128 / 338
124 シスコンと説得
しおりを挟むがっつりしっかり稼ぎたいということで、俺達は飛んで行く為に城へやって来た。
歩いてもいいんだけど、普通に歩いて行くとゲームなのに数時間は確実にかかるからな。
野営したり、近くの町や村に寄るのが普通らしい。
日帰りで行ってたのは普通じゃなかったのか。
城へ到着した。門では少し待ったが、モグラとゴロウも入ることが出来た。
モグラが言うには≪王家の紋章≫が無くても入ること自体は出来るらしい。
ただ、結構待たされる上に移動はかなり制限されるとかで驚いている。
「良く来たな、ナガマサよ。今日も北の山脈か?」
「おはようございます。ええ、仲間と一緒に行こうと思います」
「おはよーぱしおうじ!」
「おはようございます」
「モグラです」
「ゴロウとにゃーこです」
「にゃあ」
城内にはいつも通りパシオンがいた。
紹介しながら後ろを見ると、モグラとゴロウが挨拶をした。
ゴロウはにゃーこの脇を抱えて、いつものぶら下がり状態で見せつけている。
これでも一応王族なんだけど失礼にあたらないのか?
「そうか。タマも元気なのは良いが、≪ぱしおうじ≫とはまた変な呼び方だな」
「えー、それじゃあばもがもがが」
「お気になさらず」
タマがまたバカ王子と言いそうになるのを阻止した。別に言ってもいいけど変に機嫌を損ねても面倒なんだよな。
ただでさえミゼルの件でいつ絡んで来てもおかしくないのに。
「……まぁ良い。しかしこれはまた見事な毛だな。ははは、カーペットよりも良い手触りだ」
意外なことに、パシオンはにゃーこを撫でてご満悦だ。
動物好きなのか?
確かにあの手触りは良いけど、パシオンがそういうの好きだとは思わなかった。
「自慢の毛玉です。はいどうぞ」
「にゃあ」
「ううむ、もふもふであるな」
「にゃーこさんはもっふもふだからね!」
「うむ」
ゴロウがにゃーこをパシオンに押し付けた。
にゃーこはゴロウが毛玉と呼ぶくらいにモコモコで、身体自体も大きい。
そんな毛玉を押し付けられたパシオンの顔は、嫌そうじゃなかった。
むしろ嬉しそうだな。
何故か自慢げなタマと通じ合っている。
カオスな空間だ。
「さて、貴様に言わねばならんことがある」
パシオンはしばらくにゃーこの毛に顔をうずめて満喫した後、突然真面目な顔で話しかけてきた。
そんな顔をするならとりあえず、抱っこしてるにゃーこを下ろせ。
気に入ってるんじゃない。
「ミゼルと結婚しないでくれて、ありがとう。本当に、ありがとう……!! もし結婚していたら、私の全てを賭けて貴様を討たねばならぬところだった」
「えぇ……。王様はまだ諦めていないのでは?」
「そのようだな。だが、なんとしてでも阻止するつもりだ」
やけに大人しいと思ったら、俺が結婚を断ったから安心してたんだな。
しかもやけに物騒なこと言ってるし。
可能性が0になったわけじゃないんだけど、今それを言っても良いことはなさそうだ。
「もしも、もしもなんですけど、ミゼル様が結婚したいという相手を連れてきたらどうするんですか?」
「無論始末する」
「ですよねー」
「話に聞いてた通りやばいやつだね」
「こわやこわや」
パシオンの発想は分かりやすい。
分かりやすいシスコンだ。いき過ぎてる気もするけどな。
後ろではモグラとゴロウが何か言ってる。
絶対面白がってるだろ。
「そんなことしたらミゼル様に嫌われませんか?」
「ミゼルに嫌われてでも、守らなければいけないのだ。それがミゼルの為である」
「……それって、パシオン様の自己満足ですよね」
「ほほう? 何が言いたい?」
この面倒な奴をどうしようかなと思っていたら、まさかのミルキーが割り込んできた。
明らかな正論に、パシオンの顔色が変わった。
だけどにゃーこを撫でているせいであまり迫力がない。
にゃーこは目がクリクリでおっとりしてる、癒し系にゃんこだからな。
「ミゼル様の幸せを望むなら、ミゼル様の意思を尊重してあげないといけないんじゃないかと思うだけです」
「ミゼルは優しいのだ。王女という身分だからと、政略結婚の道具として自分を差し出すに決まっている。それならば私が選んだ相手の方が良いに決まっている」
「それは政略結婚と何が違うんですか?」
「私が選んだ相手なら間違いなどない!」
「それが自己満足だと言ってるんです! どんな理由であれ、本人が結婚したい相手がいるならそれを応援してあげるのが兄じゃないんですか?」
「ぐぬぬ」
というようなやり取りの末、ミルキーが押し切った。
あのパシオンをやり込めるなんてすごいなぁ。
最終的な結論としては、ミゼルに結婚したい相手が出来たら、その相手をパシオンが試すということで落ち着いた。
シスコンなのは変わってないが、常識的なところだろう、多分。
「では気を付けて行って来い。可能ならば夕食は城で食って帰ると、ミゼルも喜ぶだろう。ミルキーも、ミゼルと仲良くしてやってくれ」
「分かりました。ご馳走になります」
「はい!」
訓練場でおろし金が崇められてる間に、パシオンと挨拶を交わした。
ミルキーへの好感度が上がったようで名指しでお願いされていた。
モグラとゴロウは空気だったが、訓練場にやって来た出汁巻玉子と再会して改めてお礼を言ったりしてたようだ。
「それじゃあ行こうか」
「キュルル」
「あれ、ナガマサさん達は乗らないの?」
「大丈夫ですよ」
「しゅっぱーつ!」
ミルキー、ゴロウ、モグラを乗せたおろし金がゆっくりと飛び上がった。
おろし金はスリムな上に突起が多いから、5人も乗ろうと思うとかなり端の方による必要があって危ない。
だから俺とタマはおろし金には乗らずに行くことにしたわけだ。
さて、俺達も行こう。
おろし金を追いかけるように空中を蹴って行く。
「うおっ、飛んだ! タマちゃんも飛べるの!? ああ、相棒だから≪飛翔≫スキル取ってるのか!」
「ええ、まあ」
「うわっ、たかっ」
「落ちないように気を付けてくださいね。タマちゃんも、ぶつからないようにね」
「あいあい!」
タマは普通に飛べるから、くるくる回りながらおろし金の周囲を飛んでモグラ達を驚かせていた。
このまま目的地まで直行だ!
0
お気に入りに追加
1,181
あなたにおすすめの小説
転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?
N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、
生まれる世界が間違っていたって⁇
自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈
嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!!
そう意気込んで転生したものの、気がついたら………
大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い!
そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!!
ーーーーーーーーーーーーーー
※誤字・脱字多いかもしれません💦
(教えて頂けたらめっちゃ助かります…)
※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません
異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる