76 / 183
第4章
75,協力
しおりを挟む
レーネ・ストリングス。
特徴はやっぱりその高い身長と巨体に似合わない人見知りをする恥ずかしがり屋な性格だろうか。
人見知りで恥ずかしがり屋とはいっても年がら年中ビクビクしているようなタイプの人見知りではない。
普段は屈強な荒々しい連中が集まる冒険者ギルドでもランクAという高ランクに位置し、その性格が災いしつつもソロで依頼をしっかりこなしてくる実力者だ。
そんな中でもまれた結果として、周りから視線を集めても表面上はなんともない風を装えるようになっている。
でも心の中はというと常にてんぱっていたりする。
そんな彼女なので親しい友人も居らず、PTに入っても話すのが難しくすぐに居づらくなってしまう経験からここ数年、特にランクB以上になってからはPTに入ってすらいなかった。
そんな彼女がなぜオレ達と組むことになったか。
それはギルドマスターの強い要望とエリザベートさんの説得があったからだ。
結果としてレーネさんは十数年ぶりの友人を得ることができた。
未だに声を出して話すのは難しいが、念話では外から見た彼女とはなんだったのかというレベルで饒舌に話してくれる。
調査依頼を完了させて約束通りに買い物に繰り出したわけだが、ネーシャを迎えに行く時間にはまだまだ早いのでネーシャとの顔合わせはまた今度だろう。
レーネさんは大きな体に似合わない可愛らしい顔の人だ。
その可愛らしさ具合ときたらまるで愛玩動物のような愛くるしさである。
これで体が小さかったら多分エリザベートさんの餌食になっているだろうことは想像に難くない。
そんな愛らしいお顔のレーネさんは街中では常にフードを深く被ってしまう。
オレ達と一緒でもそれは変わらない。
彼女と普通に喋れるのはオレだけであり、オレと一緒ならアルも大丈夫だがアルだけとなると途端に喋れなくなってしまう。
レーネさんとのお買い物は基本的に彼女のリクエストに応える形にしてみた。
彼女はその巨体と白さで非常に目立つ。
だが彼女自身自分の外套の色が目立つことは自覚していなかった。
すごい実力者なのだがこういうところが抜けていて好感が非常に持てる。
ギャップ萌えの塊のような人だ。
ちなみにその真っ白い外套なのだが、これは魔道具なのだそうだ。
防御力にも非常に優れ、物理魔法問わず高い性能を発揮する。汚れにも強く軽い汚れなら払うだけで落ちてしまうほどで、この真っ白さはその効果が正常に発揮されている証だ。
なので今更この外套を脱ぐわけにも行かず、最終的にはやっぱり深く被ったフードをより深く被ってしまった。
なんとも苦笑いが漏れてしまうけど、彼女としては死活問題なので仕方ない。
まぁ外套の下にはこれまた魔道具なフルプレートアーマーを着用していてまるで要塞のような印象を与える。
以前騎士団詰め所で見た騎士の人なんかよりもずっと重そうな鎧なのだが、レーネさんが着ているとそんな風にはまったく見えない。
背負っている大剣も超重量らしいが重さを感じさせないレベルで扱うことが出来るそうだ。
腰に履いている長剣の方も魔道具であり、レーネさんは全身魔道具装備なのだ。
総額いくらになるかはちょっと計算したくない。
以前特殊進化個体討伐に参加して得られた1回分のお金の全てをつぎ込んでも足がでたくらいの金額だとは教えてくれた。
装備というのは冒険者にとって生死を左右する物だ。
高い物は天井知らずというのがよくわかった。
オレ達がそういう装備を手に入れられるのはいつの日になることやら。
あ、黒狼石の短剣や月陽の首飾りはそれ以上の品らしいので一応手に入れているのか。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【ワタリさん、このぬいぐるみすごく可愛いです……】
【手にとって見たらどうですか?】
【い、いいんですか!?】
【大丈夫ですよ、はい】
【……わぁ……。可愛い……】
レーネさんのたっての希望で訪れたぬいぐるみの館とでも形容すべきお店には所狭しと大小さまざまなぬいぐるみが陳列されている。
その中でもレーネさんの目を惹いたのはグレートピレネーズが2本足で立っているぬいぐるみだ。
ぬいぐるみを前にうっとりしながらも決して手に取ろうとしないレーネさんにちょっと強引に渡してみるとその表情は一気に緩み、破顔してしまった。
まるで幼い子供のように嬉しそうにしているレーネさんに癒されつつも、オレもぬいぐるみを手にとって見る。
「アル、アル。どうかな?」
「ワタリ様、このアル。理性を保つだけで精一杯にございますッ!」
「……そ、そう」
ちょっとふざけてぬいぐるみを抱きしめてにっこり微笑んでみたらアルが鼻を押さえてぷるぷるし始めたのでこれは危険だと判断した。
アルまでエリザベートさん化したらちょっと……いや大分……いや相当困る。
