄養満点と、アイテムの説明に書いてある。
 これを食べれば元気になる筈だ。

「それは仕舞ってください」
「はい」

 ミルキーに怖い顔で睨まれた。
 これは逆らったらやられる。
 大人しく仕舞っておこう。

 うーん、そうだ。
 今すぐ役に立ちはしないけど、あると便利なものを準備しておこう。
 試したかったことも出来るし、一石二鳥だ。

 俺は、ストレージの中に≪ルビーハーブ≫と≪薬草≫があるのを確認した。
 これは、ウチの畑で採れた自家製の草だ。
 ルビーハーブは≪ピンポン玉≫の影響で宝石化したレッドハーブ。
 透き通った赤い宝石のようで、とても綺麗だ。
 
 この二つを使って、特製ポーションを作るつもりだ。
 前々から薬には手を出してみたかった。
 今日は良い機会だ。
 ……こう言うと字面がすごく悪いな。

 つい先日、俺はものを造ることに特化した≪創造者≫へと転職した。
 少し経っているから職業レベルも上がっているし、スキルもいくつか取得してある。
 その内の一つを試す時が今、来た。

 ≪クリエイトポーション≫を発動する。
 材料として、ストレージの中のルビーハーブと薬草を指定する。
 俺の頭の上で成功を表すエフェクトが踊る。
 よし、どうやら出来たようだ。

 他の職業はどうか知らないが、≪創造者≫の製薬は材料を指定すれば全自動で出来るらしい。
 所持していた二つの草と、ポーション瓶が消費されている。
 一つのポーションを新たに入手した。
 ≪ルビーポーション≫、完成だ。

 よし、材料がある限り連打だ。
 ルビーハーブは結構採れている。
 それでもストーレの街のお店で普通に買えるポーション瓶よりは少ない。
 ルビーハーブが尽きるまで作ろう。
 そういえばさっき作った分は、何が100倍されてるんだろうか。

 シュシュシュシュシュシュシュシュイン。
 試しに数を100倍するよう意識してみたら、一回の発動で重なって発動した。
 エフェクトが重なりまくってバグみたいな音を出している。
 材料が足りなかったようで、62個一気に出来上がった。

「それ、何の音ですか?」
「ポーション作ってみた。――そうだ、これみんなに配っておくよ。危ない時に使ってね」
「ありがとうございます。すごい効果ですね」
「ウチの畑で採れた材料のお陰かな」

 量産した≪ルビーポーション≫の回復量は、数値で3500~4000。
 上級回復薬であるホワイトポーションの回復量は2000~2500。
 数値で上回っているということは、それだけ材料が良いということになる。

 これは、ホワイトハーブやブルーハーブを宝石化させたらどうなるんだろう。
 植えてみたい。
 それを材料にしたポーションを作ってみたい。
 その内苗を手に入れてみよう。
 
 今回作った63個のルビーポーションは、皆に分配した。
 俺やミルキー、タマは回復アイテムは必要じゃないだろう。
 だけど、持っていれば他の誰かに使うことが出来る。
 今で言えば、葵のHPが危なくなる場面もあるだろう。

 他にも死にそうな人を助けたり、何かのイベントで回復薬を要求されることがあるかもしれない。
 ミルキーはいくつか常備しているようだしな。
 20個を葵、20個をミルキー、10個をタマ、5個を俺、残り8個は家に置く、という内訳になった。
 石華やおろし金はストレージが無いから持たせられない。
 いざという時は、家のを使ってもらうつもりだ。

 俺とタマのストレージはタブで分けられているだけで、ほぼ共通のものだ。
 だから実質15個を俺とタマとで使うことになる。
 
 回復に使う機会はそうそう無いかもしれないが、このポーションはお小遣いの意味もある。
 お金に困った時は売って、お金にしてもいい。
 そういう意味合いでの分配だ。

 そう考えると、葵に20個はあげ過ぎかもしれない。
 でも葵の行動から察するに、売らずに回復薬として全部使い切りそうな気がする。
 あくまでも予想だけど。
 材料のハーブをもっと育てよう。
 ルビーハーブの株を増やしていきたいところだ。

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