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第三章 アイテム争奪戦

修羅場②

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 私と拓海と田中は私の部屋で正三角形のような並びで向かい合って座っている。その他の愉快な仲間たちはリビングで聞き耳を立てている。

 日曜日の朝からやめて欲しい。良い子は戦隊モノのテレビを観ている時間帯だ。私も出来ることなら、この二人の顔を見るよりスーパーヒーローを観たい。

 ピリついた空気の中、初めに口を開いたのは拓海だった。

「で、田中は何しにきたの?」

 田中は拓海を一瞬睨んで私に頭を下げた。

「美羽に謝りたくて。俺何も知らなくて、周りの女子の話を鵜呑みにして嫉妬して酷い態度を取ったから……ごめん」

「もう良いよ。私も言い返せなかったのが悪いんだし」

「……」

「美羽はさ、田中が好きなの?」

「え、いや……」

 嫌いとは、こんな家族や友人達のいる場所で堂々と言えない。田中が可哀想だ。私が言い淀んでいると、次は田中が私に聞いて来た。

「拓海とは付き合ってないんだろ? だから、美羽はこいつのことは好きじゃないって事で良いんだよね?」

「え、付き合っては無いけど……好きじゃないかって言われると……」

 昔のような恋愛の好きかどうかは分からないが、普通に拓海のことは好きだ。友人として。

 しかし、この公開処刑のような質問がずっと続くのだろうか。それは嫌だ。こうなったら、ここは笑って誤魔化してさっさと帰ってもらおう。

『だけど、私みたいな芋女の私を好きって言ってくれるの田中くらいだよ。田中ありがとね。ははは』

『美羽を好きだなんて田中も物好きだよなー』

『こう見えて、案外可愛いんだぞ』

『田中は美羽と同じクラスなんだし、しっかり守ってやれよ。じゃあな』

 よし! これで行こう。脳内シュミレーションはばっちりだ。

「だけど、私みたいな芋女の私を好きって言ってくれるの田中くらいだよ。田中ありがとね。ははは」

「田中だけじゃない」

「拓海?」

 あら、初っ端から予想外な返答。これは困った。拓海が何やら真剣な顔で私を見ている。告白でもされる勢いだ。

 分かった。拓海のこれから言わんとすることが。兄が聞き耳を立てているのに、田中だけが私を好きみたいに言うのはまずいということか。

「そうだね。お兄ちゃんも好きって言ってくれてるから二人かなぁ」

「違う。俺もだ」

「へ……?」

「俺も美羽が好きだ。小さい頃からずっと」

「拓海、今なんて?」

 私の聞き間違いだろうか。拓海に好きだと言われた気がする。

 拓海が真剣な顔で再び私に言った。

「美羽、好きだ。俺と付き合ってください」

「ちょ、お前だけずるいじゃん。美羽、前から言ってるが俺も美羽が大好きだ。付き合って下さい」

 田中まで改めて告白してきた。これではまるで私がヒロインみたいじゃないか。二人のどちらかを選べなんて……やっぱ拓海かな? 昔はちゃんと好きだったわけだし。だけど、見た目はリクそっくりな田中? でも、拓海だって顔は良い。

 喪女の私にはこんな展開どう対処したら良いか分からない。友人に相談したい。小夜とレイラに。そうだ。一旦保留にして二人には帰って頂こう。そう思って口を開きかけた瞬間、襖がガラガラと開いた。

「美羽が決めかねるのであれば、拓海様と田中様お二人で競い合うのはいかがでしょうか? 美羽を取り合って戦う、何とも少女漫画的展開」

「良いじゃん良いじゃん。面白そう。何で戦う?」

 レイラと小夜はノリノリだ。私も第三者なら同じように楽しんでいたと思う。だが、今は当事者だ。楽しむ余裕などない。

「でも、私たち今日しなきゃいけないことあるよね。一旦帰ってもらった方が……」

「そうですわ! お二人にアイテムを取ってきて頂きましょう。そして、最終決戦でお二人の勇姿をしかと美羽がご覧になって決めるのはいかがでしょう?」

「それは良いな。アイテムが六つ全て手に入る」

「確かにこのまま僕たちだけより男手が増えた方が有り難いよね。拓海は剣道やってるから戦力にもなるよ」

 魔王と兄まで参戦してきた。告白した当人の拓海と田中だけ、ぽかんとした顔でレイラ達を見ている。

「拓海、田中、気にしなくて良いよ。放って……」

「美羽、俺は田中に負けないから!」

「な、俺だって負けねぇよ。美羽、俺の勇姿をしかと目に焼き付けとけよ」

「え……てか、良いの? レイラも魔王様もこの二人に本当のこと言っても。それに、信じないかもよ」

 そんなに気安く異世界転移のことなど話しても良いものなのだろうか。既に私を含め三人が事情を知っている。それが五人にもなれば秘密が漏れるのではないか? 私の心配をよそにレイラが言った。

「真実を知ったところで、周りに話したりはしないはずですわ。だって、その現場を目の当たりにした人しか信じないですもの。ねぇ、小夜様」

「そうだよ。私だって美羽がおかしくなったんじゃないかって半信半疑だったもん。今はガッツリ信じてるよ!」

「小夜の時に分かったことがあるんだ。目は口ほどに物を言うということが」

「魔王様、それはどういう……?」

 魔王はニコリと笑って言った。

「予定通り、今からみんなであちらの世界に行こう」

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