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198 転職の方針
しおりを挟む「少し過保護じゃないですか?」
「そうかな?」
「私はそう思いますけど」
今は葵と初めての育成一日目を終えて、夕食の真っ最中。
留守番をしてくれていたミルキーに報告したら、呆れたように言われた。
どの敵も必中で一撃必殺。
ダメージも受けないというのは良くないと、そういうことらしい。
なるほど。
確かにそうかもしれない。
今日の狩りで葵の基本レベルは11。職業レベルも10になっている。
明日は朝一で転職するとして、その後はどうしようかな。
「私に良い考えがあります。畑仕事は私達でやっておきますから、まずは転職してきて下さい」
「分かった」
ミルキーは何か秘策があるようだ。
珍しく自信満々な顔をしている。
どことなく楽しそうなのは気のせいだろうか。
「葵はどんなスキルを取ったの?」
「まだ取得してない」
「そうなんだー」
タマと葵は隣同士で仲良く食事をしている。
葵は、後でじっくり考えたいということで、ステもスキルも振っていない。
今日の育成では支援魔法だけでステータスが足りていた。
通常攻撃だけでどのモンスターも一撃確定……一確だったからスキルを使う必要もなかった。
だから後回しに出来た。
「明日には転職しに行くから、どんな職業になりたいか考えておいてね。ノービスの時のスキルで大体決まるみたいだから」
「わかった」
一日が経過して、葵も少しは馴染めたようだ
最初よりは硬さが消えている。
夕食を終えた後は、各々がリビングでゆったりしている。
葵は椅子に座ったまま、ウインドウと睨めっこ中だ。
どうやら、スキルをどうするか悩んでいるらしい。
そんな葵の隣へ、ミルキーが腰掛けた。
「悩んでるの?」
「うん。どうやったらお父さんみたいになれるかなって」
「葵ちゃんはお父さんみたいになりたいんだね」
「うん。強くて優しくて、かっこよくなりたい」
「そっか。その剣を上手に使うなら、やっぱり剣士系の職業だと思うよ」
「剣士? どんなスキルを取ればいいの?」
「最後に決めるのは葵ちゃんの好みだから、あくまでも参考程度にしてね」
そこから、ミルキーの授業が始まった。
ステータスとスキルについて。
俺も何となくでしか理解してなかったから、勉強になった。
転職の際の選択肢は、現在の職業とステータス、所持スキルで変わる。
剣士系の職業に転職をしたかったら、StrやAgiを上げる。
スキルは、ノービスのスキルの中でも斬撃系のスキルや、≪戦闘の心構え≫や≪武器適正:片手剣≫等を取得すればいい。
特殊な条件を満たすと、俺みたいに特殊な選択肢も出てくる。
だけど普通にしてれば大丈夫の筈だ。
「パーソナルスキルは、個人の行動や適性で選べるスキルが違うから、どれを取ってもある程度活かせるようになってるの。だから、葵ちゃんの好みで取って大丈夫だよ」
「うん。……ユニークって何?」
「分類に≪ユニーク≫って書いてある物はユニークスキルって言って、自分だけの特別なスキルのことだよ。特別な分効果も強いから大体は取得した方が良いけど、偶にデメリットだけのスキルもあるから気を付けてね」
「ふーん、よく分かんない」
「ユニークスキルはすっごいんだよ! タマもモジャもミルキーも、ユニークスキルいっぱい持っててさいきょーだから!」
「そうなんだ」
葵はミルキーやタマの話を聞きながら画面を突く。
ユニークスキルに関しては、本当に気を付けた方がいい。
俺も今ではとんでもないことになってるけど、最初は全部のスキルが使えなくなってたからな。
お陰で≪挑戦者(チャレンジャー)≫への転職条件を満たせたりしたんだけど。
ミルキーは、必要な知識だけ説明して後の選択は全て本人に任せる方針のようだ。
どんなスキルがあるかとかは、確認していない。
……一応変なユニークスキルが生えてないか確認しておこうかな。
コンコン。
ノックの音が響く。
こんな時間にお客さん?
玄関の扉を開くと、ミゼルと出汁巻玉子が立っていた。
ちょっと久しぶりな気がする。
「ナガマサ様、ごきげんよう」
「ばんはっす」
「こんばんは。どうされたんですか?」
「お城から美味しいお茶を届けてもらったので、ご一緒にどうかと思いまして。お邪魔でしたか?」
「そんなことないですよ。どうぞ、上がって下さい」
ミゼルと出汁巻を招き入れる。
前ミルキーにお伺いを立てたら、その後にミルキーの知り合いなら聞かなくても大丈夫だと言われた。
今は立て込んでる訳でもないし、ミゼル様達ならミルキーと仲も良さそうだし問題ないだろう。
「ミゼルだー!」
「ミゼル様、こんばんは。出汁巻さんもおつです」
「ごきげんよう、タマちゃん、ミルキー様」
「ばんはっす」
「この子は葵ちゃんです。少しの間ウチで預かることになりまして」
「あら、初めまして。ミゼルと申します」
「はじめまして……」
ミゼルと出汁巻を見て各々が挨拶を交わす。
葵は若干萎縮してしまっている。
ミゼルは優しいし、すぐに馴染んでくれるといいけど。
出汁巻は……うん、近づけないようにしよう。
「お二人とも、こちらへお座りください」
「ええ、ありがとうございます」
「これ、お茶っす」
「ありがとうございます。今淹れますね」
葵はまだ悩んでいるようで、タマとミルキーが付き添っている。
ミゼルと出汁巻の対応を俺がしたことで、自然と三人ずつに分かれている。
とりあえずもらったお茶を六人分用意して、お茶請けにフルーツでも出すか。
見た目はちょっとあれだけど、味は美味しいし。
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