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side アル①
しおりを挟む※アル視点
俺はエルドアナの街の冒険者ギルドでギルドマスターをしているアルだ。
数ヶ月前から薬草や魔物の素材を大量に売る人がいると噂になってた。受付嬢に話を聞いてみると、噂の人物は、タイチという名の礼儀正しい十五歳の少年だという。
その少年が明日、Cランク昇格試験を受けることになったという報告が来た。
「魔物の素材も自分で取っているとすると、結構レベル高いのか?」
明日立ち会う昇格試験を受ける少年のことを考えていた。
次の日。朝一で試験を担当するBランク冒険者のイルバと共に訓練場で少年が来るのを待った。
少し待っていると、身長は180cmくらいの、優しそうな雰囲気の少年がやってきた。
「Cランク昇格試験を受けるタイチです。お待たせしてすいません」
「いや、大丈夫だよ。私はギルドマスターのアルだ。よろしく」
「タイチです。よろしくお願いします」
受付嬢から聞いていた通り、礼儀正しい少年のようだ。
それから俺はタイチの試験を担当する冒険者の紹介をし、ルールの説明をした。
説明をし終えると、試験の準備をするようにと二人に促し、二人に木剣を渡した。
二人が訓練場の中央に行き俺に合図をしてくる。準備が整ったようだ。
「はじめ!」
ついに試合が始まった。俺の合図で、イルバが素早い動きでタイチに近づき木剣を振る。だが、それをタイチはいとも簡単に避け、逆にイルバの木剣を弾き飛ばした。そしてイルバの喉元に木剣を突き立てた。
「そこまで!」
俺は驚きで止まっていたが、ふと試験中なのを思い出し終了の合図を出した。
「タイチのCランク昇格試験は合格だ」
「ありがとうございます」
「受付で新しいギルドカードもらってから帰っていいよ」
「わかりました、失礼します」
タイチは訓練場から去っていった。最後まで礼儀の正しい少年だった。
タイチが訓練場を出た後、イルバにタイチの印象を聞いてみた。
「どうだった?」
「あれはだいぶ強いな。俺じゃ勝てないな」
「そんなにか」
どうやらタイチの戦闘レベルはBランク冒険者を遥かに上回っているらしい。
これならすぐにBランク昇格試験を受けに来るだろうからすぐ会えるなと思いながら俺は訓練場を去った。
これからが楽しみな冒険者である。
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