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秘密の影
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総司は朝食を取りながら、ニュースをぼんやりと眺めていた。
震災の被害状況やどういった支援を受けているのかが放送され、それについてコメンテーターや地震の専門家等が今後の展開や、やるべきことを話し合っていたのだが、総司の頭の中は昨夜見た、夢の事で埋め尽くされていた。
葉月といた葉月そっくりの少女、その少女とお見舞いに来てくれていた女性が夢の中では同一人物だった。
葉月からは姉妹が居るとは聞いていなかった。
もしかしたら、記憶を無くした総司に色々と話すのは混乱させるだろうと気を使い、今は話さないだけなのかもしれない。
でも、もし意図的に話さないのだとしたら葉月は一体何を隠しているのだろう?
姉妹について俺に話してはまずいことってなんだろうか?
夢の内容が昔の記憶から取り出された物だとしたら、俺と葉月と少女は小さい頃からの知り合いだということだ。
今の考えが正しかった場合、幼いの時から今まで付き合って来ていて、ましてや片方は妻として側にいる。
それほどまでに強い信頼関係があってもなお言えない事、それはよほどの何かがあるという事だ。
しかし、どんなに考えてみても全く想像がつかなかった。
記憶が無いのだから関係性もよくわからないし、考えようも無かった。
しかし、総司は探究心に駆られ、どうしても真実が気になった。
葉月に直接あの少女について聞いた時、本当に話したくない話題だったら警戒し、余計に話を聞き出せなくなってしまうかもしれない。
だから、あたり触りない内容から聞くべきだと考えた。
その前に夢が本当なのかどうか確認する事からだ。
それともう一つ、先日みつけたカメラ中にヒントが隠されていると期待し、写真を現像をする事にした。
葉月は朝から出かけているので、とりあえず先に写真の現像に取り掛かることにした。
土地感が皆無であった総司はインターネットでカメラ屋を検索した。
幸いにも徒歩圏内に店舗があったので早速カメラを持ち、雨の降る中、家を出た。
------------------------------------------------------
一方葉月は車を走らせていた。
車内にはFMラジオが流れていた。
聞こえてくる内容は何かの番組の質問コーナーだった。
--続いてのお便りは、大阪府在住のペンネーム忙しい暇人さんからのお便りです。
早速読み上げてみましょう--
パーソナリティは低音の聞き取りやすい声で読み上げていく。
--私には姉がいます。先日私の家に姉が押しかけてきました。
姉の足元には、一匹の子犬がちんまりと付き添っていました。
姉は旅行に出かけるから一週間、この子を預かってと言い残し、そのまま帰ってしまいました。
私は犬が大好きなので、そこまでは問題ありません。
問題はここからです。実は私、家族に内緒で彼氏と同棲をしているのですが、その彼氏は動物アレルギーです。
このままでは彼氏は家に入れない状況です。
それに彼氏の実家は東京なので避難場所もありません。
どうしたらいいでしょか?--
葉月は、忙しい暇人に同情した。
自分も今置かれている状況で似ているところがあったからだ。
そして、そのせいで今私は車に乗り、不動産へ向かい、借りていた家を解約しなければならない状況になっている。
総司さんと住んでいる家とは別の家だ。
葉月は今後どうしたらいいのか考え、解決策が見つからず重たいため息を吐いた。
総司さんはいつか記憶を取り戻すだろう。
このまま今の夫婦生活を貫いて、秘蜜を墓場まで持っていくのは無理があると思う。
幸いと言って良いのかわからないが、記憶がもし戻らないならこのまま生活していけばそれでいい。
なんとか、取り戻させない方法は無いだろうか?
しかし、そんな都合のいい話があるはずもなく、葉月はまたため息をついた。
解決策があるとすれば、姉に会うしかない。
「お姉ちゃん、どこにいるのよ」
葉月は不安を背負い、車を走らせる。
震災の被害状況やどういった支援を受けているのかが放送され、それについてコメンテーターや地震の専門家等が今後の展開や、やるべきことを話し合っていたのだが、総司の頭の中は昨夜見た、夢の事で埋め尽くされていた。
葉月といた葉月そっくりの少女、その少女とお見舞いに来てくれていた女性が夢の中では同一人物だった。
葉月からは姉妹が居るとは聞いていなかった。
もしかしたら、記憶を無くした総司に色々と話すのは混乱させるだろうと気を使い、今は話さないだけなのかもしれない。
でも、もし意図的に話さないのだとしたら葉月は一体何を隠しているのだろう?
姉妹について俺に話してはまずいことってなんだろうか?
夢の内容が昔の記憶から取り出された物だとしたら、俺と葉月と少女は小さい頃からの知り合いだということだ。
今の考えが正しかった場合、幼いの時から今まで付き合って来ていて、ましてや片方は妻として側にいる。
それほどまでに強い信頼関係があってもなお言えない事、それはよほどの何かがあるという事だ。
しかし、どんなに考えてみても全く想像がつかなかった。
記憶が無いのだから関係性もよくわからないし、考えようも無かった。
しかし、総司は探究心に駆られ、どうしても真実が気になった。
葉月に直接あの少女について聞いた時、本当に話したくない話題だったら警戒し、余計に話を聞き出せなくなってしまうかもしれない。
だから、あたり触りない内容から聞くべきだと考えた。
その前に夢が本当なのかどうか確認する事からだ。
それともう一つ、先日みつけたカメラ中にヒントが隠されていると期待し、写真を現像をする事にした。
葉月は朝から出かけているので、とりあえず先に写真の現像に取り掛かることにした。
土地感が皆無であった総司はインターネットでカメラ屋を検索した。
幸いにも徒歩圏内に店舗があったので早速カメラを持ち、雨の降る中、家を出た。
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一方葉月は車を走らせていた。
車内にはFMラジオが流れていた。
聞こえてくる内容は何かの番組の質問コーナーだった。
--続いてのお便りは、大阪府在住のペンネーム忙しい暇人さんからのお便りです。
早速読み上げてみましょう--
パーソナリティは低音の聞き取りやすい声で読み上げていく。
--私には姉がいます。先日私の家に姉が押しかけてきました。
姉の足元には、一匹の子犬がちんまりと付き添っていました。
姉は旅行に出かけるから一週間、この子を預かってと言い残し、そのまま帰ってしまいました。
私は犬が大好きなので、そこまでは問題ありません。
問題はここからです。実は私、家族に内緒で彼氏と同棲をしているのですが、その彼氏は動物アレルギーです。
このままでは彼氏は家に入れない状況です。
それに彼氏の実家は東京なので避難場所もありません。
どうしたらいいでしょか?--
葉月は、忙しい暇人に同情した。
自分も今置かれている状況で似ているところがあったからだ。
そして、そのせいで今私は車に乗り、不動産へ向かい、借りていた家を解約しなければならない状況になっている。
総司さんと住んでいる家とは別の家だ。
葉月は今後どうしたらいいのか考え、解決策が見つからず重たいため息を吐いた。
総司さんはいつか記憶を取り戻すだろう。
このまま今の夫婦生活を貫いて、秘蜜を墓場まで持っていくのは無理があると思う。
幸いと言って良いのかわからないが、記憶がもし戻らないならこのまま生活していけばそれでいい。
なんとか、取り戻させない方法は無いだろうか?
しかし、そんな都合のいい話があるはずもなく、葉月はまたため息をついた。
解決策があるとすれば、姉に会うしかない。
「お姉ちゃん、どこにいるのよ」
葉月は不安を背負い、車を走らせる。
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