お願いだからエリザベートさん化だけはしないでね、アル。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
結局レーネさんはグレートピレネーズのぬいぐるみを購入し、オレはネーシャのお土産に狐がお座りしているオレの腕くらいの大きさのぬいぐるみを購入した。
意外と安かったのでネーシャが気に入ったら今度つれてこよう。
その後ちょっと露店を冷やかして串焼きを1本ずつ食べると、そろそろネーシャのお迎えの時間だとアルが教えてくれた。
この世界には時計はないが、みんな結構規則正しい生活をしている。
その中でもアルは特に秒単位で時間を正確に把握している節がある。
これも執事能力なのだろうか。アルは実に不思議なやつだ。まぁ便利だからいいけど。
【それでは今日はこの辺で解散ですね。よかったらまた一緒に遊びましょうね】
【はい! 是非ともご一緒させてください! あ、あと……その……】
【ん? 遠慮せずに言ってみてくださいな】
【は、はい! よ、よかったらなんですけど……。い、一緒に依頼をやりませんか!】
フードに隠れた顔が真っ赤になってしまっているレーネさん。
彼女にとっては一世一代の頼みごとなのだろう。
だがランクAとランクFが一緒に依頼をやるのは大丈夫なのか? 考えなくてもランクFのオレの依頼に合わせる事になるし。
【えっと……。でも私のランクはFですよ?】
【はい、それは知っています。でも上のランクの者が下のランクの依頼を受けてはいけないということはないので。
……それに……】
【それに?】
【ワタリさんの実力はランクFとはとても思えません】
レーネさんの顔の赤味が大分引き、真剣な表情でこちらを見ている。
視線を合わせる為にがんばってしゃがんでくれているけど如何せんオレの身長が足りなさ過ぎる。
いやレーネさんがでかすぎるとも言えるけどね。
【ワタリさんが使っていた複数転移は移動距離から考えてもLv1でしょうが、あれだけ連続して使えるというのはランクAでも、専門の人でも少ないくらいです】
【それはこの月陽の首飾りがあるから……】
【それだけではないのは見ていればわかります。それに特殊進化個体討伐協力の際の情報もエリザベートさんから聞いていますので……】
【なるほど。それじゃあそう思うのも仕方ないですね】
【はい。ランクが低いのはまだ登録したばかりだから。でも実力はずっと高いと思います】
【だからランクアップの手伝いをしてくれる、と?】
【実力があるのに勿体無いと思うのも確かです。でも……私は出来ればもっと……その……ワタリさんと仲良く……なりたくて……】
最後の方は尻すぼみにどんどん小さくなっていってしまったけど、そっちの方が本音なのははっきりとわかる。
十数年ぶりに出来た友人なのだ。もっと仲良くなりたい、近づきたいと思うのは当然のことだろう。
久しぶりすぎて距離感を量りかねている感も否めないけど、それは仕方ないだろう。
彼女は冒険者で高ランクで、オレも冒険者。しかも低ランクだ。
教え導くことも可能だろうし、友人の力になりたいという想いもひしひしと伝わってくる。
【わかりました。でも私に付き合って依頼をこなすとなると、お金が全然稼げないと思いますよ?】
【あ、それは平気です。私こう見えても意外とお金持ちなんですよ?】
【あぁそうだよね。特殊進化個体討伐3回してるんだっけ】
【はい! だからそういう心配は必要ありません。だから私にワタリさんのお手伝いをさせてもらえませんか?】
確かにレーネさんが居れば色々と教えてもらえるだろう。
伊達にランクAではないのだ。彼女の立ち居振る舞いや知識は金を払ってでも得るべきものだろう。
だがオレは彼女に隠していることがいっぱいある。戦闘能力なんかもそのうちだ。
一緒に依頼を受けるとなるとその辺を隠し続けるのは難しくなる。
今日1日レーネさんと付き合ってみて彼女は信用できるとは思う。
でもやっぱりまだ1日の付き合いでしかない。確信できるほどではないのだ。
アルはこの世界に来てからずっとの付き合いだし、それ以上にオレが依存してしまっているので信用云々なんてすでに通り越している。
ネーシャは素直で良い子なのはもうわかりきっている。
だからレーネさんもきっと少しの時間をかければ確信できるくらい信用できるだろうと思う。
【えっと、じゃあ毎回ではなく少しずつ一緒にやっていくというのはどうでしょう?】
【はい! もちろんです! ワタリさんのやりやすいようにしてもらって構いません!】
レーネさんもどうやら毎回毎回一緒に、という風には思っていなかったようだ。
あっさりとこちらの案を了承してくれたのでホッと息を吐けた。
ちなみに信用云々の他にも打算的な思惑もあったりする。
