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第一章
#1
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◇
それが十五歳の時。藤井は何度かに分けて細かく説明をした。十八歳になるまでに人間から吸血しないと灰になって消滅すること、人間からの吸血で完全な変化をすること。完全な変化の前は光や音に敏感になり、完全な変化をすれば受け取る刺激はコントロールできるようになる。そして変化した歳のまま老けなくなる。稀に吸血鬼の能力を手に入れることもあるそうだ。魅了や催眠、記憶操作などの能力。
ところが青木は血液に嫌悪感があり動物のものですら飲むことはできなかった。飲もうとしても吐いてしまうのだ。
「俺このまま灰になりそう」
「パートナー作れたらな、違うんだけどな」
パートナーとは定期的に血を吸わせてくれる人間のこと。藤井は山吹というパートナーがいる。まだ青木は会ったことはないが、藤井からの惚気でよく知っている人物だ。
「山吹……リヒト君だっけ? 年下なんだろ?」
「ああ、俺今高三だから……リヒトは高二」
何度も同じような年齢を繰り返しながら暮らしているせいで時々今の年齢設定がわからなくなるらしいが、わざとらしい間が鬱陶しい。
「彼はシュンのこと、その、好きなんだろ?」
「まぁ。でも恋人にはならないよ。色々と面倒なこともあるんだよ」
少し悲しそうな顔をした後乾いた声で笑ってみせた。
「お前も好きな人がいたらなぁ」
「い、いたらなんなんだよ」
変に吃ってしまったせいで、いるのか? という疑いの眼差しを向けられたが、気づかないふりをする。
「好意のある相手はいい匂いで美味しいから、青木も飲めるかなーと思ってさ」
藤井は言葉の終わりによく飲んでいるプルーンのジュースの紙パックをゴミ箱に放り投げた。ありえない距離なのに見事ゴールする。
「なんだよ、急に黙って」
藤井に話しかけられているが青木は上の空。そんな青木の脳内では幼馴染の緋山でいっぱいだった。そういえばあいつ何してんだろ……と青木は心の中で問いかけた。
「……思い当たるやつ、いるんだろ? 最近会ってないなら会ってみればいい」
「まあ、機会があればな」
機会なんていくらでもある。緋山は同い年でさらには同じ高校だ。緋山とはいつの間にか疎遠になってしまった。原因もよくわからない。
◇
そんな話をしたからか、珍しく緋山のクラスとの合同授業があり、青木はやたらと緊張していた。
バスケをしている時、敵チームの緋山とぶつかってしまい、青木は押し倒されるような形になった。
「ごめん青木、大丈夫?」
体勢を起こして手を差し伸べてくれた緋山の香りに異様に反応してしまった。なんだこれ。
「だ、いじょぶ」
手を掴んで立ち上がると視界が揺れるほどの動悸に襲われた。
「はぁ……はぁ……やば、何これ」
「あ、青木⁉︎ 頭打った⁉︎ 大丈夫⁉︎」
「く……んな」
やばい。緋山の匂い……美味しそう。あぁ、美味しそう美味しそう。
このままだと襲ってしまいそうだ。体育館から飛び出して、教室の自分の鞄を漁る。シュンからもらっていたはずの抑制剤がない。
「青木! 顔色悪い……大丈夫?」
早く離れないと。汗ばんだ首にしか目がいかない。
「はぁ、大丈夫。水……買ってきて………」
遠ざけないと。早く。やばい。やばいやばい。美味しそう美味しそう美味しそう。食べたい食べたい食べたい食べたい。
「で、でも」
「はやく‼︎」
声を荒げた俺に体を震わせながら驚いて、すぐ帰ってくるからと走っていった。
この間に早くシュンに助けを。でもこんな状態じゃ戻れない。
「おい、気をつけろよ」
「……っは、シュン」
それが十五歳の時。藤井は何度かに分けて細かく説明をした。十八歳になるまでに人間から吸血しないと灰になって消滅すること、人間からの吸血で完全な変化をすること。完全な変化の前は光や音に敏感になり、完全な変化をすれば受け取る刺激はコントロールできるようになる。そして変化した歳のまま老けなくなる。稀に吸血鬼の能力を手に入れることもあるそうだ。魅了や催眠、記憶操作などの能力。
ところが青木は血液に嫌悪感があり動物のものですら飲むことはできなかった。飲もうとしても吐いてしまうのだ。
「俺このまま灰になりそう」
「パートナー作れたらな、違うんだけどな」
パートナーとは定期的に血を吸わせてくれる人間のこと。藤井は山吹というパートナーがいる。まだ青木は会ったことはないが、藤井からの惚気でよく知っている人物だ。
「山吹……リヒト君だっけ? 年下なんだろ?」
「ああ、俺今高三だから……リヒトは高二」
何度も同じような年齢を繰り返しながら暮らしているせいで時々今の年齢設定がわからなくなるらしいが、わざとらしい間が鬱陶しい。
「彼はシュンのこと、その、好きなんだろ?」
「まぁ。でも恋人にはならないよ。色々と面倒なこともあるんだよ」
少し悲しそうな顔をした後乾いた声で笑ってみせた。
「お前も好きな人がいたらなぁ」
「い、いたらなんなんだよ」
変に吃ってしまったせいで、いるのか? という疑いの眼差しを向けられたが、気づかないふりをする。
「好意のある相手はいい匂いで美味しいから、青木も飲めるかなーと思ってさ」
藤井は言葉の終わりによく飲んでいるプルーンのジュースの紙パックをゴミ箱に放り投げた。ありえない距離なのに見事ゴールする。
「なんだよ、急に黙って」
藤井に話しかけられているが青木は上の空。そんな青木の脳内では幼馴染の緋山でいっぱいだった。そういえばあいつ何してんだろ……と青木は心の中で問いかけた。
「……思い当たるやつ、いるんだろ? 最近会ってないなら会ってみればいい」
「まあ、機会があればな」
機会なんていくらでもある。緋山は同い年でさらには同じ高校だ。緋山とはいつの間にか疎遠になってしまった。原因もよくわからない。
◇
そんな話をしたからか、珍しく緋山のクラスとの合同授業があり、青木はやたらと緊張していた。
バスケをしている時、敵チームの緋山とぶつかってしまい、青木は押し倒されるような形になった。
「ごめん青木、大丈夫?」
体勢を起こして手を差し伸べてくれた緋山の香りに異様に反応してしまった。なんだこれ。
「だ、いじょぶ」
手を掴んで立ち上がると視界が揺れるほどの動悸に襲われた。
「はぁ……はぁ……やば、何これ」
「あ、青木⁉︎ 頭打った⁉︎ 大丈夫⁉︎」
「く……んな」
やばい。緋山の匂い……美味しそう。あぁ、美味しそう美味しそう。
このままだと襲ってしまいそうだ。体育館から飛び出して、教室の自分の鞄を漁る。シュンからもらっていたはずの抑制剤がない。
「青木! 顔色悪い……大丈夫?」
早く離れないと。汗ばんだ首にしか目がいかない。
「はぁ、大丈夫。水……買ってきて………」
遠ざけないと。早く。やばい。やばいやばい。美味しそう美味しそう美味しそう。食べたい食べたい食べたい食べたい。
「で、でも」
「はやく‼︎」
声を荒げた俺に体を震わせながら驚いて、すぐ帰ってくるからと走っていった。
この間に早くシュンに助けを。でもこんな状態じゃ戻れない。
「おい、気をつけろよ」
「……っは、シュン」
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