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第二章 冒険の始まり
流行病の原因
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「リアム、この人どうする?」
「とりあえず木にでも縛っとけば良いんじゃない? 連れてく訳にもいかないし」
「そうだね」
暗殺者っぽい男を木にくくりつけると、男が弱々しく言った。
「後で外してくれよ」
「それはどうかな」
リアムが怪しげな笑みを見せ、男は恐怖の色を見せた。
時にリアムは意地悪になる。冗談なのか本気なのか分からないので余計に怖い。
ちなみに、男は腹部から肩にかけて大きな切り傷が出来たが、治癒魔法で綺麗さっぱり癒えている。
「それよりノエル、あんな危ないことしちゃダメじゃないか! 標的がリアムに移ったからどうにかなったけど、殺されるところだったんだよ」
「お兄様が助けて下さいましたわ」
兄としてノエルを叱るが、ノエルに反省の色は見られない。そんなノエルを見ながらリアムが聞いてきた。
「でも、どうして標的が途中で僕に変わったんだろう。あれは想定外だったな」
きっとノエルは俺とリアムの仲睦まじい絵を男に見せたのだろう。ノエルの絵は例え二人が立っているだけでも、その二人が恋をしているような、そんな絵に見えるから。
そんなことをリアムに説明する訳にもいかず、俺は笑って誤魔化した。
「はは、何でだろうね」
「聞いてみよっか」
「えッ」
リアムが縛られた男に近づこうとしたので、すぐに間に入った。
「そんなことより、早く行こうよ」
「それもそうだね。オリヴァーも早く自分を治癒しなよ。見てて痛々しいよ」
「うん。忘れてた」
自分にも治癒魔法を施した後、男にノエルの絵については絶対に口外しないように脅……お願いしてからリアムの後を歩いた。
◇
それから少し進むと、工場のすぐ隣に位置したところに倉庫のような建物が二つ並んでいた。
男が見張りをしているくらいだ。絶対に怪しいものがあるに違いない。
「鍵がかかってるね。俺、窓から覗いてくるよ」
窓は高い位置にあるが、木に登れば容易に覗けそうだ。
木に登って中を覗くと、そこは廃棄場のようだった。金属を加工する上で不要になった物が綺麗に整頓されて置かれていた。特段変わった様子は見られない。
木から下りて中の様子を報告すると、リアムは俺の頭をクシャッと撫でてきた。少しくすぐったい。
「うーん、問題はここじゃないのかな」
「隣も覗いてくるね」
隣の建物も同様に木を登って覗くと、そこには特殊なマスクとメガネを付けて作業をしている人が数名いた。こちらも特段変わった様子はみられない。
下におりようとしたらキランと何かが光った。目を凝らすと、白銀の液体があるのが見えた。
下におりて中の様子を説明すれば、リアムに再び頭を撫でられた。
「恐らくだけど、金属の合金に水銀を使用してるのかもね」
「すいぎん? そして、どうでも良いんだけどさ、何でさっきから頭撫でてくるの?」
「ん? ああ、ごめん」
リアムは無意識だったようで、俺の頭に乗せていた手をゆっくりと引っ込めた。
「小さい頃、猫が木を登って僕の部屋に遊びに来てたんだよ。オリヴァーの木に登る姿がその猫に似ててさ」
猫……猿よりはマシか。
「話戻すけど、間違いなく流行り病の原因はそれだね。水銀は液体金属で、合金が容易に出来て光沢が出るから一昔前に流行ったんだよ」
「ダメなの?」
「中毒症状が多発して、今では使用が禁止されているんだ。神経障害の症状が出るのも一緒だし、間違いないと思うよ」
つまり、表面上は基準に則った金属加工を施し、裏では水銀を使用して合金。中毒症状が出たらお払い箱にして、新たな働き手を探して次から次へと中毒症状の患者を出していたということか。
「でもどうしてアンの母親だけ命を狙われたんだろ」
「今の時代、使われなくなったのもあって水銀の存在を知らない人が多いんだよ。オリヴァーも知らなかったでしょ?」
「うん」
「平民は勉学が行き届いてないから更に無知なんだよ。恐らくだけど、たまたま水銀って名前を聞いちゃったんじゃない? 何かは分からなくても、外でその名前を出されたら分かる人には分かるからね」
「なるほど」
話をしていると倉庫の扉が開いたので、咄嗟に開いた扉の陰に隠れた。
「こいつももうダメだな」
ドサッと何かが地面に落ちるような音がしたかと思えば、弱々しい男性の声がした。
「あの、まだ働けますから……働かないとお金が……」
「体調管理の出来ない奴はクビだ、クビ」
男性を一人残して、扉が閉まった。
閉まったと同時にノエルが怒りを露わにした。
「なんて扱いなんですの? 酷すぎますわ」
「あの、君たちは……?」
ノエルの顔が怒りから満面の笑みに変わった。
「こちら、勇者様ですわ。あなたをお助けしに来ましたの」
「勇者……様?」
男性から期待の眼差しで見られた。
恥ずかしい、恥ずかしすぎる。人前で勇者と名乗ったことは今の今まで一度もない。ランクEの自称勇者なんて知ったら一気に落胆するに違いない。ランクの事を伝えずに尻すぼみ気味に応えた。