このままでは討伐系なんかはエリザベートさんやアルの過保護なまでの妨害により受けることがままならないだろうからだ。実力者のレーネさんが保護者代わりについてきてくれるのなら反対もしづらいはずだ。
そういう打算もあり、レーネさんとはこれからPTを何度も組むつもりなのだ。
とりあえず、試しに明日一緒に依頼を受けるということで今日と同じくらいの時間帯で冒険者ギルドで待ち合わせをして一旦別れることにした。
ちなみにPTはそのままだ。
でもオレには複数転移があるのでそのことを話すと、さすがランクA。転移系のスキルは300m程度離れると巻き込まないということをすぐ教えてくれた。
その300mもPTを組んでいる時にわかるレーダーのような相手との距離を測れる能力によりわかるそうだ。
確かに以前エリザベートさんとPTを組んでネーシャを捜索したときに、範囲外になるとちょっと感じが変わったことは覚えている。
でも大したことでもなかったのでスルーしていた。まさかこういう機能だったとは思わなかったので便利なものだ。
ちなみにさらに離れて3kmくらい距離をあけるとまた感じが変わり、今度は念話が通じなくなるのだそうだ。
PTに効果があるスキルとしては他には、強化系や弱体化系などだがこれらは射程距離が短く、50mも離れると届かないらしい。
もちろん一度かけてしまえば距離を離しても問題ないそうだが。
さっそくレーネさんから色々教えてもらえて非常に勉強になった。
そういってお礼を言うとはにかんだ素敵な笑顔のレーネさんを見ることが出来た。
真っ赤になった焦っている顔ばかり見せていたので、その表情はとても新鮮でほっこりしてしまいこちらも笑顔になってしまう素敵な表情だった。
特徴はやっぱりその高い身長と巨体に似合わない人見知りをする恥ずかしがり屋な性格だろうか。
人見知りで恥ずかしがり屋とはいっても年がら年中ビクビクしているようなタイプの人見知りではない。
普段は屈強な荒々しい連中が集まる冒険者ギルドでもランクAという高ランクに位置し、その性格が災いしつつもソロで依頼をしっかりこなしてくる実力者だ。
そんな中でもまれた結果として、周りから視線を集めても表面上はなんともない風を装えるようになっている。
でも心の中はというと常にてんぱっていたりする。
そんな彼女なので親しい友人も居らず、PTに入っても話すのが難しくすぐに居づらくなってしまう経験からここ数年、特にランクB以上になってからはPTに入ってすらいなかった。
そんな彼女がなぜオレ達と組むことになったか。
それはギルドマスターの強い要望とエリザベートさんの説得があったからだ。
結果としてレーネさんは十数年ぶりの友人を得ることができた。
未だに声を出して話すのは難しいが、念話では外から見た彼女とはなんだったのかというレベルで饒舌に話してくれる。
調査依頼を完了させて約束通りに買い物に繰り出したわけだが、ネーシャを迎えに行く時間にはまだまだ早いのでネーシャとの顔合わせはまた今度だろう。
レーネさんは大きな体に似合わない可愛らしい顔の人だ。
その可愛らしさ具合ときたらまるで愛玩動物のような愛くるしさである。
これで体が小さかったら多分エリザベートさんの餌食になっているだろうことは想像に難くない。
そんな愛らしいお顔のレーネさんは街中では常にフードを深く被ってしまう。
オレ達と一緒でもそれは変わらない。
彼女と普通に喋れるのはオレだけであり、オレと一緒ならアルも大丈夫だがアルだけとなると途端に喋れなくなってしまう。
レーネさんとのお買い物は基本的に彼女のリクエストに応える形にしてみた。
彼女はその巨体と白さで非常に目立つ。
だが彼女自身自分の外套の色が目立つことは自覚していなかった。
すごい実力者なのだがこういうところが抜けていて好感が非常に持てる。
ギャップ萌えの塊のような人だ。
ちなみにその真っ白い外套なのだが、これは魔道具なのだそうだ。
防御力にも非常に優れ、物理魔法問わず高い性能を発揮する。汚れにも強く軽い汚れなら払うだけで落ちてしまうほどで、この真っ白さはその効果が正常に発揮されている証だ。
なので今更この外套を脱ぐわけにも行かず、最終的にはやっぱり深く被ったフードをより深く被ってしまった。
なんとも苦笑いが漏れてしまうけど、彼女としては死活問題なので仕方ない。
まぁ外套の下にはこれまた魔道具なフルプレートアーマーを着用していてまるで要塞のような印象を与える。
以前騎士団詰め所で見た騎士の人なんかよりもずっと重そうな鎧なのだが、レーネさんが着ているとそんな風にはまったく見えない。
背負っている大剣も超重量らしいが重さを感じさせないレベルで扱うことが出来るそうだ。
腰に履いている長剣の方も魔道具であり、レーネさんは全身魔道具装備なのだ。
総額いくらになるかはちょっと計算したくない。
以前特殊進化個体討伐に参加して得られた1回分のお金の全てをつぎ込んでも足がでたくらいの金額だとは教えてくれた。
