上 下
161 / 338

154 挨拶回りとバーベキュー

しおりを挟む

 畑の中心部には≪古代異界烏賊≫の顔から上が出ている。
 パーティーの時に被る三角帽子みたいな貝も合わせると、高さは5m程にもなる。
 正直言うと空から見えてた。
 とぼけてみようと思ったが、無理があったな。

 足は全て地面の下を経由して、畑のあちこちから生えている。
 その表面は結晶のようなもので覆われており、≪輝きの大空洞≫で見たそのままの姿だ。
 少しだけ小さいかな。

 隣のエリアには侵食していないし、ハーブなどの植物の周りにも生えていない。
 ピンポン玉は賢いようだ。

 村の皆には騒がせたことを謝罪した。
 昭二の取り成しもあってか、皆快く許してくれた。
 村の主な住民は大体集まってたから、ついでに≪ダイヤモンドクイーン≫の金剛石華のことも説明しておいた。

 特に問題はないようだ。
 口々に、気にしないから大丈夫と言って貰えて良かった。
 この村の人達は大らかだな。

 何人かいたプレイヤーはかなり驚いてたけど。
 それでも、あの畑に埋まってるイカよりはインパクトが小さいようだ。

『あれは、大海魔!? 何故このような場所にまで!』

 と、ピンポン玉を見た石華が臨戦態勢に入ったのはちょっとびっくりした。
 女王にとっては宿敵みたいなものだもんな。
 配慮が足りなかった。
 それでも、きちんと説明したら納得してくれた。

 それどころか、同僚であり先輩として敬うようだ。
 俺のペット扱いされても嫌そうにしなかったし、石華も大概器がでかい。

 危険性のないことが分かって村の人達は引き上げて行った。
 ≪モジャ畑≫のエリアに入ると危険だから気を付けるように、とはしっかり伝えてある。

 モジャ畑の前に残ったのは、俺達だけだ。
 少し畑の様子を見ておこう。

 畑の管理画面から一括で収穫、なんてことは出来ないようだ。
 収穫は普通にその作物を刈るなり抜くなりすればいいのか。
 どの作物が収穫時期か、とかは管理画面で確認出来るらしい。
 これだけでも便利に違いない。

 今生えてるのは≪古代異界烏賊≫の本体と、足が20本くらい。
 後はハーブ類か。
 どれもまだ収穫時期ではないようだ。

 というかこの足って収穫出来るの?
 一体何が採れるのか謎だな。

「それにしても、すごい光景ですね」
「そうだなー。出来心で植えてみたらこんなことになっちゃったよ」

 隣で俺の操作する画面を眺めていたミルキーが、改めて畑を見てから呟いた。
 さっきは村の人達がいてそれどころじゃなかったからな。

 落ち着いてやっと自分の感想が出てきたんだろう。
 タマは畑の中に入って足と戯れている。

 他の畑は普通の畑なのに、うちの畑だけ深海探検みたいな感じだもんな。
 すごい光景としか言えない。

「ナガマサさんは、いつもやることがとんでもないです。石華さんのこともそうですし」
『わらわがどうかしたか?』
「ナガマサさんはすごいな、って話ですよ」
『なるほどのう。うむ、ご主人様はすごい。わらわを、こうしてこの地へ連れてきたのじゃからな』
「ご主人様は勘弁してください」
『ともかくとして、敬語は使わずともよいぞ。気安く話しかけるのじゃ』

 金剛も交えて、なんだかいっぱい褒められた。
 何か特別なことをしたつもりはない。
 ただ、楽しく生きていく為に頑張っただけで、それが偶々うまくいっただけだ。
 これからものんびり、楽しく過ごしたい。
 その為ならどんなことだってしてやる。

 金剛を連れて村を周った。
 いずれ一人でお買い物とかするかもしれないし、お店の人に挨拶も兼ねてだ。
 大体の村人にはさっき出会ってたけど、改めてした方が印象が良い。

 お店のおじさんおばさんも、商売中にも関わらず笑顔で応じてくれた。
 ついでに買い物もしておいた。

 一通り案内して、家に帰った。
 金剛に個室を一つ割り当てようとしたら、断られてしまった。
 放牧スペースで良いらしい。
 本当に良いのかと思ったが、どうしてもと言われて押し切られた。

 その代わりってわけじゃないけど、ミルキーとも相談して二段階拡張しておいた。
 小屋は一つ立ててあるし、なんとか住めると思う。

「今日は金剛石華の歓迎会をやろう!」
「やふー!」
「いいですね!」
『持て成したい、というのならば止めはせぬ。存分に持て成すがよいぞ』

 というわけで今夜はパーティーだ。
 ミゼルも招待した。
 護衛で一緒にいた出汁巻玉子とノーチェにも声を掛けた。

 そんなに期間が経ってないのに、既に迷惑を掛けまくっている昭二さんも呼ぶことにした。

「メニューはどうしましょうか?」
「人数も多いし、放牧地でバーベキューはどうかな?」
「いいですね!」

 今夜のメニューはバーベキューに決定した。
 実は以前からやってみたかったんだよな。
 楽しみだ。

 俺達は分担して準備に当たった。
 テーブルはリビングのを外に出すとして、道具は一切ない。
 俺はおろし金に乗ってストーレの街へ飛んだ。

 お店や露店を周って必要なものを買っていく。
 一回買ってしまえば繰り返し使えるし、全部揃えてしまうつもりだ。
 ついでに食材も買い込む。
 お酒はあんまり飲めないけど、誰か飲むかもしれないから買っておこう。
 
 ついでにモグラ、マッスル☆タケダ、ゴロウもおろし金の背中に乗せる。
 どうせならみんなで騒ごう。
 三人共二つ返事で付いてきたし。

 我が家へ帰ってきた。 
 バーベキューコンロは、そのものは売ってなかったから使えそうな材料を買った。
 放牧スペースで、タケダとゴロウがコンロや網を作り上げていく。

 すっかり暗くなった頃に、全ての準備が完了した。
 さぁ、パーティーの始まりだ。

しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

処理中です...