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彼女は全てを持っていった
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混乱しているセレンを置いて、会場はどんどんディアナとクリスの雰囲気に飲まれていく。
一瞬でも他国の王子に見初められるパターンか?と思った自分が恥ずかしい。
リーナにチラリと視線を向ければ彼女もそう思ったのだろう。
今は死んだ魚のような目になっている。
わかる…わかるわ!
だってあの男、妹しか気にしてない─確実にシスコンだわ!
敵ながら意見が一致した瞬間だった。
「あ…「父上」」
口を開こうとしたセレンを遮りアルベルトが真剣な眼差しを国王である父親に向ける。
「何だ?」
「私の立太子の件、保留でお願いします」
「「「なっ」」」
これには会場にいる者たちが驚愕する。
「ほう?」
それに動揺することなく国王は面白そうな顔を息子に向け、片眉を上げて先を促す。
「今回の件、私の軽率な行動が原因です。王太子となる前に、一人の王族として民に示しがつくようにならねば…どうか挽回のチャンスを」
勝手なこといってるけど、廃嫡になるとは考えなかったのかしら?
何だか格好つけてるけどチラチラとディアナ嬢に視線を送ってたら意味ないわよ?
何のアピールなの?
「父上、私も!」
「「「わ…私も!」」」
リーナ側にいた攻略対象たちも自身の親に向かって口々に訴えだした。
「「「私たちも一から教育しなおさせてください!」」」
教育って…卒業式でいうこと?
だから何のアピールなの?
あぁ…ディアナ嬢ね
最早は呆れなどとうに通り越している。
当のディアナはその視線に気づいていないようで、兄にベッタリ─いやあれは兄がベッタリしている。
「それでディ?他国の男はどうだった?」
その質問に会場内の男どもが反応する。
おいおい… もうやだこの世界。
「え?えっと…」
言葉につまる彼女の言葉に何を期待しているのか、姿勢を正したり、咳払いをしたりと攻略対象たちも忙しい。
いやいや絶対ないわよ貴方たち?
今の彼らにはリーナなど頭にないのだろう。もちろんセレナのことも。
彼女、必死に跳び跳ねたりしてアピールしているけど…無視されている。ふっ。
あっ…ついには袖を引っ張ってアピ──振り払われた。何か…うん…憐れだわ。
「それで?」
クリスの先を促す優しい声にモジモジしながらも、ディアナは「ありえませんわ!」と満面の笑みで答える。
!!!
「だって婚約者がいるのに他の女性とだなんて…お兄様だったらそんなことしないでしょう?」
「そうだね」
「それにか弱い女性相手に暴力だなんて…お兄様ならそんなこと…」
「……そうだね」
……あっこれ手は出さないけど、ネチネチ口で攻撃するタイプだ。セレンは、クリスの返事までの絶妙な間でそれを察する。
しかも今の質問って確実にここにいる皆への牽制を込めてましたよね?
それにしても…なぜ自分たちが選ばれると思ったのかしら?
両手をついて項垂れる男どもに最早はため息を隠す気もおきない。
「ふっ…ふはははは」
突如笑いだした国王に会場内の視線が一気に集まる。
「アルベルト、とりあえずお前は北の砦で一からやり直しだ。あとそこにいるお前たちも…いいな?」
最後の問いはそれぞれの家族に向けられる。
それに対し各当主らは、頭を下げて是の意志を表す。
「この国の公爵令嬢である彼女に冤罪をかけたんだ。まぁ学園内のことは生徒たちで解決させるから手出し不要となっているとはいえ、流石にやりすぎだ。そこから這い上がるかはお前たち自身の努力次第だな」
「「「はいっ!」」」
・
・
・
え…何このいい感じにまとまりましたみたいな流れ。
結局私は?えっ?
被害者であるセレンの家は、加害者側に兄がいたこともあり、王の言葉に不満をいうこともない。
こちらも兄の再教育に意識が向いている。
リーナに視線を向ければ彼女も呆然と立ち尽くしている。
今や彼女の周りには誰もいな─いや子爵が飛んできて激昂してる。
そうよね…そもそも彼女が逆ハーなんて望んだからだし。
怒られる姿をみてざまぁと思わないでもないけれど、何か違うと思うのは私だけ?
結局断罪阻止したのは私じゃなくてディアナ嬢だし、リーナの自作自演を暴いたの…も彼女だわ。
アルベルトたちを断罪したのは…クリス様ね。
追放にもならなかったみたいだし、私がこれまで準備してきたものは全て無駄になったってことよね?
なんだろ…モヤモヤする。
確かに助けて貰ったから、それに対してはありがとうというべき…べきなんだけど、えっ…と納得出来ないのは私の問題?違うよね?
私のこれまでの心労は?
そう簡単に解決されてたまりますかーーーーっ!