装備というのは冒険者にとって生死を左右する物だ。
高い物は天井知らずというのがよくわかった。
オレ達がそういう装備を手に入れられるのはいつの日になることやら。
あ、黒狼石の短剣や月陽の首飾りはそれ以上の品らしいので一応手に入れているのか。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【ワタリさん、このぬいぐるみすごく可愛いです……】
【手にとって見たらどうですか?】
【い、いいんですか!?】
【大丈夫ですよ、はい】
【……わぁ……。可愛い……】
レーネさんのたっての希望で訪れたぬいぐるみの館とでも形容すべきお店には所狭しと大小さまざまなぬいぐるみが陳列されている。
その中でもレーネさんの目を惹いたのはグレートピレネーズが2本足で立っているぬいぐるみだ。
ぬいぐるみを前にうっとりしながらも決して手に取ろうとしないレーネさんにちょっと強引に渡してみるとその表情は一気に緩み、破顔してしまった。
まるで幼い子供のように嬉しそうにしているレーネさんに癒されつつも、オレもぬいぐるみを手にとって見る。
「アル、アル。どうかな?」
「ワタリ様、このアル。理性を保つだけで精一杯にございますッ!」
「……そ、そう」
ちょっとふざけてぬいぐるみを抱きしめてにっこり微笑んでみたらアルが鼻を押さえてぷるぷるし始めたのでこれは危険だと判断した。
アルまでエリザベートさん化したらちょっと……いや大分……いや相当困る。
お願いだからエリザベートさん化だけはしないでね、アル。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
結局レーネさんはグレートピレネーズのぬいぐるみを購入し、オレはネーシャのお土産に狐がお座りしているオレの腕くらいの大きさのぬいぐるみを購入した。
意外と安かったのでネーシャが気に入ったら今度つれてこよう。
その後ちょっと露店を冷やかして串焼きを1本ずつ食べると、そろそろネーシャのお迎えの時間だとアルが教えてくれた。
この世界には時計はないが、みんな結構規則正しい生活をしている。
その中でもアルは特に秒単位で時間を正確に把握している節がある。
これも執事能力なのだろうか。アルは実に不思議なやつだ。まぁ便利だからいいけど。
【それでは今日はこの辺で解散ですね。よかったらまた一緒に遊びましょうね】
【はい! 是非ともご一緒させてください! あ、あと……その……】
【ん? 遠慮せずに言ってみてくださいな】
【は、はい! よ、よかったらなんですけど……。い、一緒に依頼をやりませんか!】
フードに隠れた顔が真っ赤になってしまっているレーネさん。
彼女にとっては一世一代の頼みごとなのだろう。
だがランクAとランクFが一緒に依頼をやるのは大丈夫なのか? 考えなくてもランクFのオレの依頼に合わせる事になるし。
【えっと……。でも私のランクはFですよ?】
【はい、それは知っています。でも上のランクの者が下のランクの依頼を受けてはいけないということはないので。
……それに……】
【それに?】
【ワタリさんの実力はランクFとはとても思えません】
レーネさんの顔の赤味が大分引き、真剣な表情でこちらを見ている。
視線を合わせる為にがんばってしゃがんでくれているけど如何せんオレの身長が足りなさ過ぎる。
いやレーネさんがでかすぎるとも言えるけどね。
【ワタリさんが使っていた複数転移は移動距離から考えてもLv1でしょうが、あれだけ連続して使えるというのはランクAでも、専門の人でも少ないくらいです】
【それはこの月陽の首飾りがあるから……】
【それだけではないのは見ていればわかります。それに特殊進化個体討伐協力の際の情報もエリザベートさんから聞いていますので……】
【なるほど。それじゃあそう思うのも仕方ないですね】
【はい。ランクが低いのはまだ登録したばかりだから。でも実力はずっと高いと思います】
【だからランクアップの手伝いをしてくれる、と?】
【実力があるのに勿体無いと思うのも確かです。でも……私は出来ればもっと……その……ワタリさんと仲良く……なりたくて……】
最後の方は尻すぼみにどんどん小さくなっていってしまったけど、そっちの方が本音なのははっきりとわかる。
十数年ぶりに出来た友人なのだ。もっと仲良くなりたい、近づきたいと思うのは当然のことだろう。
久しぶりすぎて距離感を量りかねている感も否めないけど、それは仕方ないだろう。
彼女は冒険者で高ランクで、オレも冒険者。しかも低ランクだ。
教え導くことも可能だろうし、友人の力になりたいという想いもひしひしと伝わってくる。
【わかりました。でも私に付き合って依頼をこなすとなると、お金が全然稼げないと思いますよ?】