「一応、勇者やってます」
「とりあえず木にでも縛っとけば良いんじゃない? 連れてく訳にもいかないし」
「そうだね」
暗殺者っぽい男を木にくくりつけると、男が弱々しく言った。
「後で外してくれよ」
「それはどうかな」
リアムが怪しげな笑みを見せ、男は恐怖の色を見せた。
時にリアムは意地悪になる。冗談なのか本気なのか分からないので余計に怖い。
ちなみに、男は腹部から肩にかけて大きな切り傷が出来たが、治癒魔法で綺麗さっぱり癒えている。
「それよりノエル、あんな危ないことしちゃダメじゃないか! 標的がリアムに移ったからどうにかなったけど、殺されるところだったんだよ」
「お兄様が助けて下さいましたわ」
兄としてノエルを叱るが、ノエルに反省の色は見られない。そんなノエルを見ながらリアムが聞いてきた。
「でも、どうして標的が途中で僕に変わったんだろう。あれは想定外だったな」
きっとノエルは俺とリアムの仲睦まじい絵を男に見せたのだろう。ノエルの絵は例え二人が立っているだけでも、その二人が恋をしているような、そんな絵に見えるから。
そんなことをリアムに説明する訳にもいかず、俺は笑って誤魔化した。
「はは、何でだろうね」
「聞いてみよっか」
「えッ」
リアムが縛られた男に近づこうとしたので、すぐに間に入った。
「そんなことより、早く行こうよ」
「それもそうだね。オリヴァーも早く自分を治癒しなよ。見てて痛々しいよ」
「うん。忘れてた」
自分にも治癒魔法を施した後、男にノエルの絵については絶対に口外しないように脅……お願いしてからリアムの後を歩いた。
◇
それから少し進むと、工場のすぐ隣に位置したところに倉庫のような建物が二つ並んでいた。
男が見張りをしているくらいだ。絶対に怪しいものがあるに違いない。
「鍵がかかってるね。俺、窓から覗いてくるよ」
窓は高い位置にあるが、木に登れば容易に覗けそうだ。
木に登って中を覗くと、そこは廃棄場のようだった。金属を加工する上で不要になった物が綺麗に整頓されて置かれていた。特段変わった様子は見られない。
木から下りて中の様子を報告すると、リアムは俺の頭をクシャッと撫でてきた。少しくすぐったい。
「うーん、問題はここじゃないのかな」
「隣も覗いてくるね」
隣の建物も同様に木を登って覗くと、そこには特殊なマスクとメガネを付けて作業をしている人が数名いた。こちらも特段変わった様子はみられない。
下におりようとしたらキランと何かが光った。目を凝らすと、白銀の液体があるのが見えた。
下におりて中の様子を説明すれば、リアムに再び頭を撫でられた。
「恐らくだけど、金属の合金に水銀を使用してるのかもね」
「すいぎん? そして、どうでも良いんだけどさ、何でさっきから頭撫でてくるの?」
「ん? ああ、ごめん」
リアムは無意識だったようで、俺の頭に乗せていた手をゆっくりと引っ込めた。
「小さい頃、猫が木を登って僕の部屋に遊びに来てたんだよ。オリヴァーの木に登る姿がその猫に似ててさ」
猫……猿よりはマシか。
「話戻すけど、間違いなく流行り病の原因はそれだね。水銀は液体金属で、合金が容易に出来て光沢が出るから一昔前に流行ったんだよ」
「ダメなの?」
「中毒症状が多発して、今では使用が禁止されているんだ。神経障害の症状が出るのも一緒だし、間違いないと思うよ」
つまり、表面上は基準に則った金属加工を施し、裏では水銀を使用して合金。中毒症状が出たらお払い箱にして、新たな働き手を探して次から次へと中毒症状の患者を出していたということか。
「でもどうしてアンの母親だけ命を狙われたんだろ」
「今の時代、使われなくなったのもあって水銀の存在を知らない人が多いんだよ。オリヴァーも知らなかったでしょ?」
「うん」
「平民は勉学が行き届いてないから更に無知なんだよ。恐らくだけど、たまたま水銀って名前を聞いちゃったんじゃない? 何かは分からなくても、外でその名前を出されたら分かる人には分かるからね」
「なるほど」
話をしていると倉庫の扉が開いたので、咄嗟に開いた扉の陰に隠れた。
「こいつももうダメだな」
ドサッと何かが地面に落ちるような音がしたかと思えば、弱々しい男性の声がした。
「あの、まだ働けますから……働かないとお金が……」
「体調管理の出来ない奴はクビだ、クビ」
男性を一人残して、扉が閉まった。
閉まったと同時にノエルが怒りを露わにした。
「なんて扱いなんですの? 酷すぎますわ」
「あの、君たちは……?」
ノエルの顔が怒りから満面の笑みに変わった。
「こちら、勇者様ですわ。あなたをお助けしに来ましたの」
「勇者……様?」
男性から期待の眼差しで見られた。
恥ずかしい、恥ずかしすぎる。人前で勇者と名乗ったことは今の今まで一度もない。ランクEの自称勇者なんて知ったら一気に落胆するに違いない。ランクの事を伝えずに尻すぼみ気味に応えた。
「一応、勇者やってます」
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