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第一章 学園入学前
お茶会①
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とうとう悪夢のお茶会の日がやって来た。
馬車に揺られながら、フィオナは初めてのお茶会ということで緊張しているようだ。
俺? 俺は父に連れられて、何度か社交の場に顔を出したこともあるから緊張なんてしないさ。
ただ、俺には使命がある! 妹をクリステルの婚約者にしないという使命が!
クリステルの婚約者になればゲームのシナリオ通りにコトが運ぶ可能性が高い。
婚約者に選ばれさえしなければ、例えヒロインがクリステルルートに入ったとしても、フィオナが悪役令嬢として邪魔をする事はまずないだろう。
ちなみにクリステルは正妃との間に出来た子だが、第一王子アレンは陛下と側妃との間に出来た子だ。この国では正妃の子の方が王位継承権が高いため、アレンはほぼ表舞台に出てこないらしい。
今回のお茶会も“第二王子の婚約者探し”という噂なのでアレンはノータッチで良いだろう。
念の為フィオナには連日口を酸っぱくする程、言い聞かせてきた。
『王家へのご挨拶の際は、形式上の挨拶のみ。他の発言は禁止』
さすがに何度も言い過ぎたか、怪訝な顔をされた。嫌われてはいない……と思うが、背に腹はかえられない。
それにしても、今日も今日とてフィオナが可愛すぎる。
すみれ色のドレスに髪はハーフアップにまとめている。薄っすら化粧もしており、いつもより大人っぽい雰囲気を醸し出している。眼福……。
「お義兄様? 何をしているのですか?」
しまった……ついつい拝んでしまっていた。
「いや、なんでもないです」
「変なお義兄様」
首をこてんと傾けて覗き込んでくる。どんな仕草をしても天使だ。尊い……こんなに可愛くて大丈夫なのか? 守り切れるのか? いや、守ってみせる!
そんなこんなで王城に着いてしまった。
「わぁ、大きいですわね!」
ベルサイユ宮殿のような立派な建物に庭園もバラをはじめ色々な花で彩られ、とても綺麗だ。
会場までフィオナをエスコートしていると周囲の視線が痛い。
それもそうだろう。こんな超絶可愛い令嬢を平凡のモブ男がエスコートしているのだ。俺が他の奴らの立場なら絶対に見るね。見ない方がおかしい。
「お義兄様、どれも美味しそうですわね」
「好きなもの取ってやるから言えよ」
本日は立食パーティー形式のお茶会になっており、好きに動けるようになっている。
だからこそ目が離せない。ほら、早速虫が来た。
「初めまして、ステファン・レイヴェルスと申します。君はここにあるどんな花よりも美しく輝いている。良かったらこの僕とお話し致しませんか? キュートなレディ」
紳士の礼をとりながら寒気のする挨拶をするこいつはレイヴェルス公爵家の子息。
深い緑色の髪に茶色の瞳、顔は整っており泣きぼくろが印象的。数々の女性を泣かせてきたに違いない。
父についてパーティーに参加した際に何度か見かけて挨拶を交わしたことがある。なんともキザな男で仲良くなれそうにはない。
悪影響にしかならなさそうなので、フィオナとは絶対に関わらせたくないと思っていた。
「ごきげ……」
「これはこれはお久しぶりでございます。レイヴェルス公爵子息、義妹はこういった社交の場は不慣れなもので、私が義兄としてお相手致しますね」
フィオナが挨拶しかけたので、すぐさまそれを遮り挨拶をする。
「なんと! クライヴ殿の妹君でしたか。これは失礼致しました。では改めて妹君、僕の婚約者になっていただけませんか? クライヴ殿が兄君なら、尚良い関係になれることでしょう」
「なっ……!?」
アホか! フィオナ、お前も頬をピンク色に染めるんじゃない!
「初対面の令嬢にいきなり婚約を申し込む不埒な男性は信用に欠けますのでお引き取りを」
「では、今度我が家に招待致しますので二人の愛を深めましょう」
深めんでええわ! 帰れ!
心の声が聞こえたのか、ステファンは「それではまた」と、爽やかにその場を去っていった。
「お義兄様どうしましょう……わたくし求愛されたの初めてですわ……」
恥じらうフィオナも超可愛い! じゃなくて——。
「フィオナ騙されるな。あいつは誰にでも言ってるから。あいつと結婚したら苦労するぞ」
「そうなんですの?」
クリステルも駄目だがステファンはもっと駄目だ。あんな女たらしにフィオナは渡せん。
て、あれ? ステファンってまさか、あの女たらしのステファン? 攻略対象の一人。やけに顔が良いわけだ。
まさか既に会っていたとは。クリステル以外はあまりフィオナと関わりがないのかと思っていたから油断していた。
仮にクリステルの代わりにあいつが婚約者になったとして、ヒロインがステファンルートに入ると嫉妬に狂ったフィオナが悪役令嬢に——断罪される可能性大!!
