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恋人
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この春、とうとう私にも彼氏が出来た。
顔も可愛いわけじゃないし、特別な特技がある訳でもない。
クラスの中で目立っているでもないし浮いている訳でもない。
いわゆる普通、普通道のど真ん中を私は突っ走ってきた。
「こんな無個性な私のどこを気に入ったのだろう?」
教室の窓から夕日に照らされてランニングをしている人たちを見ながら、教室まで迎えに来てくれる彼を待っていた。
「おーい、春夏、何黄昏てんだよ~」
「キャ!びっくりした...いつからそこにいたの?」
彼がにやにやしながら見つめてくる。
「ん~と、5分前くらいからずっと隣にいたぜ?」
「ええ!?5分前!?声掛けてよ~」
普段見せないぼーっとした顔を見られた恥ずかしさで、顔が赤くなる。
「はは、春夏ってばほんと可愛いんだもん、なんか見入っちゃった」
赤くなった顔が、さらに赤くなる。
「か、かか、可愛くなんかないわよ!!こ、こんな特徴のとの字もない顔なんか!!」
「あっ、怒った顔も可愛いなぁ~」
「ッ!!!」
恥ずかしすぎて顔を手で覆い隠す。
「ははは、耳チョー真っ赤」
下校する時、彼はいつも私の手をギュッと握る。
彼の大きな手に握られていると、なんだかとても安心する。
「もう、今度私をからかったら一緒に帰ってあげないんだから」
「ごめんって、あんまりにもからかいがいがあったからさ、ついつい...」
彼が自分の顔の前に手を持ってきてごめんと謝る。
謝る時も、彼は私の手からは手を離さない。
「そういえば柳田、あんたちょっと痩せた?」
よく見てみると、彼の顔が以前よりもシュッとしている、正直いってかなりイケメンだ。
「あぁ、なんてたって俺は春夏の彼氏様だからな、春夏のためにランニングとか筋トレとか、けっこう頑張ってるんだぜ?」
「えっ?私のために?」
「もちろんさ、春夏だって俺がイケメンに越したことはないだろ?第一、前までの俺じゃ春夏の美貌に釣り合わないからな」
自分でイケメンと言うのがなんだか鼻に着くが、彼がそんな努力をしているとは知らなかった。
というか、私を評価しすぎだ。
「なんかさ、私をそこまで思ってくれてることは嬉しいよ、でもさ、ちょっと私を過大評価し過ぎじゃない?私ってあんたが言うほど他の子みたいに可愛くないし、何か特技がある訳でもない、正直いって私の方が柳田と釣り合わないよ...」
しまった、つい余計なことを言ってしまった。
「.......」
なんだか彼の顔を見るのが怖くて、黙り込んでしまう。
「春夏」
名前を呼ばれ、急に抱きしめられる。
「春夏はさ、もっと自分に自信持っていいと思うよ」
「え...?」
「春夏は春夏の個性がちゃんとあるし、自分の考え方もハッキリしている、悩む必要なんてないよ」
「そんな、私の考えることなんて、みんなと比べたら...」
「ほら、他と比べて悩むこと、これはなかなか出来ない素晴らしい考えだよ」
彼が優しく頭を撫でる。
「春夏は悩んで悩んで、自分で成長してさ、すごいと思うよ、はるかのそういう所」
「でも、でもぉ...」
彼の暖かい胸の中でおいおいと泣く。
「第一、俺が選んだ女だぜ、素晴らしいに決まってる」
彼が私に向ける笑顔は、私の全てを包み込み、私の全てを理解してくれていた。
顔も可愛いわけじゃないし、特別な特技がある訳でもない。
クラスの中で目立っているでもないし浮いている訳でもない。
いわゆる普通、普通道のど真ん中を私は突っ走ってきた。
「こんな無個性な私のどこを気に入ったのだろう?」
教室の窓から夕日に照らされてランニングをしている人たちを見ながら、教室まで迎えに来てくれる彼を待っていた。
「おーい、春夏、何黄昏てんだよ~」
「キャ!びっくりした...いつからそこにいたの?」
彼がにやにやしながら見つめてくる。
「ん~と、5分前くらいからずっと隣にいたぜ?」
「ええ!?5分前!?声掛けてよ~」
普段見せないぼーっとした顔を見られた恥ずかしさで、顔が赤くなる。
「はは、春夏ってばほんと可愛いんだもん、なんか見入っちゃった」
赤くなった顔が、さらに赤くなる。
「か、かか、可愛くなんかないわよ!!こ、こんな特徴のとの字もない顔なんか!!」
「あっ、怒った顔も可愛いなぁ~」
「ッ!!!」
恥ずかしすぎて顔を手で覆い隠す。
「ははは、耳チョー真っ赤」
下校する時、彼はいつも私の手をギュッと握る。
彼の大きな手に握られていると、なんだかとても安心する。
「もう、今度私をからかったら一緒に帰ってあげないんだから」
「ごめんって、あんまりにもからかいがいがあったからさ、ついつい...」
彼が自分の顔の前に手を持ってきてごめんと謝る。
謝る時も、彼は私の手からは手を離さない。
「そういえば柳田、あんたちょっと痩せた?」
よく見てみると、彼の顔が以前よりもシュッとしている、正直いってかなりイケメンだ。
「あぁ、なんてたって俺は春夏の彼氏様だからな、春夏のためにランニングとか筋トレとか、けっこう頑張ってるんだぜ?」
「えっ?私のために?」
「もちろんさ、春夏だって俺がイケメンに越したことはないだろ?第一、前までの俺じゃ春夏の美貌に釣り合わないからな」
自分でイケメンと言うのがなんだか鼻に着くが、彼がそんな努力をしているとは知らなかった。
というか、私を評価しすぎだ。
「なんかさ、私をそこまで思ってくれてることは嬉しいよ、でもさ、ちょっと私を過大評価し過ぎじゃない?私ってあんたが言うほど他の子みたいに可愛くないし、何か特技がある訳でもない、正直いって私の方が柳田と釣り合わないよ...」
しまった、つい余計なことを言ってしまった。
「.......」
なんだか彼の顔を見るのが怖くて、黙り込んでしまう。
「春夏」
名前を呼ばれ、急に抱きしめられる。
「春夏はさ、もっと自分に自信持っていいと思うよ」
「え...?」
「春夏は春夏の個性がちゃんとあるし、自分の考え方もハッキリしている、悩む必要なんてないよ」
「そんな、私の考えることなんて、みんなと比べたら...」
「ほら、他と比べて悩むこと、これはなかなか出来ない素晴らしい考えだよ」
彼が優しく頭を撫でる。
「春夏は悩んで悩んで、自分で成長してさ、すごいと思うよ、はるかのそういう所」
「でも、でもぉ...」
彼の暖かい胸の中でおいおいと泣く。
「第一、俺が選んだ女だぜ、素晴らしいに決まってる」
彼が私に向ける笑顔は、私の全てを包み込み、私の全てを理解してくれていた。
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