上 下
95 / 338

92 無限再生とタコ

しおりを挟む

 もう一回倒してみた。
 それでもさっきと同じで、少しすると体力満タンで復活してくる。
 嫌がらせか?
 嫌がらせだな。
 間違いない。

 三度目の正直。
 もうすっかり慣れたもので、どんどん攻撃を入れて行く。
 タマの動きが速すぎてやばい。

「とりゃー!」

 タマはこいつが気に入ったらしい。
 他の敵だとほぼ一撃で弾け飛んじゃうしな。
 強すぎるのも、人によってはつまらなくなってしまうようだ。
 この世界をのんびり楽しみながら人生を謳歌する予定の俺は、いくら強くなっても構わないんだけど。

 しかしこの烏賊、いつか見た怪獣映画みたいな大暴れっぷりだ。
 それを余裕で相手してるタマがすごい。
 俺もスペック的には出来るんだろうけど出来る気がしない。
 なんか怖いし。

「キュルル!」

 本体のHPが残り1割程度になったところで援軍が到着した。
 おろし金だ。
 おろし金にはこのダンジョンの入り口近くからここまでの、触手が通るトンネルを探してもらっていた。
 このエリアの触手は謎の直立移動をしてたけど、前のエリアでは穴を這ってたからあるかもと思ったんだ。

「おろし金、ありがとう。お疲れ様」
「タマの勝ちー!」

 おろし金を撫でていると、貝を背負った烏賊の巨体が崩れ落ちた。
 現れた六色の竜がビームみたいになって放たれていた。
 派手だ。
 威力もそれなりにあるはずだけど、この≪古代異界烏賊≫は魔法を弾くからダメージはないんじゃないのか?
 多分≪裂空指弾≫を使ってるな。
 
 ……この烏賊の名前すごく言いづらいんだけどなんとかならないのか。

 そんなことより、参ったな。
 とりあえず倒してもらったけど何も分かってない。
 このままだとまた復活するだけのような気がする。

「キュルッ!」
「おろし金?」

 おろし金がドラゴンモードになって、≪古代異界烏賊≫の死体の方へ猛スピードで飛んでいく。
 急にどうしたんだ?
 低空飛行で突っ込んでいったおろし金が旋回して戻ってくる。
 その勢いのまま、咥えていた何かを地面に叩きつけた。

 それは、見た目は普通のタコだった。
 大きさは俺の頭くらい。
 赤いアイコンと名前が表示されている。
 モンスターのようだ。

 名前は≪貝烏賊飯蛸(カイイカイイダコ)≫。
 そいつは逃げようと動き出した。

「タマすとらいくー!」

 六体の竜を拳に重ねたタマが、タコを思い切りぶん殴った。
 そんなに丈夫じゃなかったようで一瞬で砕け散った。
 流石タマ、容赦がない。

 そしてタマの頭上にMVPの文字が躍り出た。
 え、今のタコで何故MVP?

「ナガマサさん、もしかして……」
「マジか。でも、もう少しだけ様子を見よう」

 ≪古代異界烏賊≫の死体はさっきまでと違って消えてしまっていた。
 時間も復活する程度の時間は過ぎている。
 間違いなさそうだ。

 結論から言って、あのタコが本体の本体、本当の本体だった。
 どうやらあのタコの取り巻きが、あの烏賊だったらしい。
 烏賊を倒すと本体であるタコが露出するが必死に隠れていたお陰で気付かなかったようだ。

 そして烏賊と同じように二十秒程で、取り巻きの烏賊を再召喚することで復活すると。
 新しく現れるんじゃなくてわざわざ復活させる表現なのは、気付かせにくくする為なんじゃないかと思う。

 気付けて良かった。
 おろし金GJ!
 本当のMVPはおろし金だ。

「よーしよしよしよし! えらいぞおろし金ー!」
「キュルル」

 タマも全力で褒めているし、おろし金もご満悦だ。

 ドロップアイテムはいくつかあった。
 ≪古代異界烏賊の皮≫×2、≪古代異界烏賊の牙≫、≪古の結晶殻≫だ。
 どれもキラキラ光ってて綺麗だ。
 マッスル☆タケダにお願いして装備にするのが楽しみだ。

「まさか本体が別にいるパターンなんて思いませんでした」
「そうだね。おろし金が気付かなかったら倒せなくて撤退してたかも」
「かもしれないですね」

 俺もいっぱい褒めてやろう。
 よしよし、えらいぞおろし金。

「もう17時か。今日はそろそろ帰ろう」
「はーい」

 色々あってこんな時間になってしまった。
 一体どのくらい洞窟にいたんだろうか。
 早く脱出しよう。
 おろし金に出口に繋がる穴を探してもらっておいて良かった。

 足が空けたであろう穴を通って、入口の近くへとやってきた。
 ≪輝きの大空洞01≫にどんなモンスターがいるかまだ知らないけど、今日はこのまま帰ろう。
 またその内来るだろうからな。
 ここは色々と稼ぎが良さそうだ。

 洞窟を出ると、そこは俺達が落ちた場所のあるエリアだった。
 ダンジョンの広さを考えると、入口は隣のエリアでもおかしくなかったと思うんだけど、どうなんだろうか。
 まぁゲームだし、その辺りは見た目通りじゃないか。
 建物も外観と中身で広さ違ってた気がするし。

 すっかり夕暮れだ。
 夜のマップをゆっくり探索するのもいいけど、今日は疲れた。
 ミルキーとタマに許可をもらって、おろし金の背中に乗って飛んで帰ることにした。

 ドラゴンモードになったおろし金の背中は結構広い。
 その名の由来の通りトゲトゲザラザラするから、すりおろされないよう注意して文字通り飛んで帰った。

 おろし金が着地した場所が城の訓練場だったのは、ちょっとした愛嬌で許されるだろう。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

知識を従え異世界へ

式田レイ
ファンタジー
何の取り柄もない嵐山コルトが本と出会い、なんの因果か事故に遭い死んでしまった。これが幸運なのか異世界に転生し、冒険の旅をしていろいろな人に合い成長する。

処理中です...