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96 二度目の転職と再会
しおりを挟む「起きろモジャモジャー!」
「ううん、……おはようタマ」
いつも通り元気よくタマに起こされた。
ご飯を食べてミルキーと合流したら、ギルドに行って転職だ。
まだ時間はあるからゆっくり準備しよう。
「ふああ……ご飯食べに行こうか」
「いこー!」
まだ若干眠い。
タマは勢いよく階段を駆け下りていく。
元気だなぁ。
ゲームの世界でも下の階に音が響いたりするんだろうか。
朝食を済ませ、準備が出来たら噴水へ。
時間はまだ10時になっていなかったが、ミルキーが待っていた。
もう少し早く来るべきだったか。
「おはよう。待たせたみたいでごめん」
「いえ、大丈夫です! それじゃあ行きましょう。まずは転職、ですね!」
「うん。冒険者ギルドへ行こう」
「時給アップだー!」
転職には違いないけど、それは何かが違う。
……金銭効率が上がれば間違いではないのかな。
ギルドについた俺達は、受付のお姉さんに転職希望であることを伝えた。
以前と同じように別のお姉さんが現れて案内してくれる。
俺とミルキーはそれぞれ職員のお姉さんについていく。
転職は別々の部屋で行われるらしい。
設備がいくつかあるんだな。
通されたのは前と同じような場所。
職員さんに促されてクリスタルに触れると、転職可能な職業のリストが現れた。
前は挑戦者一つしか出なかったけど、今回はそうでもなかった。
剣士(ソードマン)や魔術師(マジシャン)等、いくつか選択肢が増えている。
だけどこれらは一次職だ。
どうせなら二次職から選択したい。
二次職は一次職の発展系で、基本的に二つの選択肢があるらしい。
片方は一次職の方向性を更に強化した特化型、もう片方は一次職とは異なる方向性を盛り込んだ形がほとんどだと、職員のお姉さんが教えてくれた。
条件を満たせば特殊な転職も現れるそうだ。
あった。
≪到達者≫と≪異端者≫。
この二つが≪挑戦者≫の二次職のようだ。
≪到達者≫
職業/二次職
挑み続けた者が辿り着いた境地。
制限を越えたその努力を誰もが称えた。
あらゆる技を操り、更に攻撃に活かす術を備えている。
≪異端者≫
職業/二次職
挑み続けた者が挑むことを止めなかった姿。
どこへ辿り着こうとも満足しないその精神性は、異端として扱われた。
対象の状態を変動させる技を新たに習得した。
≪到達者≫は純粋に挑戦者の強化っぽい。
どっちかというと攻撃寄り。
≪異端者≫は支援とかサポート寄りっぽいな。
バフとデバフスキルかな?
どちらにするか悩むが、決めた。
アタッカーはタマがいるし、俺はサポートに回ろう。
バフスキルとか、サポート系のスキルが欲しいと思ってたからな。
≪異端者≫を選択。
確認の選択肢にも迷わず『はい』を選んだ。
身体が光って収まった。
うん、無事に転職完了だ。
「タマも光るー!」
「やめなさい!」
タマの全身が、光っては消えてを繰り返す。
電気のオンオフを繰り返してるみたいな感じだ。
お姉さんもびっくりしてるし慌てて止めさせた。
全身が明滅する美少女なんて、このまま戻ったら目立って仕方がない。
それ≪滅魔光竜法≫使ってるだろ。
そんな使い方してたら王様が泣くぞ。
受付前まで戻ってくると、丁度ミルキーが戻ってきたところだった。
「何に転職したの?」
「私は魔法剣撃士というのにしました。特殊転職らしいです」
「へー、なんか格好良さそうだね」
「ナガマサさんは何になったんですか? 一次職は挑戦者、でしたよね」
「俺は異端者っていうやつだよ。サポート系っぽい」
「おおー、響きがカッコイイですね」
字面は悪いけどね。
ゲームの職業だし、そこは気にしても仕方ない。
ギルドに来たことだし、狩りに行く前に使わなそうな素材でも売っておこうかな。
せっかく取得した≪買い取り額増大≫はその名の通りに買い取り額をUPさせるスキルだが、対象がギルドでの買い取りだけだった。
だからギルドで売らないとレベルは上がらないし、意味もない。
宝石類は装備の材料にすると魔法の威力とかを上げてくれるらしいから、売るつもりはない。
値段だけ見てもらおう。
「すみません!!」
買い取りの査定を進めてもらっていると、ギルドに誰かが入ってきた。
かなり慌ててるのか勢いよくバーンと扉を開き、大声での登場だ。
急ぎ足で隣の受付のお姉さんへと詰め寄ってきた。
「すみません、宝石を取り扱っていませんか!?」
「申し訳ありません、宝石類の在庫は現在ありません」
「そんなぁ!?」
「冒険者の方々からの買い取りは少なくてですね。依頼を出されては如何ですか?」
「今必要なんです……!」
相当切羽詰ってるらしい。
あれ?
ふと隣を見ると知った顔だった。
「すみません、何か探してるんですか?」
「あれ、あなたは昨日≪牛丼食べたい≫氏の作品を買いに来られていた……」
「ナガマサです。俺も冒険者なんですが、お話を聞かせてもらってもいいですか?」
「ですが」
「ナガマサ様。査定が終わりました。買い取り金額がこちらになりますが、どうなされますか?」
貴族風の青年が言い淀んだところでお姉さんが声を掛けてきた。
タイミングがいい。
どれどれ。
宝石はどれも一万cくらいか。ゲーム的な都合だろうけど現実に比べるとかなり安い、のか?
勿論、他の素材やアイテムに比べたら高いんだけど。
今一相場が分からない。
「それじゃあ宝石は売らずに。他は売却でお願いします」
「かしこまりました。それではお返しいたします」
「え、今宝石って」
「もしかしたら力になれるかもしれません」
使わない素材の売却を済ませた後、俺達はギルドに併設されている酒場で青年の話を聞くことにした。
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