150 / 338
143 輝きの城
しおりを挟む一層へとやってきた。
別行動ではなく三人でだ。
せっかくだし、前回見つけた結晶の城を攻略することにした。
お金に関しては、さっきの一時間でも結構狩れた。
城攻めの後にもう二セットも狩れば十分だろう。
穴があった場所へやってくると、穴は確認出来なかった。
ただ、≪クリスタルナイト≫が佇んでいる。
「タマショットガン!」
タマが離れた位置から≪無弾≫を三回程発射したら一瞬で粉々になった。
一回の発動で五発同時発射する魔法だから、100倍して五百発。
間を空けずに三回も撃てば1500発。
酷い。
技名はタマのオリジナルで、特に意味はない。
強いて言うならかっこよくなる。
今の攻撃で壁に穴が空いていた。
これも前回と同じだ。
今回は壁に穴がないのは最初にしっかりと確認した。
やっぱり隠されてたみたいだな。
突然姿を現した横穴を進んでいく。
開けた空間に出て、そこには結晶で出来たような城がある。
「行こう」
「とつげきー!」
「慎重にな」
走り出そうとしたタマを抑えて釘を刺す。
行ったことの無いエリアは、何が起きるか分からない。
俺の考えを理解したらしいタマは地面に倒れこんだ。
「はーい。ほふくぜんしんー!」
「そこまではしなくても――って、速いな!」
「私達も行きましょう」
「ああ、うん」
そして腕だけで這って行った。
滅茶苦茶速い。
理解してなかったようだ。
俺達も追いかけるように城の中へ突入した。
「綺麗……」
中へ入ると、壁も床も装飾も、全てが結晶で出来ていた。
ミルキーが見惚れるくらい美しい光景だ。
かなり広い。
外から見たサイズ感と全然違う。
ここも、・・中の空間はかなり拡張されてると思った方が良さそうだ。
エリアの名前は≪輝きの城≫となっている。
「モジャマサー、早くー!」
「そんなに慌てるなって。ゆっくり進むぞ」
「モジャ……」
俺を急かすタマを逆に落ち着かせる。
城攻めを楽しみにしてたらしく若干不満そうだ。
広いから、迷子になったら困るんだよ。
我慢してくれ。
獲物を求めて歩き回った。
しかし、モンスターは全く出てこない。
城の作りは詳しくないが、ストーレの城を思い出して王様がいそうな方へ進む。
しばらく歩いても、やっぱりモンスターには遭遇しなかった。
やがて豪華な扉の前に辿り着いた。
この向こうには何かしらがいるに違いない。
「とつげきー!」
「だと思った」
タマは躊躇なく扉を開け放った。
扉の向こうは、謁見の間によく似ていた。
真っ直ぐな道のように結晶のカーペットが敷いてある。
道の両脇を≪クリスタルナイト≫がずらっと並んでいて、威圧感がすごい。
その先は数段高くなっていて、玉座がある。
そこには結晶で出来た人型が座っている。
クリスタルナイトよりも透明度が高いようで、透き通っていて、光を反射して煌めいている。
良く見てみると、≪ダイヤモンドクイーン≫と表示された。
『よく来たな、戦士たちよ』
丁度名前を読み終わるくらいで、高くて透き通るような声が頭の中に響いた。
もしかして、喋ったのか?
「よーし!」
「タマ、ストップ」
「あいあい!」
「危なかったですね……」
タマが駆け出そうとしたのを止める。
多分何かのイベントが始まりそうだ。
このまま、あの女王様ごと粉砕してしまうのは勿体無い。
ミルキーも同じことを考えていたようで、ホッと溜息をついた。
『頼みがあるのじゃ。疑うやもしれぬが、話を聞いてはくれぬか?』
「わかりました。聞きましょう」
『助かる。まずは近くへ寄るがよい』
やっぱり何かのイベントのようだ。
女王も傍らのナイト達も、攻撃してくる素振りは見えない。
俺達は促されるまま女王の前へと歩み寄る。
もし攻撃が来るようならすぐさま女王の背後にでも移動しようかと思ったが、何もなくて良かった。
ダイヤモンドクイーンはその名の通り女性型で、結晶体でありながら女性らしい体つきをしている。
服や装飾もダイヤっぽいから、どこまでが身体でどこからが服か分からない。
これ全部身体の一部の可能性もある。
『お主らは、この大空洞に巣食う大海魔に遭遇しただろう? その身からやつのおぞましい魔力を感じる』
「はい」
「もがもがもがが」
「タマちゃんは少し静かにしててね」
「はーい」
女王の問いかけに素直に答える。
余計なことを言って話の腰を折ってはいけないと、ミルキーがタマの口を塞いでいた。
更に念を押している。
ナイスサポート。
タマは素直にお返事をしてくれた。
これで落ち着いて話を聞ける。
女王の話は、簡単にまとめるとこういうことだった。
女王が平和に暮らしているところに、あのイカが異界から現れた。
あのイカの主食は宝石などの石や結晶で、女王達を食べる為にやって来たのだ。
そして戦いが始まった。
女王配下の戦士達が死力を尽くした結果、犠牲を払いながらも、大海魔を異次元に封印することに成功した。
しかし、食欲の権化である大海魔の残滓が、一つの個体として残ってしまった。
それが、三層に住むあのイカらしい。
あれで残滓なのか。
残滓でも女王達にとっては十分強敵で、主力の戦士達を失った今では僅かに残った側近とひっそりと暮らしている。
元々この城は三層の奥にあったそうだ。
そう、≪古代異界烏賊≫の沸くあの場所だ。
二層と三層に沸く≪ジュエルマン≫は、戦士達の残骸にイカの魔力が合わさってモンスター化したものらしい。
まさかそんな由来があるとは思わなかった。
頼みというのは、異次元に封印した大海魔を倒して欲しいというものだった。
そいつを倒せば何か変わるのかと聞いてみた。
封印に使われている戦士達の魂が解放されれば、その力で二層から足を追い出すことが出来るということだった。
残滓を完全に倒したり出来ないのが、なんともゲーム的だ。
MVPボスが沸かなくなったら他のプレイヤーが困るもんな。
『やつを倒したお主らなら期待できる。頼まれてはくれぬか?』
後ろで待つ二人の方を見る。
タマはわくわくした顔で見つめている。
今にも飛び出していきそうな顔だ。
ミルキーは、俺と目が合うと力強く頷いてくれた。
こっちもやる気充分だ。
「俺達で良ければその話、お受けします」
11
お気に入りに追加
1,255
あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?
さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。
僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。
そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに……
パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。
全身ケガだらけでもう助からないだろう……
諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!?
頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。
気づけば全魔法がレベル100!?
そろそろ反撃開始してもいいですか?
内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
☆10/25からは、毎日18時に更新予定!
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる