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8 それはアルコールのせい

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「ふぅあっ……」

 唇が離れていき、どちらともなく相手の服に手をかけた。
 熱に浮かされたように、颯のシャツのボタンを外していく間も、イタズラに唇を喰まれてなかなかその手が進まない。
 くすりっ、と唇の上で笑った彼も外すのを手伝ってくれて、ようやく開いたシャツの中から出てきた肌に手を這わせる。
 
「利央さんっ、焦りすぎ」

 そう微笑みを込めながら颯は言ったが、当の本人の肌は期待と欲求に熱くて、七年前より発達した筋肉は利央をドキリとさせた。
 熱さと筋肉を楽しみながら、胸から腹筋へと撫で下ろすと、腹部に力が入ったことによって筋肉が余計に強調され、その力強さに利央の腹部の奥がきゅっとしまった。
 これはまずい肉体だぞと思う間に、颯の手は利央のTシャツの裾を掴んで持ち上げた。
 あまりにも自然で流れるような動作で、されるがままに腕を上げて脱がされれば、そこではっとした。
 こんな展開は頭になかった彼女は、セックスには不向きなブラをしていた。
 スポーツブラではないのだが、ホックのないタイプのブラを着けている。
 ムードも、脱がせる楽しみも、脱がしやすさもない仕様に、ほんの少しだけ冷静な気持ちが顔を覗かせた。

「どうしたんですか?」

「あ、いや……ちょっと、日を改めてみるっていうのは」

 こんな出来上がった雰囲気の時に話すことじゃないと分かっていながら躊躇いがちに口にすれば、腰を抱き寄せられ悩みの種となったブラ越しに胸を掴まれた。
 
「どれだけ……夢に見てたと思います?」

 苦しげに息を吐いた颯は、ゆっくりと胸を揉みしだきながら、ブラから出ている上部の膨らみに口づける。

「あの頃から、あなたにこうすることを思い描いては、自分を慰めていたと言ったら幻滅しますか?」

 熱い息が肌を撫で、たいしてある訳でもない胸の谷間を舌が舐める姿に、利央の情欲にも火が付き始める。
 年下が年上に淡い憧れを抱くことは、早熟だろうが健全なことだろう。
 逆に、年上が年下に当時そんな思いを抱くのは褒められたことではない。
 あの頃は、それが恐ろしかった。
 成人が未成年に手を出すなんて、犯罪行為だとしか思っていなかったが、今では颯も二十四歳。
 そんな年の差なんて世の中にいくらでもいる。それこそ、五歳くらいの差なんて大した年齢差ではない。
 これまで、利央を雁字搦めに縛っていた鎖は、その考えに同意するように音を立てて解けていった。

「もう黙って」

 利央の様子に気がついて手を離した隙きに、自分でブラを脱ぎ捨てて颯の頭の後ろに腕を回して引き寄せ、自分からキスをした。
 ぎゅっと引き寄せたことによって裸の胸同士が合わさり、胸の頂きが硬い胸板に押しつぶされて刺激的な反応が生まれる。
 腰を掴んでいた彼の手にも力が入り、ほっと息を吐いた唇に利央は唇を合わせて開いた唇に舌を忍び込ませると、それが自然なことのようにお互いの舌を絡ませ合う。
 何度も何度も角度を変えて繰り返され中で、自然と腰に回った腕に支えられながら、体は床へと倒された。
 床に背中がつくと同時に離された唇からは、甘い吐息が漏れる。
 待ちきれず利央が自分のズボンのボタンを外して、ファスナーを下ろし終えれば、性急な仕草で颯がズボンを引っ張り脱がせた。
 見上げる形になった視線を向ければ、濡れた唇をゆっくりと舐める仕草に目は釘付けになった。
 
