グラスーツ

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プロローグ3

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「その後、私は罪悪感に囚われ贖罪というわけではないですが、救える命をたくさん救ってきました、その反面救えない命も沢山見てきました。何故か分かりませんがその眼鏡が見える人が稀にいるんです。
その度に受け取ってくれないかと申し出るのですが皆さん受け取ってくれなくてずっとそこに置かれています。
当然と言えば当然ですよね、そんな不思議なもの持っていても仕方がない、人の命の終わりがわかっていて見過ごすのも辛いですし、かといって助けてあげるほどお人好しでもない。
それが普通だと思います。
それをわかった上であなたにお願いしたいのです。
その眼鏡を受けとって、そして救える命を救っていただけないでしょうか?」

長い話を聞かされたかと思えばいきなり命を救えだと?

俺は困惑して言葉が出ない、そもそも社会に馴染めずうつ病になり、つい最近まで家にこもりっぱなしだった俺に務まるわけがなかった。

けれど、わずかだが、自分にしかできない事だということが自分の居場所が出来たようで嬉しく思う気持ちも湧いていた。

けれどやっぱりうつ病をわずらいながらこんな責任のある事を出来るはずもない。

「すいません、俺にはできません」

すると店主は嫌な顔せずにこりとして言った。

「そうですか、こちらこそ無理を言ってもうしわけありませんでした」

「いえ、力になれず残念です」

俺は気まずい空気に耐えれず店を出ていった。
店になるカウベルの音がどことなく切ない音に聞こえた。

先程の不思議な出来事に意識を持っていかれ、気がつけば家の前の横断歩道まで帰ってきていた。

自分にしか出来ないこと。
もし、自分がしなければ救えたはずの命も亡くなっていくのだろう。

本当にこれで良かったのだろうか?

自分の選択はまちがっていないだろうか?

悩んでいる内に信号が青に変わる、この横断歩道を渡って家に帰ればいつもの生活が待っている。

そしてうつ病を治し、復職して平凡な生活に戻ることができる。

でも、時々思う。

そんな生活をして幸せだろうか?
俺は何十年も働き続けることが嫌で、ふさぎ込み鬱になった。

そして、こんな人生を送り続けるなら死んだほうが良いとも何度も考えた。

きっとこれからも何度も死のうと思うだろう。


死ぬ気になれば、うつ病でも人を救えるかな?

普通に社会に復帰するより、こっちの人生のほうがいいかもしれない、なんなら命を捨てて人を助けれる場面もあるかもしれない。

人を助けて死ねるなら自分が生きてきたことに意味をみいだすこともできる。

けど、本当にいいのか?

俺に務まるのだろうか?

迷っている間に青信号が点滅し始めた。
チカチカを点滅を繰り返す信号機は俺に早く決めろと急かしているように思えた。

務まるかどうかわからない、けどやるだけやってみて駄目ならやめればいいじゃないか。

俺は横断歩道を渡らずに引きかえした。
背後で信号が赤に変わる。

もう引き返すことはできないかもしれない。
けれどやるだけやってみよう。


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