「フィオナ、こういう場面はこれから何十、何百回とあるだろう。他にも世の中危険が腐るほどある。でも、俺が一生お前を守ってみせるから心配するな!」
「お義兄様……はい!」
この時俺は微塵も気付いていなかった。俺が安易に発した言葉が、フィオナの人生を大きく狂わせることになってしまうとは——。
馬車に揺られながら、フィオナは初めてのお茶会ということで緊張しているようだ。
俺? 俺は父に連れられて、何度か社交の場に顔を出したこともあるから緊張なんてしないさ。
ただ、俺には使命がある! 妹をクリステルの婚約者にしないという使命が!
クリステルの婚約者になればゲームのシナリオ通りにコトが運ぶ可能性が高い。
婚約者に選ばれさえしなければ、例えヒロインがクリステルルートに入ったとしても、フィオナが悪役令嬢として邪魔をする事はまずないだろう。
ちなみにクリステルは正妃との間に出来た子だが、第一王子アレンは陛下と側妃との間に出来た子だ。この国では正妃の子の方が王位継承権が高いため、アレンはほぼ表舞台に出てこないらしい。
今回のお茶会も“第二王子の婚約者探し”という噂なのでアレンはノータッチで良いだろう。
念の為フィオナには連日口を酸っぱくする程、言い聞かせてきた。
『王家へのご挨拶の際は、形式上の挨拶のみ。他の発言は禁止』
さすがに何度も言い過ぎたか、怪訝な顔をされた。嫌われてはいない……と思うが、背に腹はかえられない。
それにしても、今日も今日とてフィオナが可愛すぎる。
すみれ色のドレスに髪はハーフアップにまとめている。薄っすら化粧もしており、いつもより大人っぽい雰囲気を醸し出している。眼福……。
「お義兄様? 何をしているのですか?」
しまった……ついつい拝んでしまっていた。
「いや、なんでもないです」
「変なお義兄様」
首をこてんと傾けて覗き込んでくる。どんな仕草をしても天使だ。尊い……こんなに可愛くて大丈夫なのか? 守り切れるのか? いや、守ってみせる!
そんなこんなで王城に着いてしまった。
「わぁ、大きいですわね!」
ベルサイユ宮殿のような立派な建物に庭園もバラをはじめ色々な花で彩られ、とても綺麗だ。
会場までフィオナをエスコートしていると周囲の視線が痛い。
それもそうだろう。こんな超絶可愛い令嬢を平凡のモブ男がエスコートしているのだ。俺が他の奴らの立場なら絶対に見るね。見ない方がおかしい。
「お義兄様、どれも美味しそうですわね」
「好きなもの取ってやるから言えよ」
本日は立食パーティー形式のお茶会になっており、好きに動けるようになっている。
だからこそ目が離せない。ほら、早速虫が来た。
「初めまして、ステファン・レイヴェルスと申します。君はここにあるどんな花よりも美しく輝いている。良かったらこの僕とお話し致しませんか? キュートなレディ」
紳士の礼をとりながら寒気のする挨拶をするこいつはレイヴェルス公爵家の子息。
深い緑色の髪に茶色の瞳、顔は整っており泣きぼくろが印象的。数々の女性を泣かせてきたに違いない。
父についてパーティーに参加した際に何度か見かけて挨拶を交わしたことがある。なんともキザな男で仲良くなれそうにはない。
悪影響にしかならなさそうなので、フィオナとは絶対に関わらせたくないと思っていた。
「ごきげ……」
「これはこれはお久しぶりでございます。レイヴェルス公爵子息、義妹はこういった社交の場は不慣れなもので、私が義兄としてお相手致しますね」
フィオナが挨拶しかけたので、すぐさまそれを遮り挨拶をする。
「なんと! クライヴ殿の妹君でしたか。これは失礼致しました。では改めて妹君、僕の婚約者になっていただけませんか? クライヴ殿が兄君なら、尚良い関係になれることでしょう」
「なっ……!?」
アホか! フィオナ、お前も頬をピンク色に染めるんじゃない!
「初対面の令嬢にいきなり婚約を申し込む不埒な男性は信用に欠けますのでお引き取りを」
「では、今度我が家に招待致しますので二人の愛を深めましょう」
深めんでええわ! 帰れ!
心の声が聞こえたのか、ステファンは「それではまた」と、爽やかにその場を去っていった。
「お義兄様どうしましょう……わたくし求愛されたの初めてですわ……」
恥じらうフィオナも超可愛い! じゃなくて——。
「フィオナ騙されるな。あいつは誰にでも言ってるから。あいつと結婚したら苦労するぞ」
「そうなんですの?」
クリステルも駄目だがステファンはもっと駄目だ。あんな女たらしにフィオナは渡せん。
て、あれ? ステファンってまさか、あの女たらしのステファン? 攻略対象の一人。やけに顔が良いわけだ。
まさか既に会っていたとは。クリステル以外はあまりフィオナと関わりがないのかと思っていたから油断していた。
仮にクリステルの代わりにあいつが婚約者になったとして、ヒロインがステファンルートに入ると嫉妬に狂ったフィオナが悪役令嬢に——断罪される可能性大!!
「フィオナ、こういう場面はこれから何十、何百回とあるだろう。他にも世の中危険が腐るほどある。でも、俺が一生お前を守ってみせるから心配するな!」
「お義兄様……はい!」
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