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第六章 人類滅亡回避
余興
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「アレン様を離せ!」
「離してやっても良いけど、俺と共に行くと約束できるか?」
アレンの首筋にはアビスの鋭い爪が突きつけられている。それを気にもしていないようにアレンは言った。
「俺は大丈夫だ。あっちの魔物の方を頼む」
「でも……」
グラウンドの方はフィオナやステファン達もいるはずだから何とかしてくれていると思う。だが、先程まで魔法大会で少なからず魔力は消費している。
生徒達を護りながら百体もの魔物を相手にするのであれば一人でも戦力は欲しいはず。しかし、アレンが……。
悩んでいる俺にアレンはニコッと笑ってもう一度言った。
「頼むぞ」
「はい! すぐ戻って来ますから!」
俺は踵を返し、グラウンドまで一気に飛んだ。
◇◇◇◇
グラウンドは戦場と化していた。
先生やフィオナ達ゲームの主要メンバーを筆頭に魔物を倒していっているが、負傷者も多かった。負傷者はアリスが片っ端から治癒して回っているようで、見た感じ人の死体はなさそうだ。
「お義兄様! いきなり魔物が出て来て、この有り様ですわ。侵略は来月のはずでは?」
「これは余興らしい。魔物は百体はいる。フィオナ、片っ端からやっつけるぞ。フィンも頼む」
「承知致しました」
フィンも召喚して目の前にいる魔物に立ち向かう。運が悪いことに、魔物は雑魚はいないようで中級~S級レベルの手強い敵ばかりだ。
アレンは無事だろうか。アビスがここに現れていないと言うことは、生きていると言う事なのだろう。しかし、あんな状況で置いて来たので心配でしょうがない。早く倒して加勢しなければ。
「くそ、上からの攻撃が鬱陶しいな」
上空を飛びまわっている魔物からの攻撃が厄介で、とどめをさせそうな瞬間に邪魔をされたりするのだ。その中にはドラゴンもいて、危うくこっちがやられそうになる。
「フィオナ、俺達は上のを先に倒してくる。フィン行くぞ」
「はい」
俺はフィンと共に上空の敵に挑んだ。ちなみに、フィンは俺が出来ることは難なくこなせるので空を飛ぶことなど造作もない。
上空に上がると下に向けて放っていた攻撃が、一斉に俺とフィンに向かってきた。フィンが大きなシールドを張ると、その攻撃は跳ね返って魔物に当たった。
確か飛行タイプは……羽を狙って地面に引きずり下ろすか、頭を狙うのが有効。
無数の氷を小さな細い針のようにし、複数の魔物の頭めがけて一気に放った。めった刺しになった魔物は次々と倒れていった。
その後もひたすら氷の弾丸やら刃をこれでもかと言うほどにフィンと共に魔法を放ち続けた。
手強い敵も何とか倒し、上空の魔物は残りドラゴン一体になった。下を見下ろすと、地上の方も残り数えられるくらいにまで減っていた。
戦闘を開始してから一時間くらいだろうか。それ程時間も経っていないのに、さすが主要メンバー達だと感心していると、フィンが俺を呼んだ。
「ご主人様」
「どうした? フィン」
「アレン様の魔力が随分と弱まっています」
「え……まさか……」
頭が真っ白になった。それ以上考えたくなかった。
固まった俺にフィンは淡々と言った。
「生存は確認できますが、危ないかと。ここは私に任せて行ってください」
「頼む」
その場をフィンに任せ、急いでアレンの元へ向かった。
◇◇◇◇
先程アレンがいた場所には誰もいなかった。
アレンは強い。相手が悪魔でも魔王であってもアレンは負けない。勝手にそう思い込んでいた。俺がいても足手纏いになっていたかもしれない。それでも、最悪の状況は避けられたかもしれない。
そんな後悔を胸にアレンを探した。そして見つけた。
「アレン様……」
「クライヴ……ごめん」
アレンはボロボロだった。地面に転がって、手足や頭からも色んな所から血が出ている。アビスはそんなアレンを見下ろしていた。
「中々強かったよ。俺とここまでやり合える人間は初めてだ。殺すには惜しい。でも君がいるとクライヴが付いてきてくれないみたいなんだ」
アビスはそう言って、右手をアレンに向けた。俺は咄嗟にアレンを庇うようにアレンとアビスの間に入って言った。
「アビス、もうやめて」
これ以上アレンを傷つけないで。殺さないで。
「俺が仲間にならないって言ったからだろ。だったら俺を殺せば良い。アレン様は関係ない」
そんな俺の言葉に、アビスではなくアレンが口を開いた。
「クライヴ……関係ないなんて言わないでくれ。俺はお前の為ならなんだってできる」
「アレン様……」
「ほらクライヴ退くんだ。こいつはあんたの為に死にたいって言ってるぞ」
それでも俺は、アレンから離れなかった。
さっきの魔物退治で俺の体力と魔力はほぼ尽きている。このまま考えもなしにアビスに挑んだら確実に負ける。そうなれば自ずとアレンも殺される。俺は死んでも仕方がないが、アレンは殺させない。