「背中……痛くないですか」

「んっ……へいき」

 床に敷かれた絨毯は厚みがあって毛足も長くて、床の硬さも冷たさも感じない。
 寧ろ気持ちがいいくらいで、少し背を反らして感触を愉しめば、息を呑む音が聞こえた。
 視線を戻せば、颯の視線は興奮と期待で立ち上がった利央の胸の頂きに釘付けだった。
 その熱量に後押しされ、足を伸ばして彼の腰を撫でる。
 はっとした様子で体を前に倒し、優しい手付きで胸の柔らかさを確かめながら、待ちわびて固くなった胸の頂きを口に含んだ。
 固く敏感な部分を舐める舌の感触に、今までにない疼きが腹部に生まれる。
 舐められ、吸われ、舌で転がされて思わず足の間に入っている颯の腰を膝で挟めば、ぐっと腰が押し付けられて、硬い高ぶりがショーツ越しに感じられた。
 堪らず擦り付けるように腰が動いてしまい、ちゅっと唇が胸元から離れていくとすっかり唾液で濡れたその場所が空気に触れてひんやりとする。
 持て余している快感に不満を訴えれば、ショーツの中に手が忍び込んで、蜜を零す割れ目を指先が滑った。
 何度も撫でるように往復する度に、くちゅっと濡れた音が増していく。
 まるでその感触を喜び、楽しむかのように何度も撫でられる内に、利央は物欲しさに自ら腰を揺らした。

「すごい……濡れて……指なんて簡単に飲み込まれてく」

「やぁっ……んっ」

 なんの抵抗もなく指を飲み込み、もっと太いものが欲しいという物足りなさに余計に中から蜜が溢れる。
 
「指じゃ物足りない?」

 乳首を吸い、揉まれながら指を出し入れされ、掻き混ぜられても満たされず、感覚ばかりが敏感に強くなっていく。
 少し体を起こした隙きに、手を伸ばして颯の高ぶりをジーンズ越しに撫でれば、彼ははっと息を詰めた。
 がくっと垂れた頭が、利央の肩の窪みに押し付けられ、唇が肌に強く吸い付いた。
 突然のことに体を揺らせば、体を起こした颯にショーツが剥ぎ取られ唖然とした。
 その間に膝裏に手を回され、自分の肩に担ぐ形にしてシーツを濡らすほどに蜜を零すその場所に、端正な顔を埋めめる。

「ちょっ! ああっ!!」

 止める間もなく、舌で蜜を絡め取るように舐め上げられ、腰が震えてくる。
 あまりの出来事に顔を離させようと手を伸ばそうとするが、そのタイミングで舐められて足が戦慄く。
 これまで、どんなに付き合っていても、その行為を許したことはない。
 それどころか、されたいとも思ったことがなかったのに──。

「ひぃっあっ……ん」

 ぴちゃぴちゃと舐め取る音が、部屋に流れる音楽よりも利央の耳に届く。
 あまりの心地よさに足から自然と力が抜ければ、それを待っていたかのように割れ目を舐めていた動きから、分け入ろうとする動きへと変わった。
 舌が中に入ってくると、指とは違う熱く分厚い感触に肌が粟立つ。
 
「ああっ、ああっ」

 何度も中を擦られ、高まってくる快感に腰が意思に反して揺れ始めれば、それを狙ったように指先で膨れ上がった繊細な粒を擦られ、感じたことのない刺激が体を突き抜けた。
 足の指先が突っ張り、激流に飲み込まれるのに踏みとどまろうと絨毯を握りしめて背を反らした。

「はぁっ……な、なに、今の……」

 荒い呼吸の合間に利央が囁やけば、足の間から顔を上げて口元を親指で拭った颯は、驚いた顔をしていた。

「えっ……イッたことないの?」
 
「ふぁっ……こ、これが?」

 いまだに落ち着かない鼓動と息に、胸を上下させている利央に覆いかぶさった颯は、どこか得意そうな顔で見下ろしてきた。
 
「利央さん……バージンではない……ですよね?」

「バージンではないし、最近まで恋人も……んぁっ」

 素直に告白しようとすると、いつの間にズボンも下着も脱いだのか、利央のひくつく場所にはすっかり滾った硬いものが押し付けられていた。当たる感触から、きちんとコンドームをつけているのは分かる。
 当然のエチケットなのだが、そんな余裕があることに驚きながら、熱い息を吐く。
 颯はゆっくりと蜜を絡ませるように、もしくは弄ぶかのようにゆるゆると入り口を高ぶりを擦りつけながらくすぐる。
 その熱を持った丸い感触が、中に入ってきてくれないという焦れったさに、利央の入り口が物欲しそうに蜜を零しながら吸い付いて中へと誘う。
 日頃のたいして楽しくもないと思っていた行為を思い出したが、これまでとは違い利央の蜜壺は、太くて硬いその熱を歓喜しながら難なく受け入れていく。

