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第六章 二人目の転生者
奴隷の首輪
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ここはブライアーズ王国。アーサーの主人がいるアーネット公爵の屋敷にやってきた。
ジェラルドは心底面倒臭そうに言った。
「何で俺がこんなこと」
「いたいけな少女を放っておけないじゃん?」
「まぁな」
ジェラルドはアーサーの本来の姿を横目に見て、それ以上は何も言わなかった。
ちなみに、アーサーが女性であること、奴隷であることは皆に説明したが、転生者であることは秘密にしてある。それは、アーサーたっての希望だった。
『言っても皆信じねーだろうし、言ったところで変人扱いされるだけだろ』
『俺は良いのか』
『オリヴァーは、まぁ良いかなって。勇者だし』
その理屈は分からないが、ノエルと前世の話で盛り上がっているので、ある意味良かったのかもしれない。
そして、今からしようとしていることはアーサーの購入。人を物扱いするのは正直嫌だが、アーサーの首に付いている魔道具は主人にしか外せない。
金を積んで素直に言うことを聞いてくれれば何の問題もないが、何せ公爵だ。金で動かない可能性も高い。
そこで、ノエルが考えたのが『アーサーと引き換えに俺を奴隷として売る』ことだ。上手いこと交渉し、アーサーを買い取れればすぐに逃げる。
年齢で言えばキースを交渉人にする方が良いが、キースは平民。礼儀作法云々や立ち居振る舞いの事を考えると貴族のあれこれを短期間で叩き込むのは難しい。
更には、逃げる時に戦闘になる可能性を考慮し『俺達は何もしてません』とシラを切りたい。そうなると、貴族で且つ無詠唱で魔法が使えるジェラルドが最適だ。
——そういう訳で、俺は二度としないと決めていた女装を再びしている。人助けなら致し方ない。
なので、首にはアーサーと同じような首輪を付けて、簡素なワンピースを着ている。ちなみに今回は銀髪にしてみた。特に意味はない。
「おれもこんなに可愛かったら良かったのに。肌もツルツルだし」
「アーサーだって可愛いよ」
ジェラルドは、俺とアーサーのやり取りを黙って眺めている。
「ジェラルド、どうかした?」
「まさか、おれに惚れたか? まぁ、お前なら顔が良いからな。買われた暁には性奴隷になってやることも……」
「ア、アーサー、平然と何言ってんの!?」
「だって、おれコイツに買われるんだろ」
「もう行こう。早く済ませて男に戻りたいし」
「分かるわー、おれも」
◇
手始めに、ジェラルドはアーネットの前に大金を積み上げた。
「ほぅ? 私が愛情込めて育てた娘同然の奴隷を買いたいと?」
「はい。足りなければ追加で」
「ここに連れて来てくれたことには感謝するが、アーシャは誰にも譲る気はないよ」
アーネットは人形のようにアーサーを隣に座らせた。
どうでも良いが、アーサーの本名が違うことを今知った。
「それにしても君も随分と可愛らしい奴隷を連れているんだね」
アーネットに舐めるように見られ、ゾッとした。そんな俺の肩をジェラルドはそっと抱き寄せて言った。
「はい。うちのは従順で良いですよ。ね、オリヴィア」
「はい。ご主人様」
ジェラルドは、さも今思いついたかのようにアーネットに言った。
「提案なのですが、うちの奴隷と交換するのは如何でしょう? 十分に躾はされていますので」
「交換?」
アーネットはアーサーと俺を交互に見た。顔と体、全身を比較するように見てから言った。
「可愛らしいが、やはり私にはアーシャしかおらん。なぁ、アーシャ」
人目も憚らずアーネットはアーサーの胸を鷲掴みにし、キスしようとした。そして、殴られた。
「やめろ! 気色悪い!」
ジェラルドの肩が震えている。笑いを堪えているのだろう。
「オホンッ、恥ずかしがり屋の奴隷なんだ」
アーネットは何もなかったかのように、再びアーサーを人形のように隣においた。それを見て、ジェラルドは皮肉っぽく言った。
「うちのオリヴィアは人目も憚らず何でもしてくれますよ」
「何でも? それは真か?」
アーネットが食いついた。
「はい、何でも。なぁ、オリヴィア」
「はい、それがご主人様の望みなら。ここでご奉仕致しましょうか?」
俺は上目遣いでジェラルドのシャツのボタンに手をかけた。すると、ジェラルドに優しく手を取られた。
「今はやめておこう」
「承知しました。あの……ご主人様?」
上目遣いのまま、不安そうにジェラルドに言った。
「わたくし売られてしまうのですか?」
「嫌か?」
「いえ……大人の男性も魅力的かもしれません」
俺はアーネットを見て頬を赤らめてみた。すると、アーネットの鼻息が荒くなった。
「金ならいくらでも積む。アーシャはやれないが買い取らせてくれ」
「それは虫が良過ぎるのでは? その子と交換でなければ譲れません」
「そんな事を言っても良いのか? 確か君はウィルモット王国の民だろう? あそこは人身売買を禁止していると聞いたが?」
アーネットが脅してきた。ジェラルドも名前は偽っているものの、アーサーが我が国ウィルモット王国にいることはバレている為、国名までは偽っていないのだ。
ただ、ジェラルドはそんな脅しに臆することなく言った。
「私は自国では奴隷を購入していないので、何の問題もございません。他国で何をしようが咎められる事はありませんから」
「致し方ない。力尽くで頂くことにするよ」
アーネットが指をパチンと鳴らすと扉が開き、アーネットの護衛騎士が次々と入ってきた。
何となく想定はしていたが、作戦Ⅰは失敗だ。作戦Ⅱへ移行する——。
ジェラルドは心底面倒臭そうに言った。
「何で俺がこんなこと」
「いたいけな少女を放っておけないじゃん?」
「まぁな」
ジェラルドはアーサーの本来の姿を横目に見て、それ以上は何も言わなかった。
ちなみに、アーサーが女性であること、奴隷であることは皆に説明したが、転生者であることは秘密にしてある。それは、アーサーたっての希望だった。
『言っても皆信じねーだろうし、言ったところで変人扱いされるだけだろ』
『俺は良いのか』
『オリヴァーは、まぁ良いかなって。勇者だし』
その理屈は分からないが、ノエルと前世の話で盛り上がっているので、ある意味良かったのかもしれない。
そして、今からしようとしていることはアーサーの購入。人を物扱いするのは正直嫌だが、アーサーの首に付いている魔道具は主人にしか外せない。
金を積んで素直に言うことを聞いてくれれば何の問題もないが、何せ公爵だ。金で動かない可能性も高い。
そこで、ノエルが考えたのが『アーサーと引き換えに俺を奴隷として売る』ことだ。上手いこと交渉し、アーサーを買い取れればすぐに逃げる。
年齢で言えばキースを交渉人にする方が良いが、キースは平民。礼儀作法云々や立ち居振る舞いの事を考えると貴族のあれこれを短期間で叩き込むのは難しい。
更には、逃げる時に戦闘になる可能性を考慮し『俺達は何もしてません』とシラを切りたい。そうなると、貴族で且つ無詠唱で魔法が使えるジェラルドが最適だ。
——そういう訳で、俺は二度としないと決めていた女装を再びしている。人助けなら致し方ない。
なので、首にはアーサーと同じような首輪を付けて、簡素なワンピースを着ている。ちなみに今回は銀髪にしてみた。特に意味はない。
「おれもこんなに可愛かったら良かったのに。肌もツルツルだし」
「アーサーだって可愛いよ」
ジェラルドは、俺とアーサーのやり取りを黙って眺めている。
「ジェラルド、どうかした?」
「まさか、おれに惚れたか? まぁ、お前なら顔が良いからな。買われた暁には性奴隷になってやることも……」
「ア、アーサー、平然と何言ってんの!?」
「だって、おれコイツに買われるんだろ」
「もう行こう。早く済ませて男に戻りたいし」
「分かるわー、おれも」
◇
手始めに、ジェラルドはアーネットの前に大金を積み上げた。
「ほぅ? 私が愛情込めて育てた娘同然の奴隷を買いたいと?」
「はい。足りなければ追加で」
「ここに連れて来てくれたことには感謝するが、アーシャは誰にも譲る気はないよ」
アーネットは人形のようにアーサーを隣に座らせた。
どうでも良いが、アーサーの本名が違うことを今知った。
「それにしても君も随分と可愛らしい奴隷を連れているんだね」
アーネットに舐めるように見られ、ゾッとした。そんな俺の肩をジェラルドはそっと抱き寄せて言った。
「はい。うちのは従順で良いですよ。ね、オリヴィア」
「はい。ご主人様」
ジェラルドは、さも今思いついたかのようにアーネットに言った。
「提案なのですが、うちの奴隷と交換するのは如何でしょう? 十分に躾はされていますので」
「交換?」
アーネットはアーサーと俺を交互に見た。顔と体、全身を比較するように見てから言った。
「可愛らしいが、やはり私にはアーシャしかおらん。なぁ、アーシャ」
人目も憚らずアーネットはアーサーの胸を鷲掴みにし、キスしようとした。そして、殴られた。
「やめろ! 気色悪い!」
ジェラルドの肩が震えている。笑いを堪えているのだろう。
「オホンッ、恥ずかしがり屋の奴隷なんだ」
アーネットは何もなかったかのように、再びアーサーを人形のように隣においた。それを見て、ジェラルドは皮肉っぽく言った。
「うちのオリヴィアは人目も憚らず何でもしてくれますよ」
「何でも? それは真か?」
アーネットが食いついた。
「はい、何でも。なぁ、オリヴィア」
「はい、それがご主人様の望みなら。ここでご奉仕致しましょうか?」
俺は上目遣いでジェラルドのシャツのボタンに手をかけた。すると、ジェラルドに優しく手を取られた。
「今はやめておこう」
「承知しました。あの……ご主人様?」
上目遣いのまま、不安そうにジェラルドに言った。
「わたくし売られてしまうのですか?」
「嫌か?」
「いえ……大人の男性も魅力的かもしれません」
俺はアーネットを見て頬を赤らめてみた。すると、アーネットの鼻息が荒くなった。
「金ならいくらでも積む。アーシャはやれないが買い取らせてくれ」
「それは虫が良過ぎるのでは? その子と交換でなければ譲れません」
「そんな事を言っても良いのか? 確か君はウィルモット王国の民だろう? あそこは人身売買を禁止していると聞いたが?」
アーネットが脅してきた。ジェラルドも名前は偽っているものの、アーサーが我が国ウィルモット王国にいることはバレている為、国名までは偽っていないのだ。
ただ、ジェラルドはそんな脅しに臆することなく言った。
「私は自国では奴隷を購入していないので、何の問題もございません。他国で何をしようが咎められる事はありませんから」
「致し方ない。力尽くで頂くことにするよ」
アーネットが指をパチンと鳴らすと扉が開き、アーネットの護衛騎士が次々と入ってきた。
何となく想定はしていたが、作戦Ⅰは失敗だ。作戦Ⅱへ移行する——。
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