100 / 103
最終章 ハッピーエンド
恋愛相関図
しおりを挟む
政界が騒がしい。やはり、未知の世界である魔界との国交について賛否両論あり揉めているようだ。
しかし、アレン自ら魔界へ出向いたことで説得力が増し、尚且つアレンが国王陛下を脅……説得したことで前向きな声は少なからず増えている。
ちなみに、魔界の方はいつでもウェルカムだそうだ。国交が結ばれるのも時間の問題だ。
「でも、良いんですか? 国王陛下を見逃して。仮にも父親に裏切られていたんですよ」
「良いんだよ。あ、クライヴ、そこ間違ってるぞ。ここはこうやってだな……ほら、こうするんだ」
アレンはノートに書き込みながら間違いを丁寧に解説してくれた。
そう、今はアレンに補習をしてもらっている真っ最中。結局フィオナとアリスもアレンに教わったが、二人の補習はあっという間に終わってしまった。今はアレンにマンツーマンで教えてもらっている。
「アレン様は優しすぎますよ」
国王陛下が人間界の侵略に手を貸していたことは闇に葬られた。その事が俺はやはり許せない。アレンはそんな俺に平然と言った。
「まだ言ってるのか。だって、死ぬまでこき使えるんだぞ」
「は?」
「俺は表に出るのは苦手なんだ。裏で操る方が断然楽だ」
「さっきの優しいは撤回しますね……さぁ、勉強勉強」
そう言って俺は、参考書に現実逃避した。
◇◇◇◇
勉強が終わると、俺はステファンの元へ訪れた。
クララの正体を明かすために。
――ジャンが譫言のように『クララ』と言っていたというクリステルの発言により、ステファンのクララ熱が再発してしまった。
しかも、一人でジャンの元へ訪れて背格好や特徴まで聞いていた。同一人物だと判明したステファンは何故かジャンと共に血眼になってクララを探しているらしい。
俺がクララにならなければ絶対にバレはしないだろう。しかし、いつも冷静沈着な友人がこうも豹変して一人の女性を追い求めている姿は見ていて哀れに思えてくる。
そこで俺はこの機会に自分の未来の為、俺自身のハッピーエンドを迎える為に、この滅茶苦茶な恋愛相関図をシンプルな物へ描きかえることにした。ジャンは手紙でも送るとして、まずはステファンから――。
以前クララになってキッパリ振ろうとしたが失敗に終わった。なので今回は男のまま告白する予定だ。ちなみに、アレンには許可ももらった。
「クライヴ、前触れを寄越して来るなんて何かあったのか? 珍しい」
「伝えたいことがあって」
そう言ってステファンの部屋に通された俺は、部屋に入るなりステファンと向き合った。俺の方が背が低い為、ステファンを見上げながらしっかり目を見て言った。
「怒ると思うが聞いて欲しい。俺がクララだ」
「は?」
「だから、お前が探しているクララは俺だ」
二回言ってみたがステファンはポカンとしている。無理もない、俺自身ですらいつも疑う程に今の自分とクララでは顔が違いすぎる。信じてはいないようだが、俺は頭を下げて謝った。
「本当にごめん。ステファンを騙したかった訳じゃない。嘲笑っていたわけでもない。言い出せなくて……ごめん」
「クライヴ、頭を上げろ。そんな訳ないだろ」
顔を上げて見たステファンの顔は、まだ信じていないようだった。
「占いの館に行った時、本当はクララとしてお前を振ろうとしたんだ。俺だと知ったら悲しむと思って」
「……」
「あれがクララになる最後のはずだった。でも、ジャンの魔法陣について俺が情報盗んできたことあっただろ。あれ、クララになって行ったんだ。ジャンはクララを慕っているから」
ステファンは、怒ったような悲しいような何とも複雑な表情を浮かべている。そんなステファンに再度謝った。
「本当にごめんなさい。殴られるのも覚悟の上だ」
「クライヴ、それは……それは全て事実なのか?」
ステファンのその問いに、ゆっくり頷けばステファンの手が上がった。殴られるかと思って固く目を閉じた。次の瞬間、ふわっと抱きしめられた。
俺は驚きの余り声が出ずにいると、ステファンが言った。
「本当だ。この感じはクララだ……。良かった、無事で」
確かめるように抱きしめられた後、ステファンが俺を離した。
「殴らないのか?」
「殴るわけないだろう。正直、悔しいし、悲しいし、それに怒りも覚える。初めて心から結婚をしたいと思えた女性だったから」
「ごめん」
「だけど、媚薬を飲まされてそのまま消えたから心配してたんだ。手紙は来たが、それ以上の生存確認は出来なかったから」
「ごめん」
ステファンが何かを誤魔化すように俺の頭をクシャクシャとかき混ぜてから言った。