「他の男の話なんて聞きたくありません」

 ごつっという腹部の奥に感じる感覚と、結合部に肌の当たる感触に驚いた。
 なんの抵抗もなく、こんなにあっさりと受け入れたことは今までなかった。
 いつもは滑りも良くなく、痛みが強くて抜いてくれと懇願したくなる経験しかない。
 それなのに、明らかに颯のモノはこれまでの彼氏よりも凶悪に見えるし、実際に今入っている腹部の圧迫感すらこれまでとは違うのに、驚くほど引きつる痛みがない。
 
「あぁ、中が熱くてぎゅうぎゅうに締め付けてきて気持ちが良いですよ」

 感慨深げに腹部を撫でられ軽く押されれば、自分でも驚くほど彼を逃すまいと自分の中がひくつくのが分かる。
 そんな感覚は初めてで、初体験を済ませた時よりも何故か恥ずかしくなって、顔に熱が集まっていく。

「やぁっ、さっさと終わらせて」

 羞恥心が溢れ出して、多分だがこのタイミングで一番言ってはいけないことを口にしたのだと思う。
 
「利央さん?」

 ゆったりとした微笑みを浮かべた颯が、ことさらゆっくりと腰を動かした。
 
「はぁっ、ん、んっ」

 力強く打ち付けられるよりも、擦り上げるように動かされて何とも言い難い気持ちよさが背中を駆け上ってくる。
 
「酷いと思いませんか? これまで、どれだけ夢見ていたことかっ、んっ」

 悩ましげに眉を寄せ、次第にその速度が上がっていく。
 お互いの爆発が近いのが分かり、快楽を逃すまいと手を伸ばした利央は、颯の薄茶色の髪に指を絡めて引き寄せてキスをした。
 その瞬間、繋がりがより深くなって、中で颯が弾けるのが分かった。
 コンドーム越しでも感じるほどの熱さに、利央の中は最後の一滴まで搾り取ろうと蠢き扱く。

「んぁっ!」
 
 達したはずなのに、中にいる颯はすぐに硬さを取り戻していく。
 驚きに目を見張る利央の顔を見ながら、ゆっくりと腰を引いて中から出ていくと、その擦られる感触だけで声が漏れた。
 もう中には無いはずなのに、弛緩したそこは形を覚えてしまったかのように開いて、蜜が垂れていく感触がお尻のほうにまでしている。

「とろけきった利央さんは、とても可愛いですね。そんな姿を他の誰かも見たのかと思うと……ちょっとね」

 ほの暗く笑った颯は、全身から力を抜いている利央を抱き上げ、ベッドにもなりそうな広くて大きなソファに下ろした。
 逞しさに惚れ惚れしていると、いつの間に付け替えたのか新しいコンドームを着けた自身を軽く扱きながら前髪を掻き上げた。 
 その目はぎらつき飢えた獣のようで、足の間の奥深くがきゅんっと締り、背筋を甘い疼きが駆け登っていく。
 
「これで、ゆっくり愉しめそうです」
 
 隣に横になった颯は、利央にも横向きで寝るように促し、片方の足を持ち上げて未だに蜜で濡れるその場所に、するりと滾るモノを滑り込ませた。
 枕にしがみついて、揺らし叩きつけられる颯の腰に翻弄され、利央はこれまで上げたことのない嬌声を上げさせられた。
 正常位とは違い、まったく違う場所が擦られ暴かれていく。
 恥ずかしいカッコにされているのに、気持ちよさと背徳感に止められない。
 足を離した颯は、中に入ったまま利央をうつ伏せにすると、顔の両側に手をついてソファに叩きつけるかのように腰を振る。

「はっ」

 体を弛緩させた颯の体が覆いかぶさり、まるで溶け合うようにしっとりとした肌が密着した。
 頬の横に感じ柔らかな髪の感触と、味わったことのない快感を思い、これはまずいことになったぞと考えながら訪れた心地の良い疲労感に目を閉じた。



 
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