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一章
2.電柱の陰から見られてたりするよりも質が悪いよな
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──ゾクッ──
背筋に悪寒が走った。
何気ない毎日の通学路。代わり映えの無い風景。そして、いつもの悪寒。
そう、いつもの悪寒だ。またやりやがった。いつもやるなと言ってるのに毎回やりやがる。
さぁ、突然だが問題だ。この中に俺以外の能力者がもう一人居る。さて、どこにいるだろうか。
······はい、時間切れ。登場してもらおうか。
俺は立ち止まって目を閉じ、時が止まった世界を五秒程イメージする。そして目を開けると······そう、時が止まる。
「おぉ······何度見ても慣れないな。この光景は」
ついつい口に出して言ってしまったが、ホントにこの何とも言えない感じは慣れない。このまま登校すれば遅刻はしないかもな。
いや、今は別の話だったな。
俺は一歩だけ横に移動して、後ろを向いて能力を解除する。よく見てろよ?
世界に時が戻った瞬間、
「はうぅっ!」
先程まで俺のいた場所の影から、バチッと少女が弾かれた様に飛び出してきた。
「今日で何度目だ。俺の影に潜るのは」
そう、この少女が、影に潜る能力を持っている、俺の幼馴染み、日野歩香だ。潜る影が無くなると、こうして弾かれて飛び出してくる。
「だって一緒に登校したいでしょ? それに祐希に運んでもらってると思ったらもう······! そう思わない······!?」
うっすらと赤く染まった頬に手を当てて身を捩る歩香。
いや、申し訳ないけど、ハッキリ言って怖い。可愛いとは思うんだけど、プライベートが筒抜けになってそうでホント怖い。
「思わない。さすがに朝くらいはゆっくり登校させてくれ」
「えぇー············じゃあ、朝じゃなければ良いのね!?」
「良くはない」
「そんなぁー」
歩香は残念そうな顔をしたが、こうでも言わないと本当に俺のプライベートが無くなってしまう。影に潜る能力なわけだから、夜なんかどこに潜んでるか解ったものではない。
··········ん? 夜?
「なぁ、一応聞くが、昨日の夜は何をしていた?」
歩香は一瞬キョトンとしてから、顔をパァッと輝かせた。
「もちろん祐希観察だよ! お風呂に入ってた時間とか、トイレに行った回数とか!」
「俺のプライベートを返せぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「あ、さすがにお風呂の中には影が少なかったから入れなかったよ?」
「そ、そうか、それなら良かった。いや、良くはないが良かった」
幼馴染みとはいえさすがに裸は見ないでほしい。そりゃ小さい頃は一緒に風呂入ったりしたけどさ! あくまで小さい頃だしさ!
ところで、
「不法浸入、してるんだな······」
「何を人聞きの悪い! 私はあくまでずーっと一緒に居たかっただけだよ?」
うん、その台詞だけ取り出したら凄く可愛いんだけど、今まで話してたから狂気が感じられるな。
「もういい。ほら、とりあえず立て。通行の邪魔だ」
俺は手を差し出して、歩香に握らせると引っ張って立ち上がらせる。
「一緒に行くのは良いが、影には潜るな。気味が悪い」
「はぁーい」
気の良い返事をしているが、どうせ明日も潜るのだろう。いい加減止めてほしい。
とにもかくにも、俺達は学校へ向かって再度歩き出した。
背筋に悪寒が走った。
何気ない毎日の通学路。代わり映えの無い風景。そして、いつもの悪寒。
そう、いつもの悪寒だ。またやりやがった。いつもやるなと言ってるのに毎回やりやがる。
さぁ、突然だが問題だ。この中に俺以外の能力者がもう一人居る。さて、どこにいるだろうか。
······はい、時間切れ。登場してもらおうか。
俺は立ち止まって目を閉じ、時が止まった世界を五秒程イメージする。そして目を開けると······そう、時が止まる。
「おぉ······何度見ても慣れないな。この光景は」
ついつい口に出して言ってしまったが、ホントにこの何とも言えない感じは慣れない。このまま登校すれば遅刻はしないかもな。
いや、今は別の話だったな。
俺は一歩だけ横に移動して、後ろを向いて能力を解除する。よく見てろよ?
世界に時が戻った瞬間、
「はうぅっ!」
先程まで俺のいた場所の影から、バチッと少女が弾かれた様に飛び出してきた。
「今日で何度目だ。俺の影に潜るのは」
そう、この少女が、影に潜る能力を持っている、俺の幼馴染み、日野歩香だ。潜る影が無くなると、こうして弾かれて飛び出してくる。
「だって一緒に登校したいでしょ? それに祐希に運んでもらってると思ったらもう······! そう思わない······!?」
うっすらと赤く染まった頬に手を当てて身を捩る歩香。
いや、申し訳ないけど、ハッキリ言って怖い。可愛いとは思うんだけど、プライベートが筒抜けになってそうでホント怖い。
「思わない。さすがに朝くらいはゆっくり登校させてくれ」
「えぇー············じゃあ、朝じゃなければ良いのね!?」
「良くはない」
「そんなぁー」
歩香は残念そうな顔をしたが、こうでも言わないと本当に俺のプライベートが無くなってしまう。影に潜る能力なわけだから、夜なんかどこに潜んでるか解ったものではない。
··········ん? 夜?
「なぁ、一応聞くが、昨日の夜は何をしていた?」
歩香は一瞬キョトンとしてから、顔をパァッと輝かせた。
「もちろん祐希観察だよ! お風呂に入ってた時間とか、トイレに行った回数とか!」
「俺のプライベートを返せぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「あ、さすがにお風呂の中には影が少なかったから入れなかったよ?」
「そ、そうか、それなら良かった。いや、良くはないが良かった」
幼馴染みとはいえさすがに裸は見ないでほしい。そりゃ小さい頃は一緒に風呂入ったりしたけどさ! あくまで小さい頃だしさ!
ところで、
「不法浸入、してるんだな······」
「何を人聞きの悪い! 私はあくまでずーっと一緒に居たかっただけだよ?」
うん、その台詞だけ取り出したら凄く可愛いんだけど、今まで話してたから狂気が感じられるな。
「もういい。ほら、とりあえず立て。通行の邪魔だ」
俺は手を差し出して、歩香に握らせると引っ張って立ち上がらせる。
「一緒に行くのは良いが、影には潜るな。気味が悪い」
「はぁーい」
気の良い返事をしているが、どうせ明日も潜るのだろう。いい加減止めてほしい。
とにもかくにも、俺達は学校へ向かって再度歩き出した。
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