上 下
110 / 338

106 新装備と闇リンゴ

しおりを挟む

「次はこいつだな」

 タケダが取り出したのは短剣だ。
 柄の部分にはいくつか宝石が埋め込まれている。
 鞘に収まっているが、緩やかなカーブを描いているし片刃の短剣のようだ。

「抜いてみてもいいですか?」
「そいつはミルキーさんのものだ。勿論構わないぜ」
「ありがとうございます」
 
 ミルキーが鞘から抜くと、結晶のような刀身が姿を現した。
 おお、これも綺麗だな。
 美術的な価値も高そうだが、性能はどうだろう。
 これまでから考えて間違いなく高いと思うけどな。

≪大海魔結晶牙≫
武器/短剣 レア度S- 品質:C+
Atk:316 Matk:301
結晶化した大海魔の牙を削り出して作られた短剣。
硬い宝石すら噛み砕くその牙はとても強靭な為、短剣にしても高い攻撃力を誇る。
体内で生成された特殊な結晶で出来た牙は、魔法を増幅する働きも併せ持つ。
詠唱時間-10%
スキルディレイ-10%

 うん、強い。
 刃物類の武器っていうのは、基本的にMatkはほとんどつかない。
 だから魔法職の武器は杖や本がメインと言われている。

 ミルキーが使ってたように一部の短剣にはMatkがついているが、杖に比べるとどうしても劣る。
 その分Atkがあるからな。

 だけどこの短剣はどちらも高い。
 俺の剣よりもAtkが高いのに、Matkもかなり高い。
 魔法使いに嬉しい効果もついてるしな。

「綺麗ですごく強いですね。タケダさん、ありがとうございます!」
「素材がいいからな。俺も随分張り切っちまった」
「その素材を活かしきってるタケダさんの腕が良いのは間違いないですよ」
「そうそう、見てて羨ましいくらい良い装備が作れるのはやっぱり腕でしょ」
「まっするの上腕二頭筋でしょ!」
「おいおい、マジで照れるからやめてくれ」

 みんなしてタケダを褒める。
 あまり慣れていないのか、本当に照れくさそうだ。

 だけどタマの言葉にポーズで返す辺り、余裕がありそうな気がする。
 っていうかタマはそんな言葉どこで覚えたんだ。
 Aiの一般常識か?

「後はブーツに、小盾だな」

 ブーツも小盾も良い出来だった。
 ≪古代異界烏賊≫の素材で作られた装備はどれもMdefが高い傾向にあったが、小盾は特に高かった。
 実物は魔法が全く効かなかったからな。
 そこまで再現すると強すぎるから、高めで調整してるんだと思うけど。

 受け取った装備に早速着替えてみる。
 夜とはいえ街中で脱いで着る訳にもいかないから、ストレージから選択して装備を切り替える。
 一瞬で装備が換えられるのはゲームの良いところだな。

「おかしくないですか?」
「私も、着こなせてる自信がありません」
「かっこいいよモジャマサ! ミルキーもきれい!」
「大丈夫大丈夫、二人ともばっちり決まってるよ」
「ああ、様になってるぞ」
「「ありがとうございます……」」

 新しい装備は嬉しいが、あんまり見られていると恥ずかしい。
 ミルキーも同じ気持ちのようで、お礼の言葉が小さくなっていく。
 仕方ないな。

「でもナガマサさんの方はあんまり強そうに見えないね。特に上半身が」
「言われてみれば、俺が作ったのはインナーだけだからな。シャツにオオカナヘビの皮鎧じゃそう見えるのも仕方ないか」
「そう言われるとそんな気もしますね」

 俺の上半身はインナーの上にオオカナヘビの皮鎧、後は皮手袋だけだ。
 見た目だけで言えば初心者とそんなに変わらないだろう。
 ここは上着も作っておくべきか。
 丁度今日の分の素材もあるし。

「それじゃあコートみたいなのをお願いしていいですか? なるべく動きやすい感じで」
「よしきた。任せとけ」

 依頼してそのまま素材を渡しておく。
 ついでにいらないものは売っておいて、代金はそこから差し引いてもらう。
 さっきの装備で全部売った吸盤も使われていたから、その分もだ。
 グリップ力が凄まじくてつい使ってしまったと謝られたが、性能が良くなるのは望むところだ。

「そういえばモグラさん、ちょっと聞きたいことがあったんですけど」
「うん? 何何?」
「さっきの装備の素材とかを集めた場所で、リンゴを落としそうにないモンスターがリンゴをドロップしたんですけど、何か知ってます?」
「あー」

 ≪輝きの大空洞≫は文字通り空洞だ。
 植物なんてコケが生えてるくらいで、リンゴなんてあるわけもない。
 モンスターが食べるにしても、確かリンゴを拾った場所はリンゴを食べそうなモンスターはいなかった。

 一層ならまだゴブリンとかいたし、分からないでもないんだけど。
 聞こうと思って忘れていたのを今思い出した。

「あくまでも噂なんだけど、ドロップ調整用のアイテムじゃないかって話だよ」
「ドロップ調整用?」

 よく分からない単語に聞き返すと、簡単に説明してくれた。
 モンスターのドロップアイテムの種類数はモンスターによって多い少ないがある。
 その種類が少ないままだと空欄が出来てしまうから、適当なアイテム――つまりリンゴをドロップ率0%でそこに入れた。

 だがそれが何かの手違いでドロップ率が変わり、落ちるようになったんじゃないかと。
 報告数の少なさから、ある意味コインよりも貴重だとされている。
 プレイヤー達の間では畏怖の念からある名で呼ばれているという。
 その名も――。

「闇リンゴ。ネトゲの世界は闇が深いねー」

 もし本当にドロップ率がコインより低いとすれば、これを拾ってしまうとすごく悲しい気持ちになるな。
 どうせなら他のアイテムにしてくれ、と。
 コインが強力な効果を持ってそうなボスがドロップしたら余計に辛い。
 闇リンゴ、なんて恐ろしいアイテムなんだ。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

知識を従え異世界へ

式田レイ
ファンタジー
何の取り柄もない嵐山コルトが本と出会い、なんの因果か事故に遭い死んでしまった。これが幸運なのか異世界に転生し、冒険の旅をしていろいろな人に合い成長する。

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

処理中です...