上 下
71 / 106

サリーの美味しいホットドッグ屋

しおりを挟む
俺は夏の間はビーチで焼きそばを売って生計を立てている。
ここの海は毎年人で溢れ、客足が止まることはまずなかった。
今年も例年通りバカみたいに稼いでやるぜと意気込んでいたが、何故か全く客が来ない。
ビーチ自体には人が沢山いるので、単純にこの店に来ようとする人自体がいなくなったわけだ。
このままでは商売が成り立たなくなる、俺は原因を追求するために一旦店を閉め、辺りを散策することにした。
熱い日差しの中ザクザクとビーチを歩いていると、長蛇の列が出来ている場所を発見した。
「あれか、俺の客を奪っている店は」
サリーの美味しいホットドッグ屋。
店の看板にはそう書いてあった。
太った中年男性が一人で切り盛りしており、大変忙しそうにしていた。
「どれ、俺直々に味をチェックしてやろう」
長蛇の列に並ぶこと一時間、やっと俺の番が回ってきた。
メニュー等は一切書いていない、ホットドッグ一本で勝負しているのだろうか?
「いらっしゃい!ホットドッグ一本250円だよ!」
くそ、そこそこするじゃないか。
ホットドッグなんてパンにソーセージを挟めばいいだけ、原価なんてしれている。
商売人としてそういう所を知っているため、金を払うのが勿体なく感じるが、これも敵の武器を確かめるのために必要な出費だ。
渋々金を払いホットドッグを受け取る。
「ほんとにうまいんだろうな?」
見た目は何の変哲もないホットドッグだ、パンにソーセージが挟まっており、ケチャプとマスタードがかかっているだけ。
見た目がこれほど地味なのにも関わらずこんなにも列ができるのだ、味が相当うまくないとおかしい。
「いただきます」
バクッ
「ッ!!、なんだこれ!?うまい!!うますぎる!!」
思わず声に出てしまうほどこのホットドックは美味しかった。
敵ならが惚れ惚れする味だ。
「なんだ?どうしてこんなに美味いんだ?」
俺の頭に悪い案が浮かぶ。
そうだ、このホットドックの作り方を盗んで、他のビーチで売ってやろう、これで今年の夏も大儲けだ。

深夜2時、昼間はあれほど活気に満ちていたビーチも、人気がなくなり不気味な雰囲気が漂う。
「よし、誰もいない、今がチャンスだ」
早足でホットドッグ屋に向かい、調理場を漁る。
調味料や調理器具をチェックしてみたが、特に変わった所はない、むしろ安物を使っているようだ。
となれば、食材にこだわっているのだろう。
冷蔵庫を開け中を確認する、ソーセージが大量に保存されていた。
味を確認するために一本拝借して、冷凍されている状態ではあるが口にする。
ガブッ
「ッ!!!!」
これだ!!これだけ段違いに美味い!!今までこんなうまい肉食ったことがない!!
「よし、あとはこの肉が何かさえ分かればこっちのもんだ」
店の調理場を入念に調べる。
が、手がかりになりそうなものは何も無い。
「くそ、そう簡単に分かるわけないか...」
半場諦めかけていたその時、ゴミ箱を開けてみると、そこに秘密が隠されてた。
「こ、これは...」
俺は、この店のホットドッグの作り方を、完全に理解した。

ジュージュー
俺は前と違うビーチで焼きそばを焼いている。
「あんなホットドッグ、俺に作れるわけないだろう」
ゴミ箱の中には、大量の犬の首輪が入っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

【一話完結】3分で読める背筋の凍る怖い話

冬一こもる
ホラー
本当に怖いのはありそうな恐怖。日常に潜むあり得る恐怖。 読者の日常に不安の種を植え付けます。 きっといつか不安の花は開く。

ホラー短編集

ショー・ケン
ホラー
ショートショート、掌編等はたくさん書いていますが短編集という形でまとめていなかったのでお試しにまとめてみようと思います。

女子高校生集団で……

望悠
大衆娯楽
何人かの女子高校生のおしっこ我慢したり、おしっこする小説です

処理中です...