「僕の初恋を終わらせてくれてありがとう。男でも女でも関係ないと言ってやりたいが、公爵家の後継は僕しかいない。潔く諦めるよ。それに相手がフィオナとアレン殿下じゃそもそも勝ち目はない」
「ステファン……」
「その代わり、一番の親友だ。それは誰にも譲らない。たとえそれが悪魔アビスでもね」
「ありがとう」
ステファンがふと思い出したように言った。
「レナの占いは当たっていたな」
「そうかもな」
『隠し事を打ちあける時、二人は強い絆で結ばれる』
レナは占いでそう予言した。ついつい恋愛のことだと思い込んでいたが、友情を深める意味合いだったのかもしれない。
こうして恋愛相関図の一部の描きかえに成功した。
次はアレンだ――。
しかし、アレン自ら魔界へ出向いたことで説得力が増し、尚且つアレンが国王陛下を脅……説得したことで前向きな声は少なからず増えている。
ちなみに、魔界の方はいつでもウェルカムだそうだ。国交が結ばれるのも時間の問題だ。
「でも、良いんですか? 国王陛下を見逃して。仮にも父親に裏切られていたんですよ」
「良いんだよ。あ、クライヴ、そこ間違ってるぞ。ここはこうやってだな……ほら、こうするんだ」
アレンはノートに書き込みながら間違いを丁寧に解説してくれた。
そう、今はアレンに補習をしてもらっている真っ最中。結局フィオナとアリスもアレンに教わったが、二人の補習はあっという間に終わってしまった。今はアレンにマンツーマンで教えてもらっている。
「アレン様は優しすぎますよ」
国王陛下が人間界の侵略に手を貸していたことは闇に葬られた。その事が俺はやはり許せない。アレンはそんな俺に平然と言った。
「まだ言ってるのか。だって、死ぬまでこき使えるんだぞ」
「は?」
「俺は表に出るのは苦手なんだ。裏で操る方が断然楽だ」
「さっきの優しいは撤回しますね……さぁ、勉強勉強」
そう言って俺は、参考書に現実逃避した。
◇◇◇◇
勉強が終わると、俺はステファンの元へ訪れた。
クララの正体を明かすために。
――ジャンが譫言のように『クララ』と言っていたというクリステルの発言により、ステファンのクララ熱が再発してしまった。
しかも、一人でジャンの元へ訪れて背格好や特徴まで聞いていた。同一人物だと判明したステファンは何故かジャンと共に血眼になってクララを探しているらしい。
俺がクララにならなければ絶対にバレはしないだろう。しかし、いつも冷静沈着な友人がこうも豹変して一人の女性を追い求めている姿は見ていて哀れに思えてくる。
そこで俺はこの機会に自分の未来の為、俺自身のハッピーエンドを迎える為に、この滅茶苦茶な恋愛相関図をシンプルな物へ描きかえることにした。ジャンは手紙でも送るとして、まずはステファンから――。
以前クララになってキッパリ振ろうとしたが失敗に終わった。なので今回は男のまま告白する予定だ。ちなみに、アレンには許可ももらった。
「クライヴ、前触れを寄越して来るなんて何かあったのか? 珍しい」
「伝えたいことがあって」
そう言ってステファンの部屋に通された俺は、部屋に入るなりステファンと向き合った。俺の方が背が低い為、ステファンを見上げながらしっかり目を見て言った。
「怒ると思うが聞いて欲しい。俺がクララだ」
「は?」
「だから、お前が探しているクララは俺だ」
二回言ってみたがステファンはポカンとしている。無理もない、俺自身ですらいつも疑う程に今の自分とクララでは顔が違いすぎる。信じてはいないようだが、俺は頭を下げて謝った。
「本当にごめん。ステファンを騙したかった訳じゃない。嘲笑っていたわけでもない。言い出せなくて……ごめん」
「クライヴ、頭を上げろ。そんな訳ないだろ」
顔を上げて見たステファンの顔は、まだ信じていないようだった。
「占いの館に行った時、本当はクララとしてお前を振ろうとしたんだ。俺だと知ったら悲しむと思って」
「……」
「あれがクララになる最後のはずだった。でも、ジャンの魔法陣について俺が情報盗んできたことあっただろ。あれ、クララになって行ったんだ。ジャンはクララを慕っているから」
ステファンは、怒ったような悲しいような何とも複雑な表情を浮かべている。そんなステファンに再度謝った。
「本当にごめんなさい。殴られるのも覚悟の上だ」
「クライヴ、それは……それは全て事実なのか?」
ステファンのその問いに、ゆっくり頷けばステファンの手が上がった。殴られるかと思って固く目を閉じた。次の瞬間、ふわっと抱きしめられた。
