俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜

七彩 陽

文字の大きさ
上 下
110 / 144
第七章 人間界侵略回避

巨大スライム

しおりを挟む
 西にはスライムがそれはもう数え切れない程いた。しかも、小さなスライム同士がくっ付き、やや大きなスライムに。そして、その連鎖は止まらない。人よりも大きなスライムまでいた。

「ギャァァァ」

「もうやめて! もう動けないから!」

「騎士なんてなるんじゃなかった。騎士なんてなるんじゃなかった。騎士なんてなるんじゃなかった……」

 何処からか悲鳴や念仏のようなものが聞こえてきた。

 俺は足場のスライムを聖剣で薙ぎ払い、道を作った。

「水よ、如何なる攻撃も防げ水壁ウォーターウォール

 エドワードが詠唱すれば、その道に沿って水のシールドが現れた。そこを通って声のする方へと向かった。

 こんな時に不謹慎だが、水のシールド内は癒される。シールドを通して見えるスライムが、まるで海の中をふよふよと泳いでいるクラゲのようにさえ見えてきた。

 ベチョッ!

 呑気な事を考えていたら、巨大スライムがシールドに突撃してきて驚いた。

「オリヴァー大丈夫?」

「うん、ごめん。負傷者助けに行かないとね」

 死者が出ていない事を祈りながら進むと、先程の声の主達がいた。

 倒れている騎士は数十名。服は溶け、全身の皮膚は爛れ、見るも無惨な姿になっていた。かろうじて残った鎧さえもスライムによって溶かされつつあった。

「殺してくれ。オレを殺してくれ」

「ボクも、もう死にたい……ギャァァ!」

 騎士の一人に巨大スライムがのしかかった。

 俺は急いで巨大スライムを聖剣で叩き斬……れなかった。ポヨンと弾かれたのだ。

「聖剣が効かない」

「オリヴァー、先に治癒してあげて!」

「うん」

 スライムが乗った状態で騎士に治癒魔法をかけた。しかし、皮膚が再生したと同時にスライムによって溶かされる。

 今この瞬間、この騎士に息があるかは分からない。それでも、魔法をかけるのをやめたら確実に死ぬ。

「水よ、体内の水量を増やせ水量変化アマウントチェンジ

 エドワードが詠唱すれば、巨大スライムは更に大きく膨らんだ。いつもなら弾け飛ぶが、いつまでも膨らみ続ける。

「どうすれば……」

 考えている間にも他のスライムが襲ってくる。小さいスライムはエドワードの魔法で消滅したが、次から次へとキリがない。俺は治癒の手を止められないし……。

「みーちゃん! あのデカいのどうにかして!」

「キィ!」

 みーちゃんが出てくると、大きく口を開いた。そして、パクッと食べた。まるでゼリーを食べるかの如くパクパクツルンと食べた。

「みーちゃん? そんなの食べて大丈夫?」

「キキィ」

「美味しかったんだ」

 メレディスが後でお腹を壊しませんようにと祈りながら騎士を治癒すると、傷ひとつない綺麗な元の姿に戻った。ただ、素っ裸だが。

「あれ、ボク……どうして?」

「良かった、死んでなかった」

 かろうじて息はあったのだろう。治癒魔法をかけ続けて良かった。

「って、ホッとしてる場合じゃない」

 他の人も重症だ。急いで治癒しなければ。しかし、スライムは次々に襲いかかってくる。治してもキリがない。

 数十人転移させ、いざという時に魔力切れなんてシャレにならない。ただ、この大量のスライムの中、剣しか使えない騎士らが避難場所まで自力で辿り着くのは困難だ。
 
 他の場所でも重症者は多数。光の魔力は温存させたい。

「やったことないけど出来るかな」

 俺は闇魔法を優位に立たせて目を瞑った。

 何だか手が寂しい……。

「ごめん、エドワード。手貸して」

「良いけど……はい」

 エドワードと手を繋ぎ、ここにいる騎士達が入れる大きさの結界を張った。

「ふぅ、成功したみたい」

 薄っすらと闇のベールが見えた。

「オリヴァーの手って小さいんだね」

「そう? ノエルよりは大きいよ」

「ノエルはこれより小さいのか」

 エドワードが繋いでいた手を離して、手の平を合わせてきた。

「オリヴァー、今度シミュレーションさせてよ」

「何の?」

「ノエルと手を繋ぐシミュレーション」

「ぶっつけ本番で良いじゃん」

「手汗とかかいて嫌われたくないし。お願い!」

「良いけど……」

 呑気な会話をしていると、騎士らの声が聞こえた。

「オレ、既に痛み感じなくなってる」

「ぼくもです……ギャッ、嘘でした。まだ痛覚残ってました」

「結界張って満足してた。スライム倒さないと」

 エドワードと二人で結界内のスライムを倒し、騎士らを治癒した。

 素っ裸の騎士らに結界から出ないよう説明し、俺達は上空からスライムの動きなどを観察することにした。

「だから、お願い。エドワードも背中に乗せて」

 みーちゃんはそっぽを向いた。俺とメレディスのセットなら良いが、俺とエドワードが二人で乗るのはダメなようだ。

「仕方ないよ。僕、待ってるから様子見てきて」

「ごめんね。すぐ戻ってくるから」

 俺はみーちゃんの背に乗って上空へと飛んだ。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【完結】討伐される魔王に転生したので世界平和を目指したら、勇者に溺愛されました

じゅん
BL
 人間領に進撃許可を出そうとしていた美しき魔王は、突如、前世の記憶を思い出す。 「ここ、RPGゲームの世界じゃん! しかもぼく、勇者に倒されて死んじゃうんですけど!」  ぼくは前世では病弱で、18歳で死んでしまった。今度こそ長生きしたい!  勇者に討たれないためには「人と魔族が争わない平和な世の中にすればいい」と、魔王になったぼくは考えて、勇者に協力してもらうことにした。本来は天敵だけど、勇者は魔族だからって差別しない人格者だ。  勇者に誠意を試されるものの、信頼を得ることに成功!   世界平和を進めていくうちに、だんだん勇者との距離が近くなり――。 ※注: R15の回には、小見出しに☆、 R18の回には、小見出しに★をつけています。

【完結】元騎士は相棒の元剣闘士となんでも屋さん営業中

きよひ
BL
 ここはドラゴンや魔獣が住み、冒険者や魔術師が職業として存在する世界。  カズユキはある国のある領のある街で「なんでも屋」を営んでいた。  家庭教師に家業の手伝い、貴族の護衛に魔獣退治もなんでもござれ。  そんなある日、相棒のコウが気絶したオッドアイの少年、ミナトを連れて帰ってくる。  この話は、お互い想い合いながらも10年間硬直状態だったふたりが、純真な少年との関わりや事件によって動き出す物語。 ※コウ(黒髪長髪/褐色肌/青目/超高身長/無口美形)×カズユキ(金髪短髪/色白/赤目/高身長/美形)←ミナト(赤髪ベリーショート/金と黒のオッドアイ/細身で元気な15歳) ※受けのカズユキは性に奔放な設定のため、攻めのコウ以外との体の関係を仄めかす表現があります。 ※同性婚が認められている世界観です。

処理中です...