コーヒーに魅せられて

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元カレ

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月日は流れ半年後

最近の彼女は、初めて合ったときよりも表情が明るくなり、よく笑うようになっていた。
だいぶ心を開いてくれているのか、最近は彼女の方からよく話しかけてくれる。

まるで子供が親に、その日の出来事を熱弁すように、無邪気な表情で色んなことを話したり、聞いたりしてくる。

こんなに子供っぽいところがあったのが意外だった。

意外な一面を見せられたとき、人は心を開いてくれたと思い嬉しくなる。

珈月もそうだ、彼女を見ているとなんだか和んでくる。

しかし、今日は少し表情が暗かった。

彼女は席に着くなり悩みを打ち明けた。

「最近元カレから連絡があって、話があるって言うからこの間会ってきたんです。

そしたら、新しい彼女に振られてやっぱりよりを戻したいと言われて、でも私はもう彼の事は過去の人になってたので断ったんですね。

その場ではわかったと言って帰って行ったんですけど、最近職場の前で待ち伏せされてて、またしつこく復縁を迫ってくるんです。

その時の表情が必死というか、なんて言えばいいんだろう。

怖いんですよね。

それが3日に一回位の頻度で起こるんです。

流石に怖くなった私はこれ以上かかわるなら警察を呼ぶと言ったんですよ。

するとピタット来なくなったんですけど、なんとなく着けられているような感じが抜けきらなくて、毎日不安で寝不足なんですよ」

言葉にしてしまって不安がさらに押し寄せたのか彼女は強張っていた。

相当不安を抱えてる様子だ。

「そうですねぇ、ご友人と一緒に帰宅するとかどうですか?
警察は動いてくれないだろうし、今やれることと言えばそれくらいしかおもいつかないですね、あと友人の家に泊まらせてもらうのも安心感をかんじれるんではないでしょうか?」

きっと彼女の求めている完璧な答えではないだろうと思った。

彼女本人も完璧な答えなどわからない、ただほんのわずかでも不安を取り除ければいいのだが。

彼女は俯き浮かない表情で答えた。

「そうですね、友達に相談してみます」

珈月はありきたりなアドバイスしかできない自分に嫌気が指すのと同時に、これ以外方法が無いような気もしていた。
だからといって仕方ないの一言では終わられるのは軽い気がして複雑だった。

カウベルがなり、男性客が入ってきた。

「いらっしゃいませ」

男性は珈月の声を無視し、一目散にこちらへ寄ってきた。

視線は彼女を捉えている。

そして、彼女の肩を掴み無理やり振り向かせようとした。


彼女は恐怖を感じ、完全に動けない様子だ。

「珈音、俺のところへ戻ってきてくれ!
お願いだ!俺にはお前が必要なんだよ!」

彼女はもう、まともに会話できる様子ではなく、震えながらじっと固まっていた。

男はそんな彼女を見て、イライラした様子で彼女の腕を引こうとする。

僕は流石にやばいと思い、カウンターから飛び出し、男の腕を掴んだ。

「彼女からこの手を離していただけませんか?
怯えているでしょう?」

男は僕を睨みつけ怒鳴り散らした。

「お前誰だよ、珈音に関係あんのか?俺達のじゃまをするな!」

男の目は血走っていて理性が働いてなさそうだった。
あまり刺激しすぎるとまずい。
店内に張り詰めた空気が漂う。
「彼女は僕の大切なお客様です、放っておくことはできません。

申し訳ないのですが、他のお客様の迷惑にもなりますし今日はお引き取り願えませんか?」

珈月は男を逆なでしないように優しい口調で言った。

「でっててやるよ!こいつを連れてな!」

男は珈音を引っ張り立たせた。

彼女は嫌だと叫び抵抗するも力負けして引きずられてしまう。

このままでは彼女が危ない、僕で彼を抑え込めそうにないと思い、危険かもしれないが店の扉の鍵を掛け、外に出れないようにした。

それに男は更に怒り、なんのつもりだ!と叫びながら珈月の胸ぐらを掴み、殴りかかってきた。

床に倒れた珈月に馬乗りになり男は更に殴りつける。
珈月は必死に自分を守るが、抵抗できるほどの力はなくされるがままだった。

男は立ち上がり、珈音を引きずりながら入り口へ向かう。

しかし、鍵に手をかけたが体が動かない。
珈月が男の腕を掴み、逃さないようにしがみついた。

「てめぇ!しつこいぞ!」

男は叫びながら珈月を振り払い、また殴りかかろうとした。 

「やめて!」

店内に響き渡る彼女の声で静まり返った。
いつもおしゃれに聴こえるジャスが場違いな雰囲気を作り上げていた。

店の沈黙を破ったのは珈月だった。

「僕のお客様には絶対に手出しはさせません。
あなたが力ずくで彼女を連れ去るなら、僕も全力で彼女を奪い返します。
例えあなたより弱くても」

男はしばらく珈月を睨みつけた後、入り口へと向かっていった。
鍵を開けた途端、警察が入ってきた。
客の誰かが連絡してくれたのだろう。
男は連れて行かれた。

なんとか場は収まったが、彼女の精神状態はよくなさそうだった。

とりあえず椅子に座らせて落ち着くのを待った。

しばらくして、彼女は泣きながらすいませんと謝った。

「気にしないで下さい、お店とお客様を守るのも店主の仕事のうちですから」

珈月は腫れた顔で笑顔で彼女に言った。

後日彼女はお詫びに菓子折りを持ってきてくれた。
一回は断ったのだが彼女も気が収まらないらしく頂くことにした。

彼女は気まずそうに、俯いていた。

僕はいつもと変わらず

「何になさいますか?」

と声をかけた。

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