甘夢の旅人

霧氷

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ユメの目覚め

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「・・・ん?」


ユメは目を開けると、そこは靄の中だった。


辺りには何もなく、足元も見えない。


ユメは、その場所に見覚えがあった。


「・・・また、ここ・・・?」


以前にも見たことのある靄の世界は、前に来た時と同じで、何も分からない。


「どうしよう・・・。」


ユメはぐるりと一周辺りを見回すが、相変わらず何もない。


「・・・・・・。」


上ばかり見ていたユメは気付かなかった。


足元に迫る黒い影に。


 〝ズルッ″


「?!ギャァッ!?」


 〝ドンッ″


何かに足を掴まれ、ユメは転倒した。


「あっ!?」


僅かに上げた足には、見覚えのある黒い帯が足に絡みついていた。



ユメは、気味が悪く、



「イヤッ!?」


黒い帯を振り解こうと足を振り上げる。


「うぅ・・・嫌だっ!イヤッ!!」


しかし、動かせば動かすほど、帯は足に絡みつく。


「・・・ん?!」


両の足が動けない程、黒い帯が絡みついた時、ユメの視界の先に、淡く光る物が飛んでいた。


「あっ!?」


光の正体は、蝶だった。


その蝶にも見覚えがあった。


「くっ・・・っ・・・。」


ユメは、飛ぶ蝶に手を伸ばす。


理由は分からないが、伸ばさずにはいられなかった。


「・・・つっ!」


触れた瞬間、蝶は眩い光を放ち、辺りを包み込んだ。


光を浴びた黒い帯は、音を立てて千切れていく。


「あっ・・・。」


光は強さを増すと、ユメは眩しさに目を伏せた。



視界が真っ暗になったのと同時に、浮遊感を覚える。


それでも、目を開けることはしなかった。







「ん・・・。」


身体が何かに包まれているのを感じ、意識が浮上する。


「・・・むん・・・ん?」


朧げな視界の中、目を開くと、子ども達の顔が飛び込んできた。


「起きたっ!」


「ユメお姉ちゃんっ!!」


「ユメ姉ちゃんっ!!」


目覚めたユメを見て、子ども達は一斉に声をあげる。


「・・・み、皆・・・。」


ユメはベットの傍にいる子ども達を見て、ゆっくりと起き上がった。


「まだ、寝てなきゃダメっ!」


メリーがユメを寝かせようとする。



「大丈夫だよ・・・ん?ヘレーネ?」


三人の後ろで、下を向いているヘレーネに気づいたユメは、呼んだ。


「・・・なさい・・・。」


「えっ?」


「ごめんなさい・・・ごめん、なさい・・・。」



顔を上げたヘレーネは、瞳に涙を溜め、ユメに謝る。


「ど、どうしたの?」


「・・・わたし、のせいで・・・私が、ハンカチ・・・とばされ、たから・・・ユメ、おねえちゃん・・・うぅ・・・。」


ヘレーネの瞳からボロボロと涙が流れる。


「ヘレーネ。」


ユメは、ベットから起き上がり、床に膝をついて、ヘレーネを抱きしめた。


「・・・ユメお姉ちゃん?」


抱きしめられて、ヘレーネの涙が止まる。


「ヘレーネのせいじゃないよ。ハンカチが飛んだは風の悪戯。」


ヘレーネの背を撫でながら、ユメ言う。


「・・・ユメお姉ちゃん、ハンカチ見つけてくれてありがとう・・・。」


「うん・・・。」


「本当に、ありがとう・・・。」


「うん。」


ポンポンと背中を軽く叩きながら、ヘレーネの言葉に頷く。


「・・・ユメお姉ちゃん、どこも痛くない?」


顔を上げたヘレーネが不安そうに尋ねる。


「痛くないよ。むしろ・・・。」


 〝グゥ~″ 


ユメのお腹が悲鳴をあげた。


「・・・プッ。」


「くっ、アハハハハッ!!」


「ウフフフ・・・。」


「アハッ・・・。」


お腹の悲鳴に皆、笑い出した。


「さっすが、ユメ姉ちゃんっ!」


「やる~!」


「エへへ・・・。」


「お腹が空くってことは、ユメお姉ちゃん元気ってことよね。」


「うんうん。」


子ども達は漸く笑顔になった。


ユメの顔を覗いていた不安そうな顔はどこにも無い。


「・・・フフ。」


子ども達の笑った顔を見て、ユメも顔が綻んだ。





「・・・・・・。」


部屋の前には、人影があった。


ソニアだ。


廊下まで響く、子ども達の声を聴いて、


「・・・ふぅ~・・・。」


ソニアは、壁に寄りかかり背中を滑らせながら、床に座り込み、息をついた。



手で顔を覆いながら、


「・・・良かった・・・。」


と、掠れるようなか細い声で言ったのだった。






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