なんてことが言えるはずもなく、不完全燃焼のままセレンの断罪劇は幕を閉じた。
余談だが、彼女に全てを持ってかれた者同士、リーナとは何だかんだで腐れ縁が続いている。
(完)
思いつきで書きたかったので、勢いで書いてます。
一瞬でも他国の王子に見初められるパターンか?と思った自分が恥ずかしい。
リーナにチラリと視線を向ければ彼女もそう思ったのだろう。
今は死んだ魚のような目になっている。
わかる…わかるわ!
だってあの男、妹しか気にしてない─確実にシスコンだわ!
敵ながら意見が一致した瞬間だった。
「あ…「父上」」
口を開こうとしたセレンを遮りアルベルトが真剣な眼差しを国王である父親に向ける。
「何だ?」
「私の立太子の件、保留でお願いします」
「「「なっ」」」
これには会場にいる者たちが驚愕する。
「ほう?」
それに動揺することなく国王は面白そうな顔を息子に向け、片眉を上げて先を促す。
「今回の件、私の軽率な行動が原因です。王太子となる前に、一人の王族として民に示しがつくようにならねば…どうか挽回のチャンスを」
勝手なこといってるけど、廃嫡になるとは考えなかったのかしら?
何だか格好つけてるけどチラチラとディアナ嬢に視線を送ってたら意味ないわよ?
何のアピールなの?
「父上、私も!」
「「「わ…私も!」」」
リーナ側にいた攻略対象たちも自身の親に向かって口々に訴えだした。
「「「私たちも一から教育しなおさせてください!」」」
教育って…卒業式でいうこと?
だから何のアピールなの?
あぁ…ディアナ嬢ね
最早は呆れなどとうに通り越している。
当のディアナはその視線に気づいていないようで、兄にベッタリ─いやあれは兄がベッタリしている。
「それでディ?他国の男はどうだった?」
その質問に会場内の男どもが反応する。
おいおい… もうやだこの世界。
「え?えっと…」
言葉につまる彼女の言葉に何を期待しているのか、姿勢を正したり、咳払いをしたりと攻略対象たちも忙しい。
いやいや絶対ないわよ貴方たち?
今の彼らにはリーナなど頭にないのだろう。もちろんセレナのことも。
彼女、必死に跳び跳ねたりしてアピールしているけど…無視されている。ふっ。
あっ…ついには袖を引っ張ってアピ──振り払われた。何か…うん…憐れだわ。
「それで?」
クリスの先を促す優しい声にモジモジしながらも、ディアナは「ありえませんわ!」と満面の笑みで答える。
!!!
「だって婚約者がいるのに他の女性とだなんて…お兄様だったらそんなことしないでしょう?」
「そうだね」
「それにか弱い女性相手に暴力だなんて…お兄様ならそんなこと…」
「……そうだね」
……あっこれ手は出さないけど、ネチネチ口で攻撃するタイプだ。セレンは、クリスの返事までの絶妙な間でそれを察する。
しかも今の質問って確実にここにいる皆への牽制を込めてましたよね?
それにしても…なぜ自分たちが選ばれると思ったのかしら?
両手をついて項垂れる男どもに最早はため息を隠す気もおきない。
「ふっ…ふはははは」
突如笑いだした国王に会場内の視線が一気に集まる。
「アルベルト、とりあえずお前は北の砦で一からやり直しだ。あとそこにいるお前たちも…いいな?」
最後の問いはそれぞれの家族に向けられる。
それに対し各当主らは、頭を下げて是の意志を表す。
「この国の公爵令嬢である彼女に冤罪をかけたんだ。まぁ学園内のことは生徒たちで解決させるから手出し不要となっているとはいえ、流石にやりすぎだ。そこから這い上がるかはお前たち自身の努力次第だな」
「「「はいっ!」」」
・
・
・
え…何このいい感じにまとまりましたみたいな流れ。
結局私は?えっ?
被害者であるセレンの家は、加害者側に兄がいたこともあり、王の言葉に不満をいうこともない。
こちらも兄の再教育に意識が向いている。
リーナに視線を向ければ彼女も呆然と立ち尽くしている。
今や彼女の周りには誰もいな─いや子爵が飛んできて激昂してる。
そうよね…そもそも彼女が逆ハーなんて望んだからだし。
怒られる姿をみてざまぁと思わないでもないけれど、何か違うと思うのは私だけ?
結局断罪阻止したのは私じゃなくてディアナ嬢だし、リーナの自作自演を暴いたの…も彼女だわ。
アルベルトたちを断罪したのは…クリス様ね。
追放にもならなかったみたいだし、私がこれまで準備してきたものは全て無駄になったってことよね?
なんだろ…モヤモヤする。
確かに助けて貰ったから、それに対してはありがとうというべき…べきなんだけど、えっ…と納得出来ないのは私の問題?違うよね?
私のこれまでの心労は?
そう簡単に解決されてたまりますかーーーーっ!
なんてことが言えるはずもなく、不完全燃焼のままセレンの断罪劇は幕を閉じた。
余談だが、彼女に全てを持ってかれた者同士、リーナとは何だかんだで腐れ縁が続いている。
(完)
思いつきで書きたかったので、勢いで書いてます。
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