俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜

七彩 陽

文字の大きさ
上 下
94 / 144
第六章 二人目の転生者

奴隷の首輪

しおりを挟む
 ここはブライアーズ王国。アーサーの主人がいるアーネット公爵の屋敷にやってきた。

 ジェラルドは心底面倒臭そうに言った。

「何で俺がこんなこと」

「いたいけな少女を放っておけないじゃん?」

「まぁな」

 ジェラルドはアーサーの本来の姿を横目に見て、それ以上は何も言わなかった。

 ちなみに、アーサーが女性であること、奴隷であることは皆に説明したが、転生者であることは秘密にしてある。それは、アーサーたっての希望だった。

『言っても皆信じねーだろうし、言ったところで変人扱いされるだけだろ』

『俺は良いのか』

『オリヴァーは、まぁ良いかなって。勇者だし』

 その理屈は分からないが、ノエルと前世の話で盛り上がっているので、ある意味良かったのかもしれない。

 そして、今からしようとしていることはアーサーの購入。人を物扱いするのは正直嫌だが、アーサーの首に付いている魔道具は主人にしか外せない。

 金を積んで素直に言うことを聞いてくれれば何の問題もないが、何せ公爵だ。金で動かない可能性も高い。

 そこで、ノエルが考えたのが『アーサーと引き換えに俺を奴隷として売る』ことだ。上手いこと交渉し、アーサーを買い取れればすぐに逃げる。

 年齢で言えばキースを交渉人にする方が良いが、キースは平民。礼儀作法云々や立ち居振る舞いの事を考えると貴族のあれこれを短期間で叩き込むのは難しい。

 更には、逃げる時に戦闘になる可能性を考慮し『俺達は何もしてません』とシラを切りたい。そうなると、貴族で且つ無詠唱で魔法が使えるジェラルドが最適だ。

 ——そういう訳で、俺は二度としないと決めていた女装を再びしている。人助けなら致し方ない。

 なので、首にはアーサーと同じような首輪を付けて、簡素なワンピースを着ている。ちなみに今回は銀髪にしてみた。特に意味はない。

「おれもこんなに可愛かったら良かったのに。肌もツルツルだし」

「アーサーだって可愛いよ」

 ジェラルドは、俺とアーサーのやり取りを黙って眺めている。

「ジェラルド、どうかした?」

「まさか、おれに惚れたか? まぁ、お前なら顔が良いからな。買われた暁には性奴隷になってやることも……」

「ア、アーサー、平然と何言ってんの!?」

「だって、おれコイツに買われるんだろ」

「もう行こう。早く済ませて男に戻りたいし」

「分かるわー、おれも」


 ◇


 手始めに、ジェラルドはアーネットの前に大金を積み上げた。

「ほぅ? 私が愛情込めて育てた娘同然の奴隷を買いたいと?」

「はい。足りなければ追加で」

「ここに連れて来てくれたことには感謝するが、アーシャは誰にも譲る気はないよ」

 アーネットは人形のようにアーサーを隣に座らせた。

 どうでも良いが、アーサーの本名が違うことを今知った。

「それにしても君も随分と可愛らしい奴隷を連れているんだね」

 アーネットに舐めるように見られ、ゾッとした。そんな俺の肩をジェラルドはそっと抱き寄せて言った。

「はい。うちのは従順で良いですよ。ね、オリヴィア」

「はい。ご主人様」

 ジェラルドは、さも今思いついたかのようにアーネットに言った。

「提案なのですが、うちの奴隷と交換するのは如何でしょう? 十分に躾はされていますので」

「交換?」

 アーネットはアーサーと俺を交互に見た。顔と体、全身を比較するように見てから言った。

「可愛らしいが、やはり私にはアーシャしかおらん。なぁ、アーシャ」

 人目も憚らずアーネットはアーサーの胸を鷲掴みにし、キスしようとした。そして、殴られた。

「やめろ! 気色悪い!」

 ジェラルドの肩が震えている。笑いを堪えているのだろう。

