とある情景 短編集

精神科

>「先生、何故自殺はいけないんですか？」
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>僕はずっと疑問に思ってたことを先生に打ち明けた。
>社会に馴染めず、仕事も続かない。
>そして鬱になり苦しい毎日を送る人生。
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>そんな人生に意味なんてあるのだろうか？
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>みんな言う。
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>死んだら悲しむ人がいるから、他人に迷惑かかるから等。
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>僕の人生は他人の為にあるわけじゃない。
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>自分のためにあるはずなのに何故みんな、他人のために生きるのかわからなかった。
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>そして先生も同じことを言うだろう。
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>「それはね、悲しむ人が居るからだよ」
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>ほら、これだ。
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>僕の求めている答えじゃない。
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>先生は続けた。
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>「少なくとも僕は悲しいよ」
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>と、寂しそうな表情で言う。
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>よくこんな嘘を自然に履けるものだと僕は感心した。
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>患者一人一人の死に悲しんでいたら医者は務まらないだろう。
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>僕はため息をつく。
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>がっかりだ。
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>誰も僕が探している答えを見つけてはくれない、そう思っていた。
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>しかし、続く先生の言葉に僕は納得した。
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>「君が死ぬということは、僕のカウンセリング力が足りないということになる。
>そして僕のカウンセリングの実績が落ちてしまうだろう。
>僕はそれが悲しいね」
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>意外な答え、そして現実的な答えに僕は久しぶりに笑った。
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