選択肢は一つしか無かった。
「アビス。俺はお前に付いていく」
「離してやっても良いけど、俺と共に行くと約束できるか?」
アレンの首筋にはアビスの鋭い爪が突きつけられている。それを気にもしていないようにアレンは言った。
「俺は大丈夫だ。あっちの魔物の方を頼む」
「でも……」
グラウンドの方はフィオナやステファン達もいるはずだから何とかしてくれていると思う。だが、先程まで魔法大会で少なからず魔力は消費している。
生徒達を護りながら百体もの魔物を相手にするのであれば一人でも戦力は欲しいはず。しかし、アレンが……。
悩んでいる俺にアレンはニコッと笑ってもう一度言った。
「頼むぞ」
「はい! すぐ戻って来ますから!」
俺は踵を返し、グラウンドまで一気に飛んだ。
◇◇◇◇
グラウンドは戦場と化していた。
先生やフィオナ達ゲームの主要メンバーを筆頭に魔物を倒していっているが、負傷者も多かった。負傷者はアリスが片っ端から治癒して回っているようで、見た感じ人の死体はなさそうだ。
「お義兄様! いきなり魔物が出て来て、この有り様ですわ。侵略は来月のはずでは?」
「これは余興らしい。魔物は百体はいる。フィオナ、片っ端からやっつけるぞ。フィンも頼む」
「承知致しました」
フィンも召喚して目の前にいる魔物に立ち向かう。運が悪いことに、魔物は雑魚はいないようで中級~S級レベルの手強い敵ばかりだ。
アレンは無事だろうか。アビスがここに現れていないと言うことは、生きていると言う事なのだろう。しかし、あんな状況で置いて来たので心配でしょうがない。早く倒して加勢しなければ。
「くそ、上からの攻撃が鬱陶しいな」
上空を飛びまわっている魔物からの攻撃が厄介で、とどめをさせそうな瞬間に邪魔をされたりするのだ。その中にはドラゴンもいて、危うくこっちがやられそうになる。
「フィオナ、俺達は上のを先に倒してくる。フィン行くぞ」
「はい」
俺はフィンと共に上空の敵に挑んだ。ちなみに、フィンは俺が出来ることは難なくこなせるので空を飛ぶことなど造作もない。
上空に上がると下に向けて放っていた攻撃が、一斉に俺とフィンに向かってきた。フィンが大きなシールドを張ると、その攻撃は跳ね返って魔物に当たった。
確か飛行タイプは……羽を狙って地面に引きずり下ろすか、頭を狙うのが有効。
無数の氷を小さな細い針のようにし、複数の魔物の頭めがけて一気に放った。めった刺しになった魔物は次々と倒れていった。
その後もひたすら氷の弾丸やら刃をこれでもかと言うほどにフィンと共に魔法を放ち続けた。
手強い敵も何とか倒し、上空の魔物は残りドラゴン一体になった。下を見下ろすと、地上の方も残り数えられるくらいにまで減っていた。
戦闘を開始してから一時間くらいだろうか。それ程時間も経っていないのに、さすが主要メンバー達だと感心していると、フィンが俺を呼んだ。
「ご主人様」
「どうした? フィン」
「アレン様の魔力が随分と弱まっています」
「え……まさか……」
頭が真っ白になった。それ以上考えたくなかった。
固まった俺にフィンは淡々と言った。
「生存は確認できますが、危ないかと。ここは私に任せて行ってください」
「頼む」
その場をフィンに任せ、急いでアレンの元へ向かった。
◇◇◇◇
先程アレンがいた場所には誰もいなかった。
アレンは強い。相手が悪魔でも魔王であってもアレンは負けない。勝手にそう思い込んでいた。俺がいても足手纏いになっていたかもしれない。それでも、最悪の状況は避けられたかもしれない。
そんな後悔を胸にアレンを探した。そして見つけた。
「アレン様……」
「クライヴ……ごめん」
アレンはボロボロだった。地面に転がって、手足や頭からも色んな所から血が出ている。アビスはそんなアレンを見下ろしていた。
「中々強かったよ。俺とここまでやり合える人間は初めてだ。殺すには惜しい。でも君がいるとクライヴが付いてきてくれないみたいなんだ」
アビスはそう言って、右手をアレンに向けた。俺は咄嗟にアレンを庇うようにアレンとアビスの間に入って言った。
「アビス、もうやめて」
これ以上アレンを傷つけないで。殺さないで。
「俺が仲間にならないって言ったからだろ。だったら俺を殺せば良い。アレン様は関係ない」
そんな俺の言葉に、アビスではなくアレンが口を開いた。
「クライヴ……関係ないなんて言わないでくれ。俺はお前の為ならなんだってできる」
「アレン様……」
「ほらクライヴ退くんだ。こいつはあんたの為に死にたいって言ってるぞ」
それでも俺は、アレンから離れなかった。
さっきの魔物退治で俺の体力と魔力はほぼ尽きている。このまま考えもなしにアビスに挑んだら確実に負ける。そうなれば自ずとアレンも殺される。俺は死んでも仕方がないが、アレンは殺させない。
選択肢は一つしか無かった。
「アビス。俺はお前に付いていく」
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