「オホンッ、恥ずかしがり屋の奴隷なんだ」

 アーネットは何もなかったかのように、再びアーサーを人形のように隣においた。それを見て、ジェラルドは皮肉っぽく言った。

「うちのオリヴィアは人目も憚らず何でもしてくれますよ」

「何でも? それは真か?」

 アーネットが食いついた。

「はい、何でも。なぁ、オリヴィア」

「はい、それがご主人様の望みなら。ここでご奉仕致しましょうか?」

 俺は上目遣いでジェラルドのシャツのボタンに手をかけた。すると、ジェラルドに優しく手を取られた。

「今はやめておこう」

「承知しました。あの……ご主人様?」

 上目遣いのまま、不安そうにジェラルドに言った。

「わたくし売られてしまうのですか?」

「嫌か?」

「いえ……大人の男性も魅力的かもしれません」

 俺はアーネットを見て頬を赤らめてみた。すると、アーネットの鼻息が荒くなった。

「金ならいくらでも積む。アーシャはやれないが買い取らせてくれ」

「それは虫が良過ぎるのでは? その子と交換でなければ譲れません」

「そんな事を言っても良いのか? 確か君はウィルモット王国の民だろう? あそこは人身売買を禁止していると聞いたが?」

 アーネットが脅してきた。ジェラルドも名前は偽っているものの、アーサーが我が国ウィルモット王国にいることはバレている為、国名までは偽っていないのだ。

 ただ、ジェラルドはそんな脅しに臆することなく言った。

「私は自国では奴隷を購入していないので、何の問題もございません。他国で何をしようが咎められる事はありませんから」

「致し方ない。力尽くで頂くことにするよ」

 アーネットが指をパチンと鳴らすと扉が開き、アーネットの護衛騎士が次々と入ってきた。

 何となく想定はしていたが、作戦Ⅰは失敗だ。作戦Ⅱへ移行する——。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【完結】討伐される魔王に転生したので世界平和を目指したら、勇者に溺愛されました

じゅん
BL
 人間領に進撃許可を出そうとしていた美しき魔王は、突如、前世の記憶を思い出す。 「ここ、RPGゲームの世界じゃん! しかもぼく、勇者に倒されて死んじゃうんですけど!」  ぼくは前世では病弱で、18歳で死んでしまった。今度こそ長生きしたい!  勇者に討たれないためには「人と魔族が争わない平和な世の中にすればいい」と、魔王になったぼくは考えて、勇者に協力してもらうことにした。本来は天敵だけど、勇者は魔族だからって差別しない人格者だ。  勇者に誠意を試されるものの、信頼を得ることに成功!   世界平和を進めていくうちに、だんだん勇者との距離が近くなり――。 ※注: R15の回には、小見出しに☆、 R18の回には、小見出しに★をつけています。

【完結】元騎士は相棒の元剣闘士となんでも屋さん営業中

きよひ
BL
 ここはドラゴンや魔獣が住み、冒険者や魔術師が職業として存在する世界。  カズユキはある国のある領のある街で「なんでも屋」を営んでいた。  家庭教師に家業の手伝い、貴族の護衛に魔獣退治もなんでもござれ。  そんなある日、相棒のコウが気絶したオッドアイの少年、ミナトを連れて帰ってくる。  この話は、お互い想い合いながらも10年間硬直状態だったふたりが、純真な少年との関わりや事件によって動き出す物語。 ※コウ(黒髪長髪/褐色肌/青目/超高身長/無口美形)×カズユキ(金髪短髪/色白/赤目/高身長/美形)←ミナト(赤髪ベリーショート/金と黒のオッドアイ/細身で元気な15歳) ※受けのカズユキは性に奔放な設定のため、攻めのコウ以外との体の関係を仄めかす表現があります。 ※同性婚が認められている世界観です。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...