俺は驚きの余り声が出ずにいると、ステファンが言った。
「本当だ。この感じはクララだ……。良かった、無事で」
確かめるように抱きしめられた後、ステファンが俺を離した。
「殴らないのか?」
「殴るわけないだろう。正直、悔しいし、悲しいし、それに怒りも覚える。初めて心から結婚をしたいと思えた女性だったから」
「ごめん」
「だけど、媚薬を飲まされてそのまま消えたから心配してたんだ。手紙は来たが、それ以上の生存確認は出来なかったから」
「ごめん」
ステファンが何かを誤魔化すように俺の頭をクシャクシャとかき混ぜてから言った。
「僕の初恋を終わらせてくれてありがとう。男でも女でも関係ないと言ってやりたいが、公爵家の後継は僕しかいない。潔く諦めるよ。それに相手がフィオナとアレン殿下じゃそもそも勝ち目はない」
「ステファン……」
「その代わり、一番の親友だ。それは誰にも譲らない。たとえそれが悪魔アビスでもね」
「ありがとう」
ステファンがふと思い出したように言った。
「レナの占いは当たっていたな」
「そうかもな」
『隠し事を打ちあける時、二人は強い絆で結ばれる』
レナは占いでそう予言した。ついつい恋愛のことだと思い込んでいたが、友情を深める意味合いだったのかもしれない。
こうして恋愛相関図の一部の描きかえに成功した。
次はアレンだ――。
11
お気に入りに追加
924
あなたにおすすめの小説
異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。
みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜
ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。
年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。
そんな彼女の癒しは3匹のペット達。
シベリアンハスキーのコロ。
カナリアのカナ。
キバラガメのキィ。
犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。
ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。
挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。
アイラもペット達も焼け死んでしまう。
それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。
何故かペット達がチートな力を持って…。
アイラは只の幼女になって…。
そんな彼女達のほのぼの異世界生活。
テイマー物 第3弾。
カクヨムでも公開中。
ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果
安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。
そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。
煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。
学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。
ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。
ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は……
基本的には、ほのぼのです。
設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
【完結】誰でも持っているはずの7つのスキルの内の1つ、運び屋スキルしか持っていなかったけど、最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
誰でも持っているはずの7つのスキルの内1つ【運び屋】スキルしか持っていなかったトリスが転移魔法スキルを覚え『運び屋トリス』となり、その後『青の錬金術師』として目覚め、最強の冒険者として語り継がれるようになる物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる