俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜

七彩 陽

文字の大きさ
上 下
37 / 144
第三章 新メンバー登場

野盗おびき寄せ

しおりを挟む
 ここは山から一時間程歩いたココット村。

「五人も大丈夫?」

「狭いけど野宿よりマシだろ」

 宿が空いてなかったのでギルの家に泊めてもらうことになったのだ。

「ギルの兄弟はお兄さんだけじゃなかったんだね」

 ギルの家には、五歳の双子の妹がいた。

「オリヴァーお兄ちゃん、抱っこ」

「ずるい! 私、おんぶ」

 俺は双子の一人を抱っこし、もう一人をおんぶした。

「お兄ちゃん、大きくなったら結婚しようね」

「ずるい、私も!」

「良かったな。二人も婚約者が出来て」

「ジェラルド、俺が勝手に恋人作ったら許さないんじゃなかったの?」

「俺の前で作ったなら問題ない」

「あっそ。それよりリアム、何で野盗を野放しにしたの?」

 そう、俺達は野盗に会ったのだ。魔石を持って下山していると野盗が二人現れた——。

『おい、それを置いて行ってもらおうか』

『お前らなんかに誰が……』

 威勢よく反発するギルをリアムが制止した。そして、集めた魔石を全て野盗に差し出した。

『これで見逃して下さい』

『な、リアム!?』

 そこにいる皆が驚いた。

 野盗は魔石が入った袋を奪い取り、中を見た。あれからコウモリ型の魔物の群を大量に倒したので四十個近くの魔石が入っている。

『これだけ集めるのにどれだけかかったんだ? 一週……』

『二時間くらいです』

『は? 二時間!?』

 野盗が互いに目を見合わせた。

 リアムはいつになく弱々しく言った。

『あなた方が噂の野盗ですよね? 僕らじゃ到底敵わないよ。剣の修行で一ヶ月は滞在する予定だったけど、やっぱりやめよう』

 すると野盗二人がこそこそと話し始めた。そして何か決まったようだ。野盗が魔石を返してきた。

『ほらよ。剣の修行頑張れよ』

『こんな場所中々ないからな。お前らだけ襲わねーから安心して明日も来い』

 野盗の言動に呆気に取られながらも、俺達はリアムの後に続いて歩いた——。

「野盗が二人なわけないからね」

 リアムが言えば、ギルの父が頷いた。

「野盗は十四、五人はいる。ただ、危ないからそのまま帰ってきて正解だ」

「そんなにいるんだ……でも、何で魔石返してくれたんだろ」

「あの山には野盗の噂が出回って誰も寄り付かなくなったでしょ? だから、野盗の収入源は偽の聖水で得たものだけなんだ。そこへ良いカモが現れるとどうなると思う?」

「どうなるの?」

「はぁ……魔物を狩ってくれる人がいないと、野盗はあの山で生活ができないでしょ?」

 ジェラルドも面倒くさそうに言った。

「自分で魔物狩れば良いのにな」

「それだと野盗のプライドが傷付くとでも思ってるんじゃない? 野盗は人の物を奪ってこそ野盗と言えるから」

「確かにな。自分で狩ったら、ただの善良な民だもんな」

「だから、明日山に入ったら交渉されるか脅されるはずだよ」

「何で今日じゃないの?」

「今日は二人だけだったでしょ? 明日は野盗の頭も含めて全員に囲まれるはずだよ」

「なるほど、そこを一網打尽というわけですわね」

 ノエルは嬉しそうに言うが、ギルの父は一人困惑している。

「やめておきなさい。ワシら村人が総出で挑んでも敵わなかったのに、子供が敵うはずがない」

「でも親父、こいつら凄いんだぜ! 魔物をいとも簡単に倒すんだ。魔石だって短時間でこんなに……」

「ギル! 良い加減にしなさい! お前が余計な話するから皆仕方なく付き合っているんだ」

「違うよ! 聖水だって偽物で、オリヴァーが持ってるのが本物なんだ! だから協力……」

「ギル!」

 ギルの父が大きな声を出したので、皆が一瞬怯んだ。

 子供を心配する父親の気持ちも理解出来るが、これは俺の……俺達の問題でもあるのだ。

「あの……俺達は聖水の謎が知りたいだけですから」

「だが、あれは聖人様が直々に売りに来ていて」

「直々に?」

 光魔法が使えるのは三人。俺を除けばアイリス先生と大司教様だけだ。聖水を作ったのがこの二人の可能性もゼロではない。ただ、アイリス先生なら聖女と呼ばれるはずなので、残るは大司教様となる。

「見た目はどんなでしたか?」

「ワシが見たわけではないが、噂ではピンクの髪に」

 ピンクの髪のワードが出た瞬間、仲間の視線が俺に集まった。

「背が高く、切れ長な目に、赤いマントを着た男の人らしい」

「それって……」

 背の高いエドワードに、切れ長な目のジェラルド、赤いマントを着たリアム、そしてピンクの髪の俺。疑惑は確信に変わった。

「お兄様、これは黒、真っ黒ですわ」

「間違いないね」

「ふざけやがって。オリヴァー、俺が氷漬けにしてやるよ」

「いや、僕が三枚におろしてあげるよ」

「僕が罰しても良いけどね」

 俺達が急に闘志を燃やし始めたので、ギル一家は呆気にとられている。

「えっと、どういうこと?」

 ギルの問いにノエルが自信満々に応えた。

「聖水は光魔法で作りますの。そして、ピンクの髪に光属性なんて、この世界にたった一人しかいませんわ」

「え、オリヴァーって光魔法使えるのか?」

 コクリと頷くと、その場にいたギル一家は理解したようだ。揃って平伏された。

「いやいやいや、顔上げてよ」

 ——そんなこんなで、本物の聖人様の正体を知ったギルの父と兄も協力してくれる運びとなった。

 きっと明日野盗と決戦のはず。明日に備えて作戦会議が開始された。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【完結】元騎士は相棒の元剣闘士となんでも屋さん営業中

きよひ
BL
 ここはドラゴンや魔獣が住み、冒険者や魔術師が職業として存在する世界。  カズユキはある国のある領のある街で「なんでも屋」を営んでいた。  家庭教師に家業の手伝い、貴族の護衛に魔獣退治もなんでもござれ。  そんなある日、相棒のコウが気絶したオッドアイの少年、ミナトを連れて帰ってくる。  この話は、お互い想い合いながらも10年間硬直状態だったふたりが、純真な少年との関わりや事件によって動き出す物語。 ※コウ(黒髪長髪/褐色肌/青目/超高身長/無口美形)×カズユキ(金髪短髪/色白/赤目/高身長/美形)←ミナト(赤髪ベリーショート/金と黒のオッドアイ/細身で元気な15歳) ※受けのカズユキは性に奔放な設定のため、攻めのコウ以外との体の関係を仄めかす表現があります。 ※同性婚が認められている世界観です。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

処理中です...