『  』

ちかライダー

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DRUG  3

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「ねぇ、いつまで回るのぉ?」
「見つけるまでだ! わかったら、真面目に探せ!」

商店街を、高校生と小学生の姉弟きょうだいが歩いている。
 探し物をしているようだ。

「ねぇ、ホント?」
前を歩く弟に、姉は尋ねた。
「いい人だったよ?
お店がわからず迷子になってた私にとても丁寧に教えてくれて…」
「道を教えてくれるやつは全部いい人か?」
弟の返しに、姉はゴニョゴニョ口を動かした。

 「別に、そいつが《オニ》だって言ってねぇだろ。
そいつの周り、もしくはそいつがマーキングされてる可能性もある…。
何かしら《オニ》と関わりがあるだろうがな」
「そんなぁ、、」
商店街を歩く姉弟きょうだいは、みつりとアオだ。

 数日前、みつりは1人で買い物(アオのパシリ)に来ていた。
初めての場所で迷子になっていたところを、ある女子中学生に助けてもらった。
その子のお陰で、目当ての買い物が出来たのだが…


   ーーーーーーーーー。
     
     「ただいまぁ」
 みつりは、家へ帰宅した。

「おーそーいーー!!
  おつかいに何時間もかけてんだよ!」
家のソファには、今にも溶けてしまいそうな姿勢で、アオがダラけて座っていた。
みつりを見るなりアオは、今まで待たされたストレスを吐き散らかした。
「はいはいはいはい、遅くなってすみませーん」
みつりは、慣れたように空謝りでアオに返事をする。

 テーブルに紙袋を置いた。
その袋を見たアオは、今までのダラけた表情と変わって目をキラキラと輝かせながら中を覗いた。
ほんのりまだ温かい紙袋から漏れる美味しそうな香り♡
 
 幸せな香りに釣られ、アオが袋の中に手を入れようした時
「もうすぐご飯なんだから! 後で食べなさい!」
夕飯の準備をすべく、みつりはエプロンを着け冷蔵庫を開けている。

今日も、両親は仕事でいないため冷蔵庫にあるおかずをみつりは取り出していた。
「今日は、お母さんが準備してくれてるから♪︎ 温めるだけぇ…」
夕飯の準備をしていたみつりの視界が暗くなったと、思ったら…

『みつり、何ヲ言ッテイルダ!』
視線をあげると、そこにはアオがいた。
 しかも、オニの姿に戻ってみつりの開けた冷蔵庫を閉めた。
冷蔵庫を背に、みつりは壁ドン状態で蒼桜アオに詰められた。
無駄にイケメンな蒼桜アオ
 今だ見慣れないので、不意に見てしまうと、つい「ドキッ」と、してしまう。
『お前には、この! この愛くるしい姿と胃液を刺激するこの匂いのネコ焼きをお預けしろと言うのか!』

 【ネコ焼き】
    みつりがおつかいに行ったお店「猫のしっぽ」の人気商品。
  たい焼きの形が猫の顔の形になっていると説明すればいいだろう。
  猫の表情も色々あって、生地も数種類ある。
  生地の中に入るのも、よくある中身だがはみ出るくらい入っている
 
    もう… 美味しい。

可愛さと味の美味しさが口コミで広まり、こないだテレビでも取り上げられていた。
それを見た蒼桜アオが、気になりみつりに買わせに行かせたのだが…

『みつり、ほらよく見てみろよ。
 このねこちゃんの表情を… とてもにこやかにしてるじゃないか?
店主の手で、ひとつひとつ丁寧に焼き上げられたこのネコたち…。
このあたたかさが残るこのタイミングで食べるのが、買い手の努めだと思わないか?』

 今日は、普通に学校だった。
「今日は♪︎ 早めに終わったから♪︎ 大好きな動画見て♪︎ ゆっくりしよう♪︎」
なんて、思いながら帰宅した。
 
 そしたら、有無も言わせてもらえずパシられた。

 馴れない場所で、知らないお店を探し回った…。

 正直、疲れてるし・お腹も空いてます。

みつりの細胞を刺激するように、あたたかい香りが惑わしてくる。
美味しそうなネコを、無駄にイケメンな蒼桜アオが、顔の前でチラつかせてくる。
 
   ーーーーーーーー

  「いただきます」
  『イタダキマス』

誘惑に勝つことが出来ず、夕飯がネコ焼きになってしまいました。

「あぁ… おいしぃ♡」
沁みる美味しさが、言葉として漏れる。
 蒼桜アオも、とろける顔で幸せそうに食べている。
『やっぱ、俺のセンサーは正しかったぜ…
想像を裏切らない、このうまさ… 最高すぎる』
「あっ、そうそう。
このお店って、アップルパイも美味しいって教えてもらったんだぁ」
そう言うと、みつりはもう1つの袋からアップルパイを出した。

