3分で読めるショート短編集

フェイスデザイナー

整形が保険適応内となり、髪型を変える感覚とおなじ感覚で顔を変えられるようになった。
これは社会に大きな変化をもたらし、美に対する意識も大きく変わっていった。
まずモデルという仕事は失われていき、美を作り出すデザイナーの需要が高まっていった。それもただのデザイナーでは無い、美しい顔を作るフェイスデザイナーと呼ばれる、新しいデザイナーが生まれた。
今ではフェイスデザイナー専門の学校も沢山あり、ひとつの文化として根ずいた。変わったのは仕事だけではない。顔つきによる差別が一切なくなり、それにより世界が平和になった。
顔の美しさというのは、私たちが思っていたよりも対人関係において重要だったようである。今では整形が当たり前ではなかった時代が考えられない、顔が美しいに越したことは無いし、メリットしかないではないか。
美を追求することを咎めることはとてもナンセンスでおこがましいことである。美を求めることは、食物連鎖という動物的な呪縛から解き放たれた人間にしかできない遂行な行為、思想である。

私も将来は美を追求し、人に幸せを与えるフェイスデザイナーになることを夢に見ている。私の考えた美しい顔で、美しい笑顔を浮かべる人のことを考えると、私の美しい顔から思わず笑みがこぼれてしまうのだ。