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誰でもいいから

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机に突っ伏して寝ていたら突然肩に誰かの手が置かれた。その感覚に一気に覚醒した俺は相手の手を骨折しない程度に握り寝起きなこともあって機嫌の悪い顔で相手を睨んだ

「ひっ!!!」

「誰だテメェ...」

「あ、あの...隣の....じゃなくて....先生が.......」

「........ぁ、ゴメン」

寝ぼけてたせいでまわりを見ていなかったが今の状況がようやく分かった。今は授業中で時間からして四時間目の始まって少し過ぎた頃。数学の授業らしくバーコードのおっさんが数式が書かれている黒板をバックに青ざめていた。恐らくだが指名した生徒が寝ていたが隣に起こすように指示したのだろう。んで、それが分からずに低い声で唸ってしまったのか...

「ふ...降谷君........その...」

「すんません、寝ぼけてました」

「あ........そうですか...ではこの問題を...」

ビクビクとしながらも指示を出している先生が面白く見えたけど顔には出さないようにしよう。黒板に書かれている公式は中学で習うことの応用のようで解けないわけではない。ただちょっとだけフリーズした
よくあるじゃん、あれ?これどんなふうにやれば正解になるんだっけ?ってやつ

「......終わりました」

「はい.......はい、あってます」

よしっ!と思って席に戻ろうとしたら校内放送が鳴り響いた。何事かと思ったら俺の呼び出しだった...
早急に生徒会室に来いって...仕事かな?
とりあえず先生に断りを入れてから教室を出た。昨日通った道を辿り生徒会室についてノックをして入ると有栖川先輩が待っていた

「すみませんでしたね、初日だけは授業に専念するようにしたかったのですが...仕事が....」

「分かってます。やる人がほぼ居ないから仕方ないですよ」

「そうですね...では、まずは生徒全員の名前を記入してもらいます」

「了解でーす」

生徒会長専用の机に座りパソコンを立ち上げた。パソコン操作は宇槍町で始末書の制作やら住人の入力やらで使いまくっていたので問題なく使える。渡された広辞苑並みの厚さの書類に書かれている名前を記入して言った。この時必要になるのは無我になることだ。何も考えずに手だけを動かすのだ
初めて約一時間、全員の入力が終了した...

「有栖川先輩、終わりました」

「えっ!?...はい!!」

「他は俺がやりますよ...六月に親睦会があるんですね...その企画書と必要人材と経費と......あ?なんで始末書の山がここにあんだよ...しかも各委員会の予算割り当ても白紙...しかも生徒会と風紀の予算まで決めなきゃならねぇのかよ...」

「ぇ?...降谷君?」

「はぁ!?始末書の提出今日まで!?ほぼ風紀員しかねぇじゃねぇか!!」

意味が分からなすぎて素が出てしまった。しかし、これはどうかしているぞ...風紀委員会は学校内の風紀を正して維持させるのが仕事のはず...その風紀員が風紀乱してるとかどういうことだ!?
今すぐ風紀委のところに行きたいが有栖川先輩の反応からしてこれはいつものことなのだろう...なら、やるしかない
始末書をちゃっちゃと終わらせて予算の割り振りをした。訳の分からない同窓会が多くありそれに限って予算が他より高い...

「各親衛隊の予算?こんなの各三千あればいいだろ。必要なら自腹しろ...っと。風紀委も仕事しねぇなら大幅カットしてやる」

「...容赦ないですね...」

「えぇ、甘やかしたらとことん催促してきますからね...その他の委員会は真面目にしてんのか?」

「真面目に活動しているのは...整備委員会だけです...かね」

「マジかよ...なら、整備以外は予算カットな。とりあえず仮報告書は出来たから職員室に出してきてくれますか?」

「...分かりました」

有栖川先輩に提案書と始末書を渡して提出を頼んだ。残った俺は過去の活動内容やイベント進行を読みあさって六月の親睦会の起案書を作ることに専念した。過去の例からすると親睦会は二泊三日で行われ鬼ごっこ、尻尾取り、サバイバルゲーム、かくれんぼなどなどちいさな子供がやるような楽しく簡単なルールの遊びを大規模でやるそうだ。実行場所の定番は遊園地、学園の所有している森林、そして何故か宇槍町があった

「...一昨年の親睦会二日目に将来実用のためにと宇槍町を起案し決定......あー、あれか」

そういや、市長になりたての時にそんなのがあったっけな...闘技場の見学やら繁華街の見学やらをやってたっけ......俺監視の下で
その際にいろいろ厳しい規則を設けて一つでも違反したら即罰をするってことで承諾したんだっけ...

「今回は...例年通り遊園地にするか......そんで...尻尾取りだけでいいか?」

こんな時、体験者がいれば...
声を大にして言いたいことがある


「誰でもいいから手伝えや!!!!」


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