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第六章 人類滅亡回避
監禁生活
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監禁されて早一週間。
辛くて辛くて逃げ出したい衝動に駆られるのかと思いきや、案外快適だった。
「だから言っただろう。快適にしてやるって」
「お義兄様を苦しませるだなんて、そんなこと出来ませんわ」
アレンは初日こそ怒っていたが、怒りが落ち着けば少しだけ優しくなった。少しだけ。
フィオナは毎日学園での楽しい話を聞かせてくれるし、食事は美味しいし、お風呂も広くて温泉のようだ。修学旅行のようなお泊まりを連日しているかのような錯覚に陥る。
いきなり監禁された時は驚いたが、悪魔アビスの仲間になってしまった俺をアビスに連れて行かれないよう魔力感知が出来ないこの部屋で護る為に監禁したのだとか。
初めこそ抵抗してみたが、自業自得なのでそれからは文句も言わず監禁されている。
「でも、これいつまで続けたら良いんだ?」
アレンとフィオナが心配して監禁するのも分かる。だが、ずっとこのままは流石に嫌だと思ってそう口にすると、フィオナが笑顔で恐ろしい事を言った。
「いつまででしょう。わたくしはずっとこのままでも良いですわよ」
「俺が養ってやるから、ここでずっと生活すると良い。俺の管理下にいるのなら、術が完成してももう暫くこの世界を楽しませてやる」
アレンまで笑顔で何を言っているんだ。そして、術の完成とはなんだ。聞いても教えてくれないのでそこはスルーしておくが、監禁生活を死ぬまでなんて……。
「そんなの嫌だ。早く外に行きたい。俺は空を自由に羽ばたくんだ!」
俺が駄々っ子のようにそう言うと、アレンとフィオナが真剣な顔で言った。
「どこに羽ばたくって? まさかあのアビスとか言う奴のとこではあるまいな」
「そんなの嫌ですわ。アレン様、外出を考えていましたがとりやめましょう」
「そうだな」
「え……」
外出させてくれる予定だったのか。俺はせっかくのチャンスを棒に振ったということか。残念無念。俺が落胆していると、フィオナがアレンに言った。
「外出は中止ですが、先生がどうしても人数が足りないから魔法大会のチーム戦だけでも出られないかと相談を受けているのですが、どう致しましょう」
「行く……!」
「却下だな」
俺は即答したが、それも聞こえないくらいアレンに被せ気味に言われてしまった。しかし、俺は負けじとアレンにお願いした。
「ちょっとだけ、お願いします。戦ってる最中はグラウンドですから人目もしっかりあります。駄目ですか?」
「駄目だ」
「神に誓って?」
「駄目だ」
「どうしても?」
「しつこい」
俺は諦めて布団に潜った。そしてそれからは、誰とも話さず食事もとらず、ただただそこにいた。
◇◇◇◇
それから十日後。
「お義兄様、ひと口でも食べて下さいませ」
「俺が悪かった。だから、少しだけでも食べてくれ」
フィオナとアレンが何か言っているが良くわからない。頭がぼーとして何も考えられない。
「おい、大丈夫か? 僕だ、ステファンだ。分かるか?」
「皆心配している。しっかりするんだ」
ステファンとクリステルの声まで聞こえてきた。ここにはフィオナとアレンしか来ないはずなのに。
「やばいな。拘禁反応が出てる」
あ、エリクの声だ。
「拘禁反応とは何ですの?」
「拘束されている期間が長くなると、朦朧状態になって幻聴や幻覚まで見えたり……とにかく一旦出してやらないと精神状態が悪化して最悪死ぬぞ」
「うそ……でもここから出たらお義兄様は悪魔に連れて行かれますわ!」
「悪魔に連れて行かれる前に死んでも良いのか? 食事もとっていないんだろ? それにこんな精神状態で悪魔に会ったら、それこそクライヴは戻って来ない」
エリクとフィオナが言い争っている。珍しいな。
「仕方ない……今なら皆もいるからどうにかなるか」
アレンがそう言いながら、俺のところに来て抱っこしてくれた。
「俺が悪かった。少しだけ外に出るぞ」
ああ、やっと外に出られる……。
外は少し肌寒かった。太陽が眩しくて、風を感じられた。周りには建物等一切何もない草原だった。
「お義兄様、ごめんなさい」
返事をしようとしたら、上手く声にならなかったので代わりにフィオナの頭を撫でた。それからはルイが消化の良いスープを食べさせてくれたり、ステファン達が学園での出来事を話してくれた。
幸いアビスが現れることもなく、自由時間は終わった。短い時間だったが外に出た事ですっきりした。満足した俺にアレンが申し訳なさそうに言った。
「俺が縛りすぎた。ごめん。でも、分かって欲しい……」
「分かってますよ。全部俺の為ですよね」
「ごめん……」
いつもの強気なアレンと違って、随分と落ち込んでいるようだ。そんなアレンの頭をクシャクシャっと撫でて言った。
「元はといえば俺が悪いんです。図々しいお願いですが、俺がアビスに連れて行かれたら魔界まで助けに来てくれますか?」
「当たり前だ」
「約束ですよ」
監禁生活は解除されることは無かったが、皆が来てくれた時だけほんの少し外に出る事が許された。ついでに、一週間後に控えた魔法大会にもチーム戦が終わったら直ちに戻るという条件で参加出来ることになった。
この魔法大会に参加しなければ良かったと深く後悔することになるなんて、もちろんこの時の俺は知る由もない――。
辛くて辛くて逃げ出したい衝動に駆られるのかと思いきや、案外快適だった。
「だから言っただろう。快適にしてやるって」
「お義兄様を苦しませるだなんて、そんなこと出来ませんわ」
アレンは初日こそ怒っていたが、怒りが落ち着けば少しだけ優しくなった。少しだけ。
フィオナは毎日学園での楽しい話を聞かせてくれるし、食事は美味しいし、お風呂も広くて温泉のようだ。修学旅行のようなお泊まりを連日しているかのような錯覚に陥る。
いきなり監禁された時は驚いたが、悪魔アビスの仲間になってしまった俺をアビスに連れて行かれないよう魔力感知が出来ないこの部屋で護る為に監禁したのだとか。
初めこそ抵抗してみたが、自業自得なのでそれからは文句も言わず監禁されている。
「でも、これいつまで続けたら良いんだ?」
アレンとフィオナが心配して監禁するのも分かる。だが、ずっとこのままは流石に嫌だと思ってそう口にすると、フィオナが笑顔で恐ろしい事を言った。
「いつまででしょう。わたくしはずっとこのままでも良いですわよ」
「俺が養ってやるから、ここでずっと生活すると良い。俺の管理下にいるのなら、術が完成してももう暫くこの世界を楽しませてやる」
アレンまで笑顔で何を言っているんだ。そして、術の完成とはなんだ。聞いても教えてくれないのでそこはスルーしておくが、監禁生活を死ぬまでなんて……。
「そんなの嫌だ。早く外に行きたい。俺は空を自由に羽ばたくんだ!」
俺が駄々っ子のようにそう言うと、アレンとフィオナが真剣な顔で言った。
「どこに羽ばたくって? まさかあのアビスとか言う奴のとこではあるまいな」
「そんなの嫌ですわ。アレン様、外出を考えていましたがとりやめましょう」
「そうだな」
「え……」
外出させてくれる予定だったのか。俺はせっかくのチャンスを棒に振ったということか。残念無念。俺が落胆していると、フィオナがアレンに言った。
「外出は中止ですが、先生がどうしても人数が足りないから魔法大会のチーム戦だけでも出られないかと相談を受けているのですが、どう致しましょう」
「行く……!」
「却下だな」
俺は即答したが、それも聞こえないくらいアレンに被せ気味に言われてしまった。しかし、俺は負けじとアレンにお願いした。
「ちょっとだけ、お願いします。戦ってる最中はグラウンドですから人目もしっかりあります。駄目ですか?」
「駄目だ」
「神に誓って?」
「駄目だ」
「どうしても?」
「しつこい」
俺は諦めて布団に潜った。そしてそれからは、誰とも話さず食事もとらず、ただただそこにいた。
◇◇◇◇
それから十日後。
「お義兄様、ひと口でも食べて下さいませ」
「俺が悪かった。だから、少しだけでも食べてくれ」
フィオナとアレンが何か言っているが良くわからない。頭がぼーとして何も考えられない。
「おい、大丈夫か? 僕だ、ステファンだ。分かるか?」
「皆心配している。しっかりするんだ」
ステファンとクリステルの声まで聞こえてきた。ここにはフィオナとアレンしか来ないはずなのに。
「やばいな。拘禁反応が出てる」
あ、エリクの声だ。
「拘禁反応とは何ですの?」
「拘束されている期間が長くなると、朦朧状態になって幻聴や幻覚まで見えたり……とにかく一旦出してやらないと精神状態が悪化して最悪死ぬぞ」
「うそ……でもここから出たらお義兄様は悪魔に連れて行かれますわ!」
「悪魔に連れて行かれる前に死んでも良いのか? 食事もとっていないんだろ? それにこんな精神状態で悪魔に会ったら、それこそクライヴは戻って来ない」
エリクとフィオナが言い争っている。珍しいな。
「仕方ない……今なら皆もいるからどうにかなるか」
アレンがそう言いながら、俺のところに来て抱っこしてくれた。
「俺が悪かった。少しだけ外に出るぞ」
ああ、やっと外に出られる……。
外は少し肌寒かった。太陽が眩しくて、風を感じられた。周りには建物等一切何もない草原だった。
「お義兄様、ごめんなさい」
返事をしようとしたら、上手く声にならなかったので代わりにフィオナの頭を撫でた。それからはルイが消化の良いスープを食べさせてくれたり、ステファン達が学園での出来事を話してくれた。
幸いアビスが現れることもなく、自由時間は終わった。短い時間だったが外に出た事ですっきりした。満足した俺にアレンが申し訳なさそうに言った。
「俺が縛りすぎた。ごめん。でも、分かって欲しい……」
「分かってますよ。全部俺の為ですよね」
「ごめん……」
いつもの強気なアレンと違って、随分と落ち込んでいるようだ。そんなアレンの頭をクシャクシャっと撫でて言った。
「元はといえば俺が悪いんです。図々しいお願いですが、俺がアビスに連れて行かれたら魔界まで助けに来てくれますか?」
「当たり前だ」
「約束ですよ」
監禁生活は解除されることは無かったが、皆が来てくれた時だけほんの少し外に出る事が許された。ついでに、一週間後に控えた魔法大会にもチーム戦が終わったら直ちに戻るという条件で参加出来ることになった。
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