上 下
3 / 25

2話 盗み聞き

しおりを挟む
「また、来たのかい?まぁ、商品買ってくれるわけだし、いいんだけどね。ほんと武器好きだね?」
「ああ。俺は珍しい武器をコレクションしてるからな。」
「ふーん。……今日は他のお客が来るから大人しくしてなよ。」
「客?俺以外に居たのか!?」
「ん?なんでそこで驚くんだい?お店なんだから。」
「見たことねぇよ。」

 そう、実際フェルトラはお店に出入りしているお客を毎日来てるのに見たことがなかったのだ。

「そりゃ、入店は1人づつで、誰かがいると見えなくなるんだよ。だから、見たことなくて当然だよ。」
「ん?じゃあ俺がいるから見えねぇんじゃね?」
「君が毎日来るから設定いじったんだよ。しかも長居だし。」
「ほぅ。すげーなこの店。」
「これを聞いて帰るという選択はしないんだね…。」

 店を褒めてくれるのは嬉しいが長居を辞める気はないらしいフェルトラにレインは呆れ、苦笑した。

 カラン、カラン。

「いらっしゃい。レインの店へようこそ!」
「あ、え、王太子殿下!?」
「ん?…あ、フェルトラって王太子なのかい!?」
「ん?…あ。知ってると思って言ってなかったな。すまん、すまん。」
「え、じゃあ、税の回収と商売無許可と商売法違反を取り締まりに来たのかい!?」
「ちげー!…つーか想定外に違反多くね!?」
「ふむ。違うならいいかな。内緒だよ?言ったらお仕置きするからね。」
「いや、どうやって言ったのが分かるっつーんだよ。興味ねぇーから言う気もないけども!」
「感。そっちの君も言っちゃ駄目だからね?」
「は、はい……。」
「じゃあ…こっちで話そうか。フェルトラ、そこら辺の武器試し斬りしてきていいよー。」
「よっしゃーーー!」

 試し斬りの許可がでてフェルトラはご機嫌で商品の武器を持って外に出たのだった。

「元気だねぇ…。」

 そのいきなりのテンションについて行けず思わずポツリとレインは呟いた。

「あ、あの…。」
「どんな商品にするかい?」
「い、依頼も…受けてくれると聞いたのですが…。」
「内容によるね。」

 カラン、カラン。

 どうやら、フェルトラが戻ってきたらしいが気にすることもないかと思いレインは商談を続けた。

「えーと、ですね、子供が欲しくて…ただ僕の妻は同性なので…出来ず…子育てはしたいので…も、勿論血の繋がりはなくていいんです!」
「ふむ。同性愛で結ばれた仲、ね。それだったら1度子供達と顔合わせするかい?君たち夫婦でも大丈夫って子集めておくからどうだい?」
「う、売ってくださるんですか!?」
「いいよ。」

 ガタン。
 
 扉の付近で音が聞こえたのでフェルトラが気になって我慢できず耳を澄まして会話を聞いていたのだろう。

「鳥の日に2人でおいで。場所は…そうだね、王立図書館前3番広場で。」

「はい。よろしくお願いします。」

「当日は買うかもしれないなら同価値交換の方をおすすめするよー。」

「はい。」

 レインは部屋をお客と出てそのまま入り口まで見送った。

「盗み聞きは良くないね。フェルトラ。」
「気になっちまって…。すまん。……人身売買とか救いようねぇな…………。」
「褒めても何もでなーいぞ☆」
「褒めてねぇぇぇぇ。」

 レインの性格は一体どうなってんだろとフェルトラは思ってしまったがそれを言うとまた、照れる気がするので黙っておくことにフェルトラはしたようだ。

「鳥の日、ねぇ……。」

 フェルトラはこの日疲れたように帰って行ったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

処理中です...