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CCⅩⅢ 星々の様相と局面編 前編(4)

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第1章。暗闇の底から(5) 〖エリースの目〗 

 
    【少し時間はさかのぼる。】

 朝の心地よい木漏こもれれ日が、重なり合う音楽をかなでているなか、
わたしは、街道のど真ん中に、折りたたみ椅子を持ち出し、しっかりと着座し、
万全の笑みを顔面にりつけて、アマト義兄の帰りを待っている。

朝のと夜のお風呂が、お肌のはりと美貌のために、いかに必要か、
わたしは、十分にわかっている。

現在わたしのまわりには、
今を盛りと咲き誇る、イルム・ルリ・キョウショウ・カシノ・リントたち。
それに、確実に、その才媛たちの列に加わるだろうと思える、
学友のキリナ・セリナ・ミリナがいるわ。

彼女たちは、美貌だけではなく、間違いなく歴史書にのるのは確実な女性。
歴史書をむ人間にとっては、彼女たちの美貌をどう文字にのせるか、
それだけで、編纂へんさん時間の半分の時間を必要とするでしょうね。

そんななかで、美貌しか持っていないが、
彼女たちの容姿に、劣等感を持たないためには、
自分もの努力をしていると、
納得する生活を送らざるを得ないわ。

その上に、わたしには、ユウイ義姉がいる。
義妹のわたしが言うのはなんだけど、ユウイ義姉は、
まさにいやし系麗人れいじんの頂点とも言っていいわ。
おかしいことに、ガルスの街では、それ程騒がれなかったのに、
皇都では、義姉アネキの、姿を一目見ようと、店の前は鈴なりの人だしね。
もはや、皇都の観光名所の一つになっている。
これって、と思うわ。

普通、この傾国の麗人れいじんレベルの美しさなら、王侯貴族の後宮か、
大商人の別宅か、裏の世界の人の別室に、囲われているはずで、
一般の人々の目にかかることはないのだけど、
暗黒の妖精ラティスの契約者の、でいらっしゃるので、
皇帝予定者のセプティが、男だったとしても、
自分の後宮には、呼べなかったと思う。

ユウイ義姉の美貌は、親しいわたしには本当に狂気、いえ凶器ね。
その悪意のさえない美しい表情がせまってきて、
おだやかな口調で責められるのは、自分のことならともかく、
今回のように、あのラティスラファイアのアホのために、
たぶん、いや確実に、帰宅後められるのは、間違いない。

そう、今朝、朝のまどろみを省略したのは特別。
次回は絶対に、められることがないように、
今日、出来る限り平和に、あのふたりと交渉はしてみるつもり。
だから、絶対に逃がさないわ。
わたしは、十全のわなをはって、いえ万全の準備をして、ここにいる。

『でも、もし最悪の場合になったら・・・。リーエも、やってくれるわね?』
と聞いたら、逃げ出した緑のアホが、真っ青な顔で戻ってきた。

わかっている。だれかが、それも相当な強者が争っている。
受動的探知で、エーテルの乱れ、位置は確認した。

≪行くわよ、リーエ!≫

精神波で叫んで、わたしは大地をって、空へはばたいた。


・・・・・・・・


 予想された地点の上空に停止した、わたしの目の前に、ふたりの戦士が・・・。
ひとりは地面に突っ伏し、ひとりは両脚・左腕から激しい出血をしながらも、
なおも立ち構える・・ヨクス・・、アマト義兄ィの命を狙ってきた、
この女戦士に、わたしは、いい感情を持ち合わせていない。

≪この気配エリースか?目の前の少年は敵だ。そして超上級妖精契約者・・・≫

次の瞬間、ヨクスの身体はグラッと傾き、地面の上に倒れた。
ヨクス!?けど、翔け寄れない。

≪少年。倒されたふりをしないで、起きてきたら!?≫

わたしは、もうひとりの倒れている人物に、精神波を放つ。

≪ククク、簡単には、だまされてはくれないか。≫

もう一人の戦士がゆっくりと立ち上がる、外見は本当に少年!?じゃない、
ひょっとしたら、わたしより若いかもしれない。

≪わが名はセイリル、土の超上級妖精。この身体はレサト、わたしの契約者だ、
 そちらの名は、風のエレメントの超上級妖精とその契約者・・・・。≫

≪わたしの名前はエリース、そして、相棒の名前はリーエ!≫

≪相棒?・・・そうか・・・。≫

振り向かないでもわかる。わたしの背後に、わたしの風の超上級妖精が、
攻撃姿勢で宙に停止してるのが。

≪エリースとやら、闘うまえに、凝縮ぎょうしゅく精神波を送る。
 それを知って、おまえの考えを聞こうか。≫

はしりくる精神波。
わたしの意識は、レサトとセイリルの契約時から今日までの画像を、
超上級妖精セイリルの目線で、追いかけてゆく。
同時に、わたしの視線は、レサトの指から黄金の糸が、超高速度で伸びてゆき、
ヨクスの身体の怪我の部分に巻き付き、止血?を行ってるのをとらえている。

≪超上級妖精といっても、不便なもの。水のエレメントでなければ、
 人間に対し治癒ヒールも、できない。≫

レサトの外観は、肩をすくめている。

≪エリース。
 彼女は、土と風のエレメントのふたりの最上級妖精と契約をなしていた。
 普通の人間だったら、気が狂うほどの重圧があっただろう。 
 すさまじい克己こっき心で、自分を律していたのか!?
 それだけで分かる。つまりは、殺すべきではない人間だと・・・。≫

レサトの目が、こちらをにらむ。
そして、追いかけるように、精神波が届いたわ。

≪さて、エリース。無駄な戦いはしないで、道をゆずってはくれないか?
 わたしの目線で見た画像で理解できただろう。
 わたしが、必要とするのは、暗黒の妖精のラティスのこの世界からの退去か、
 その契約者の命のみ。≫

≪たしかに、でも、妖精界の頂点と豪語する、
 暗黒の妖精と対峙するのは、あなたでも厳しいわね。≫

≪ふふふ、自称か。わたしもそうだが、妖精は、契約者が死ねば、
 それまでがどうであれ、妖精界に帰る。≫

≪今、レサトの身体に対する攻撃は、わたしの意識が顕在けんざいしてなくても、
 わたしの無意識の魔力でも、まもることもできる。≫

≪そして、妖精界の超絶者のひとり、暗黒の妖精がいなくなれば、
 もはや自死するための手段は、レサトになくなる。≫

わたしも、魔法円にのり、空中に浮かんできたレサトの目をにらみ、
想いを精神波で叫ぶ!

≪セイリル。だけど、通すわけには、いけないわ。
 なぜなら、暗黒の妖精の契約者は、わたしの義兄!!≫

≪そうか、やはりか、納得した。だが、そちらも超上級妖精。手加減は出来んぞ!≫

レストの周囲に、黄金の背光が、輝いていく。

そうね、セイリルという超上級妖精は、
ラファイアやラファイスのことはともかく、
ルービスやエメラルアまでこの世界にいることを、知らないみたいね。
けれども、このセイリルは、気づいてない。
あなたが、超絶と言う妖精たちが、もし、自分の契約者が傷つけられたら、
どんな反応をしめすのか。
そう、この世界を、焦土しょうどにしてはいけない。

だから、わたしが、ここで防ぐわ!

わたしの感情を追って、わたしの全身も、緑金色の背光に包まれれいく。 
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