 視角からでも分かる、サクサク感。
ひとつ持つと、中のリンゴの重みを感じる重厚感。

それを口に入れると、甘さ控えめのカスタードと甘く味付けられたりんごの素敵なハーモニー。
 そう、一言で「美味しい♡」。

幸せをいただいた2人は、お腹も心も満たされた。


 みつりが、幸せの余韻に浸っていると蒼桜アオが尋ねた。
『みつり… おまえ、誰かと話したか?』
「えっ? 話した? まぁ、学校に行ったから普通に友達とかと話しりするけど…」
突然の質問に、みつりは不思議ながらも答えた。
『違う、俺が買い物を頼んだあとだ。
誰か、知らない奴と話してないか?』

    知らない人?

 みつりはすぐにある人物が思い浮かんだ。
道に迷っている時に助けてくれたあの
「うん… 私がお店の場所がわからなくて、迷ってうろうろしてたら人にぶつかってしまって…。 
ぶつかった失礼ついでに、お店を聞いたらこのお店を知ってて… 案内してもらった子がいたけど… あと、お店の店員さんと話したかな?」

その話を聞いて、蒼桜アオは真面目な顔をする。

「アップルパイも、その女の子に教えてもらったんだ」
嬉しそうに、みつりは答えた。
すると、蒼桜アオ
 『ヲ前は、なんと言うか… よくもまぁ、ツナガルナ』

「え? ナニが?」
みつりは、不思議に質問した。
蒼桜アオには、"オニ" を感知する能力がある。
 その能力で、みつりの "ナニカ" を察知したようだ。

「えっ? うそ! 私、またオニに襲われるの?
 でも、その人とは初めて会う人だし… 知り合いでもなんでもないし…」
みつりは、あの時のユメを思い出した。
あの時と同じような "オニ" がまた出てくるのかと思うと、折角の幸せが薄まってしまった。

『まだわからんが、確かにお前と会ったニンゲンの中に "オニ" と、関わりのヤツがいるようだ』

 なるほど。 みつりは、蒼桜アオの話しに相づちを打った。
『ヨシ、行くぞ』
その言葉をスタートに、蒼桜アオがみつりを捕まえて "オニさがし" に向かおうとした。

     「えっ?」

みつりは、少しして今の状況を理解し、必死で抵抗して蒼桜アオの行動を止めた。

「ちょっ、ちょっ、待って! もう夜だよ! 今から家出るのはダメだって!」

 必死で止めるみつりだったが、ニンゲン小娘のちからなどオニの蒼桜アオには、何も抵抗になってなかった。
みつりの言葉など聞くこともなく、ずんずんと玄関へと進む。
それでも、みつりは小さいなりに抵抗していると、「ガチャ」と、玄関の鍵が開く音がした。
2人は、驚き動きはが止まった。

―こんな時間に、来る人はいない… まさか、招かれざるモノ!ー
 
「ただいまぁ」
と、少し緊張していた2人にどこぞで聞き覚えのある声と共にドアが開く。
「はぁ、疲れた…」
お母さんだ。

 母は、すぐに2人に気付いた。
「あら、ただいま。
 2人でお出迎えなんて、どうしたの?」

しまった! 蒼桜アオが、大きいイケメンの姿だ!
 みつりが、どう上手く誤魔化そうか考えていたら、
「お帰りなさい、お母さん」
と、幼いかわいい声が聞こえた。

 横を見ると、今まで自分を担いでいたデカブツが、いつの間にか可愛らしい小学生に変わっていた。

あお、ただいまぁ」
母は、息子を見て微笑んでいる。
「お・お母さん、おかえりなさい… てか、早い帰りだったね」
みつりが平静を装って尋ねた。
 「暇だし、人も多めにいたから♪ でー、先に帰らせてもらったの」
と、嬉しそうに答えた。

ナイス! 暇!
 みつりは、心でガッツポーズを取って喜んだ。
母は、お風呂へ入るべく、すぐに向かった。

「親もいるのに、子供がいなくなったら事件になるから、今日出るのは止めよう?
 もし、いないのバレたらまじヤバイって」

『・・・・・』
あおも、渋々とした顔だったが、今日は行くのを諦めた。

 
    ーーーーーーー。

         そして、今。
あの時に出会った、名も知らぬぶつかりし君を探している。




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