【あ、それは平気です。私こう見えても意外とお金持ちなんですよ?】
【あぁそうだよね。特殊進化個体討伐3回してるんだっけ】
【はい! だからそういう心配は必要ありません。だから私にワタリさんのお手伝いをさせてもらえませんか?】
確かにレーネさんが居れば色々と教えてもらえるだろう。
伊達にランクAではないのだ。彼女の立ち居振る舞いや知識は金を払ってでも得るべきものだろう。
だがオレは彼女に隠していることがいっぱいある。戦闘能力なんかもそのうちだ。
一緒に依頼を受けるとなるとその辺を隠し続けるのは難しくなる。
今日1日レーネさんと付き合ってみて彼女は信用できるとは思う。
でもやっぱりまだ1日の付き合いでしかない。確信できるほどではないのだ。
アルはこの世界に来てからずっとの付き合いだし、それ以上にオレが依存してしまっているので信用云々なんてすでに通り越している。
ネーシャは素直で良い子なのはもうわかりきっている。
だからレーネさんもきっと少しの時間をかければ確信できるくらい信用できるだろうと思う。
【えっと、じゃあ毎回ではなく少しずつ一緒にやっていくというのはどうでしょう?】
【はい! もちろんです! ワタリさんのやりやすいようにしてもらって構いません!】
レーネさんもどうやら毎回毎回一緒に、という風には思っていなかったようだ。
あっさりとこちらの案を了承してくれたのでホッと息を吐けた。
ちなみに信用云々の他にも打算的な思惑もあったりする。
このままでは討伐系なんかはエリザベートさんやアルの過保護なまでの妨害により受けることがままならないだろうからだ。実力者のレーネさんが保護者代わりについてきてくれるのなら反対もしづらいはずだ。
そういう打算もあり、レーネさんとはこれからPTを何度も組むつもりなのだ。
とりあえず、試しに明日一緒に依頼を受けるということで今日と同じくらいの時間帯で冒険者ギルドで待ち合わせをして一旦別れることにした。
ちなみにPTはそのままだ。
でもオレには複数転移があるのでそのことを話すと、さすがランクA。転移系のスキルは300m程度離れると巻き込まないということをすぐ教えてくれた。
その300mもPTを組んでいる時にわかるレーダーのような相手との距離を測れる能力によりわかるそうだ。
確かに以前エリザベートさんとPTを組んでネーシャを捜索したときに、範囲外になるとちょっと感じが変わったことは覚えている。
でも大したことでもなかったのでスルーしていた。まさかこういう機能だったとは思わなかったので便利なものだ。
ちなみにさらに離れて3kmくらい距離をあけるとまた感じが変わり、今度は念話が通じなくなるのだそうだ。
PTに効果があるスキルとしては他には、強化系や弱体化系などだがこれらは射程距離が短く、50mも離れると届かないらしい。
もちろん一度かけてしまえば距離を離しても問題ないそうだが。
さっそくレーネさんから色々教えてもらえて非常に勉強になった。
そういってお礼を言うとはにかんだ素敵な笑顔のレーネさんを見ることが出来た。
真っ赤になった焦っている顔ばかり見せていたので、その表情はとても新鮮でほっこりしてしまいこちらも笑顔になってしまう素敵な表情だった。
0
お気に入りに追加
794
あなたにおすすめの小説
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく
めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜
ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました
誠に申し訳ございません。
—————————————————
前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。
名前は山梨 花。
他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。
動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、
転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、
休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。
それは物心ついた時から生涯を終えるまで。
このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。
—————————————————
最後まで読んでくださりありがとうございました!!
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる