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第二章 日常、そして非日常
離島②
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私は巨大な食虫植物の餌食になろうとしている。
「美羽、今助けるからな!」
魔王は食虫植物に向かって思い切り炎を放った。
「熱っ! ヤバッ、燃えちゃう、燃えちゃう、制服燃えちゃう」
「美羽、少し耐えてくれ、もう少しで倒せる」
魔王が放った炎によって食虫植物は焼き払われようとしているが、私も同時に火に炙られている。
「早くこの火を消して! この制服一着いくらすると思ってんの? 燃えちゃったら修復困難なんだから。あと半年の為に買い直すなんて絶対嫌! 早く消して!」
「だが、倒さないと美羽が……」
「私はどうなっても良いから制服だけは守って!」
「美羽……人のこと呆れた顔で見てたけど、美羽も大概だよ」
小夜が何やら呟いているがそれどころではない。制服の危機だ。こんなことなら安いジャージで来れば良かった。次からはそうしよう。絶対そうしよう。
そう心に決めていると、蔦も炎で燃えてきており、今にも制服に引火しようとしている。
「早く! 何でも良いから早く消して!」
私が叫ぶと上から雨のように水が降ってきた。パラパラではなく豪雨のように。火はあっという間に消えていき制服は何とか無事なようだ。
安堵したのも束の間、私に絡みついていた蔦は炎で燃やされたことによって縮れていたようだ。プチンと切れた。
「ひゃーー! 魔王様!」
真下にいる食虫植物は完全には焼き払われておらず、口がパックリ開いた状態でそこにいた。
「美羽!」
魔王が軽やかな身のこなしで飛んだ。私をキャッチし、食虫植物がいないところに着地した。
「美羽、すまない。そんなに制服が大事だと思わなくて……」
「あ、ありがとう。怖かった」
私と魔王の元へ小夜も駆けつけてきた。
「あの食虫植物、もう死んじゃったっぽいよ。あれから動かないから」
「だが、中には消化液が入ってるから触るなよ。溶けるぞ」
「マジ? ヤバッ。あの中落ちなくて良かった。魔王様、ありがとう」
こうして制服は守られた。びしょ濡れの私を魔王が乾かしてくれ、その後も三人で前へと進んだ。
木の根がうねうねと襲ってきたり、土が急に盛り上がって土の人形が襲ってきたり散々な目にあったが、何とか森から脱出できた。
「あ、あそこじゃない? ゲームで見た景色にそっくり」
「うむ。ここのようだな」
小夜と魔王が目的の場所を見つけたようだ。私も小夜と魔王に続き、崖の近くに立った。
「めっちゃ景色良いね! レイラにも見せてあげたいね」
「だね。写真はバッチリ撮ってあるから! ついでにスマホで動画も撮っとこ」
小夜が撮影をしている横で崖の下を覗いてみた。
「これ、落ちたらひとたまりも無いね。下までどうやって行く? ここから飛び込むのは危険すぎるよ」
「俺が小夜を連れて下まで行くから安心しろ。鍾乳洞の中までは入れんが途中までは付いて行くつもりだ。海の中も安全とは言えんからな」
「え、ガチ!? 魔王様とダイビングデート。可愛い小魚を見ながら二人で見つめ合う……最高じゃん。魔王様、早く行こ。美羽、森に戻っちゃダメだよ。危険だからね。英単語でも覚えてて。あとこのカメラもこの下落とさないように持ってて」
小夜は早口で喋り、私にカメラを渡してきた。魔王も空間魔法から小夜のダイビンググッズを取り出した。
「俺はあっちいってるから、着替えが済んだら呼んでくれ」
◇◇◇◇
「魔王様、準備オッケーです。行きましょ行きましょ」
「美羽、絶対にここから動くんじゃないぞ。これ御守りだ。一度だけだが魔法を跳ね返す」
「うん。行ってらっしゃい。早く戻ってきてね」
魔王の抱っこで小夜は崖の下に降りた。
「よし、私は勉強勉強」
私は単語帳を片手にブツブツと英単語を呟きながら待った。
英単語を眺めていると、ふと視線を感じた。小夜と魔王が戻ってきたのだろうかと思い、辺りをキョロキョロ見渡すが誰もいない。
「気のせいか。まだ十分しか経ってないもんね」
再び視線を単語帳に移す。やはり何かに見られている気がする。少しだけ歩いてみよう。そう思って数歩進むと、少し離れた所にある草が少し揺れた気がした。
再び元いた場所まで歩くとやはり草がカサカサと揺れた。恐る恐るそこに近付き、草をかき分けてみると……。
「え、人?」
襲ってこないので、小動物か爬虫類かと思っていたらまさかの少年だった。それも見た目はかなりの童顔だ。
「バレちゃった。てへ」
てへッ。って、可愛いけどさ。めっちゃ可愛いけど、何ならギューってしたくなるほど可愛いけど、一体この子は誰なのだろうか。
「えーと、君は迷子かな?」
「違うよ。僕のクリフを攫いに来たんでしょ? だから追い返そうと思って」
「追い返す?」
その言葉を聞いてハッとした。
「もしかして、今までの食虫植物とか土人形とか君の仕業?」
「そうだよ。あのお兄さんに全部やっつけられちゃったけど。クリフは絶対に渡さないから」
「クリフって何?」
「この森に住んでる猫だよ。稀少だからってみんな欲しがるんだ。だから、僕がこうやってみんな追い返してるんだ。だからお姉さんも早く帰って。じゃないと……」
少年が呪文を唱え始めた。
「待って待って! 私たちは猫を捕まえにきたんじゃないよ! この下の海に用事があって来ただけだから」
私の必死な訴えに、少年は魔法を使うのをやめてくれたようだ。何も起こらなかった。
「じゃあ、用事が終わったら帰ってくれる?」
「もちろん。あ、もしかしてあの猫ちゃん?」
猫がこちらをじっと見ている。私の足元までやってきたので顎を撫でてなると喉を鳴らしてくつろぎ始めた。
「珍しいね。クリフが懐いてる」
「この御守りをあげるよ。きっと守ってくれるよ」
そう言って魔王に貰った御守りの鈴をクリフの首に付けてあげた。
「お姉さん名前は?」
「美羽だよ」
「僕、コリン。さっきはごめんね。クリフ行こう。またねミウ」
コリンと名乗る少年はクリフと去っていった。
「コリン……?」
どこかで聞いたことがある名前だが、どこだっただろうか。何かのお菓子だろうか。コロコロして美味しそうな名前だからきっとそうに違いない。自己完結したので、私は再び単語帳に目を移した。
この時の私は、既に攻略対象の二人に出会っていることには気付いていない。
「美羽、今助けるからな!」
魔王は食虫植物に向かって思い切り炎を放った。
「熱っ! ヤバッ、燃えちゃう、燃えちゃう、制服燃えちゃう」
「美羽、少し耐えてくれ、もう少しで倒せる」
魔王が放った炎によって食虫植物は焼き払われようとしているが、私も同時に火に炙られている。
「早くこの火を消して! この制服一着いくらすると思ってんの? 燃えちゃったら修復困難なんだから。あと半年の為に買い直すなんて絶対嫌! 早く消して!」
「だが、倒さないと美羽が……」
「私はどうなっても良いから制服だけは守って!」
「美羽……人のこと呆れた顔で見てたけど、美羽も大概だよ」
小夜が何やら呟いているがそれどころではない。制服の危機だ。こんなことなら安いジャージで来れば良かった。次からはそうしよう。絶対そうしよう。
そう心に決めていると、蔦も炎で燃えてきており、今にも制服に引火しようとしている。
「早く! 何でも良いから早く消して!」
私が叫ぶと上から雨のように水が降ってきた。パラパラではなく豪雨のように。火はあっという間に消えていき制服は何とか無事なようだ。
安堵したのも束の間、私に絡みついていた蔦は炎で燃やされたことによって縮れていたようだ。プチンと切れた。
「ひゃーー! 魔王様!」
真下にいる食虫植物は完全には焼き払われておらず、口がパックリ開いた状態でそこにいた。
「美羽!」
魔王が軽やかな身のこなしで飛んだ。私をキャッチし、食虫植物がいないところに着地した。
「美羽、すまない。そんなに制服が大事だと思わなくて……」
「あ、ありがとう。怖かった」
私と魔王の元へ小夜も駆けつけてきた。
「あの食虫植物、もう死んじゃったっぽいよ。あれから動かないから」
「だが、中には消化液が入ってるから触るなよ。溶けるぞ」
「マジ? ヤバッ。あの中落ちなくて良かった。魔王様、ありがとう」
こうして制服は守られた。びしょ濡れの私を魔王が乾かしてくれ、その後も三人で前へと進んだ。
木の根がうねうねと襲ってきたり、土が急に盛り上がって土の人形が襲ってきたり散々な目にあったが、何とか森から脱出できた。
「あ、あそこじゃない? ゲームで見た景色にそっくり」
「うむ。ここのようだな」
小夜と魔王が目的の場所を見つけたようだ。私も小夜と魔王に続き、崖の近くに立った。
「めっちゃ景色良いね! レイラにも見せてあげたいね」
「だね。写真はバッチリ撮ってあるから! ついでにスマホで動画も撮っとこ」
小夜が撮影をしている横で崖の下を覗いてみた。
「これ、落ちたらひとたまりも無いね。下までどうやって行く? ここから飛び込むのは危険すぎるよ」
「俺が小夜を連れて下まで行くから安心しろ。鍾乳洞の中までは入れんが途中までは付いて行くつもりだ。海の中も安全とは言えんからな」
「え、ガチ!? 魔王様とダイビングデート。可愛い小魚を見ながら二人で見つめ合う……最高じゃん。魔王様、早く行こ。美羽、森に戻っちゃダメだよ。危険だからね。英単語でも覚えてて。あとこのカメラもこの下落とさないように持ってて」
小夜は早口で喋り、私にカメラを渡してきた。魔王も空間魔法から小夜のダイビンググッズを取り出した。
「俺はあっちいってるから、着替えが済んだら呼んでくれ」
◇◇◇◇
「魔王様、準備オッケーです。行きましょ行きましょ」
「美羽、絶対にここから動くんじゃないぞ。これ御守りだ。一度だけだが魔法を跳ね返す」
「うん。行ってらっしゃい。早く戻ってきてね」
魔王の抱っこで小夜は崖の下に降りた。
「よし、私は勉強勉強」
私は単語帳を片手にブツブツと英単語を呟きながら待った。
英単語を眺めていると、ふと視線を感じた。小夜と魔王が戻ってきたのだろうかと思い、辺りをキョロキョロ見渡すが誰もいない。
「気のせいか。まだ十分しか経ってないもんね」
再び視線を単語帳に移す。やはり何かに見られている気がする。少しだけ歩いてみよう。そう思って数歩進むと、少し離れた所にある草が少し揺れた気がした。
再び元いた場所まで歩くとやはり草がカサカサと揺れた。恐る恐るそこに近付き、草をかき分けてみると……。
「え、人?」
襲ってこないので、小動物か爬虫類かと思っていたらまさかの少年だった。それも見た目はかなりの童顔だ。
「バレちゃった。てへ」
てへッ。って、可愛いけどさ。めっちゃ可愛いけど、何ならギューってしたくなるほど可愛いけど、一体この子は誰なのだろうか。
「えーと、君は迷子かな?」
「違うよ。僕のクリフを攫いに来たんでしょ? だから追い返そうと思って」
「追い返す?」
その言葉を聞いてハッとした。
「もしかして、今までの食虫植物とか土人形とか君の仕業?」
「そうだよ。あのお兄さんに全部やっつけられちゃったけど。クリフは絶対に渡さないから」
「クリフって何?」
「この森に住んでる猫だよ。稀少だからってみんな欲しがるんだ。だから、僕がこうやってみんな追い返してるんだ。だからお姉さんも早く帰って。じゃないと……」
少年が呪文を唱え始めた。
「待って待って! 私たちは猫を捕まえにきたんじゃないよ! この下の海に用事があって来ただけだから」
私の必死な訴えに、少年は魔法を使うのをやめてくれたようだ。何も起こらなかった。
「じゃあ、用事が終わったら帰ってくれる?」
「もちろん。あ、もしかしてあの猫ちゃん?」
猫がこちらをじっと見ている。私の足元までやってきたので顎を撫でてなると喉を鳴らしてくつろぎ始めた。
「珍しいね。クリフが懐いてる」
「この御守りをあげるよ。きっと守ってくれるよ」
そう言って魔王に貰った御守りの鈴をクリフの首に付けてあげた。
「お姉さん名前は?」
「美羽だよ」
「僕、コリン。さっきはごめんね。クリフ行こう。またねミウ」
コリンと名乗る少年はクリフと去っていった。
「コリン……?」
どこかで聞いたことがある名前だが、どこだっただろうか。何かのお菓子だろうか。コロコロして美味しそうな名前だからきっとそうに違いない。自己完結したので、私は再び単語帳に目を移した。
この時の私は、既に攻略対象の二人に出会っていることには気付いていない。
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