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90 新スキルと師匠

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 ステータスの振り分けとスキルの習得を終わらせたところで、スキル一覧を眺めていて気付いた。
 いつかの時のようにスキルの名前が点滅している。

 しかも、今回は解放シリーズ四つともだ。
 ≪解放の右脚≫は10になってなかったけど、他のは結構前からMAXだったのになんでだ。
 もしかしてこれは、四つ全てがMAXになったことが関係あるのかもしれない。

 進化させるとレベルが1に戻るんだよなぁ。
 そうなると強化具合もかなり下がってしまう。

 とりあえず一旦保留にしよう。
 スキルの進化は触手を狩り尽くして地上に戻ってからでも遅くはないはずだ。

「こっちは終わったよー」
「すみません、もう少しだけ待ってください!」

 ミルキーの方はまだ時間がかかるようだ。
 俺はユニークスキルの習得はしてないからその分早かった。
 例えば八個ユニークスキルを取ろうと思ったら、もっと時間かかっただろうな。

「タマ、見張り有難うな」
「モジャー! モジャも見張る?」
「おう、一緒に見張っとこうか」
「わーい!」

 ミルキーを待ちながら、偶に寄ってくるジュエルマンを小突いて暇を潰す。
 そうだ、せっかくだしさっき取ったスキルを確認しておこう。

 まずは気功法から。
 ただの自己強化だから、使用しても見た目にはあまり変化はない。
 視界の隅に強化のアイコンと、残り効果時間が表示されている。
 支援系のスキルも同じ仕様なんだけど、やっぱりこれは地味に便利だ。

 次は≪弾属性魔法≫のレベルが上がって取得した二つの魔法、≪焼夷弾≫と≪氷結弾≫を試してみるか。
 焼夷弾って実在する兵器の筈だし、一気に物騒になったな。
 なんとなく効果も想像できる。

「焼夷弾!」
「おー! タマも燃やすー!」

 野球ボールサイズの球体が高速で飛んでいく。
 着弾した箇所を中心に、直径10m程の範囲で炎が噴き上がった。
 その範囲内にいたジュエルマンがダメージで砕け散る。
 なるほど、範囲攻撃か。
 威力も結構高いけど、少しディレイがあるな。

 触発されたタマが炎の竜をジュエルマン達にぶつけている。
 青と赤以外はHPが一瞬で溶けている。

 完全にオーバーキルだな。
 っていうか森でも使ってたと思うけど、あの竜はどのスキルだ。
 ≪滅魔火竜法≫か?
 その内俺も試してみないとなあ。

「きれー!」

 氷結弾は水属性バージョンだった。
 吹雪みたいなエフェクトが吹き荒れて、範囲の中のモンスターに水属性ダメージを与えた。
 タマが見た目を気に入ったみたいでところ構わず連射し始めた。
 他のプレイヤーがいたらやめるんだぞ。

 どちらも着弾した箇所を起点にして、円形の範囲内のモンスターに単発のダメージを与える魔法のようだ。
 もしかしたら追加の効果があるのかもしれないが、属性相性が悪くなければ一撃だから判断がつかない。
 属性の相性が悪いとダメージ1なのは中々酷い仕様だ。
 ここみたいに属性が入り乱れるMAPはプレイヤーには不評だろうな。

 あとは、≪六道踏破≫か。
 使った直後の攻撃を強化するスキルとあるが、どんな感じだろう。
 各ステータスの数値が高い程効果も上がり、Str、Vit、Agiが物理ダメージ。Int、Dex、Luc部分が魔法ダメージになるらしい。

「六道踏破」

 スキルを使用すると、それぞれの色に光る球体が六つ現れた。
 バレーボールくらいの大きさで、かつてのタマみたいだ。
 俺の周りをくるくる周っている。
 それで、これはどうしたらいいんだろう。

 次の攻撃を強化するってことは、攻撃してみたら良いんだろうか。
 丁度近寄って来ていたジュエルマン(赤)を軽く一発殴ってみた。
 拳が当たる瞬間に六色の光る球がジュエルマン(赤)に殺到して粉々に粉砕した。

 なるほど。こんな感じか。
 エフェクトも派手だし威力も高そうだ。
 やっぱり必殺技だな。

「すごーい! タマもやりたいー!」

 これは職業スキルだからタマには使えない。
 残念だ。

「むー、それじゃあこうだ! いっくぞー!」

 タマの周囲に六色の竜が現れた。
 六つの竜はタマの振り上げた結晶の剣に纏わりつくように集まっていく。

「えーい!」

 巨大な光の剣となったそれを、タマが振り下ろした。
 巻き込まれたジュエルマン達は無残にも木端微塵だ。
 かっこいい。
 それ絶対ボス相手に使うやつだろ。

「どうだった? タマかっこいい?」
「おう、最高にかっこよかったぞ!」
「やったー!」

 どうやらある程度エフェクトの操作が出来るらしい。
 タマは滅魔竜シリーズのスキルを使って、必殺剣にしたようだ。
 これは、タマに負けないくらいかっこいい必殺技の演出を考える必要があるな。
 今度暇な時に練習しておこう。

「すみません、お待たせしました」
「大丈夫ですよ。どんなスキルにしたんですか?」
「えっと、色々悩んだんですけど……」

 ミルキーが習得したユニークスキルは三つだった。
 ポイントは余るが、1ポイントで取れるユニークスキルはあまり魅力的なのがなかったそうだ。
 洗濯物を畳む時に補正のかかるスキルは確かにいらない。

 ≪思念詠唱≫。パッシブスキル。
 なんと、スキルの発動にスキル名を言う必要がなくなる。これはすごく便利だ。

 ディレイがあるスキルだとあまり効果を実感出来ないかもしれないが、ディレイのほとんどない火弾や水弾を連打する時はどれだけ連呼出来るかで連射速度が決まってたからな。
 仕様上スキルや魔法の発動を無言で出来る、タマやおろし金が羨ましくて仕方なかった。

 ≪信念の障壁≫。パッシブスキル。
 魔法耐性2%付与。
 ≪我らが道を行く≫の効果で20%だな。

 ≪ミルキー流魔法術≫。パッシブスキル。
 魔法攻撃力+スキルレベル%。現時点で10%で、MAXになると+100%か。結構だな。

 こんな感じのラインナップだそうだ。
 地味な効果に見えるものもあるが、そもそもユニークスキルの効果はピンキリで、職業スキルより役に立たないものも結構あるっていう話だからな。

 というか最後のやつは一体……。
 何かを極めたらプレイヤー毎の名前で取得出来る仕様なのかもしれない。

「ミルキー師匠!」
「ししょー!」
「止めてください!」

 とりあえずミルキーを魔法の師匠と思うことにする。
 タマと二人で師匠呼びをしていたら、恥ずかしがったミルキーが吠えた。
 師匠って響き、かっこいいのになぁ。

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