甘夢の旅人

霧氷

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遭遇

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 夜の帳が下りたのは一か所だけでは無い。



プティ―ト・マルグリトから東に少し離れた田舎町とて同じだ。


しかし、夜の賑わいを見せていると言えなかった。


「きゃぁぁっ!?」


「逃げろぉっ!!」


「うわぁぁっ!!」


人々は慌てふためき逃げ回っているのだ。


暗がりで、はっきりと姿は見えないが、空を飛び交う得体の知れないものから。


「チッ。遅かったか・・・。」


マーシーは、街の通用門に降り立ったが、時既に遅かった。


「ま、魔物だぁっっ!!」


そう叫んだ男の背に、ビール瓶程の黒い物体が乗った。


「うがぁぁぁっ・・・あぁ・・・。」


男は、悲鳴を上げると、身体の力が無くなり、顔から砂野台地にダイブした。


男と背に止まる魔物の間に、ぼんやりとした青白い光が見える。



それは、その男だけでは無かった。


見れば、倒れた人の上に、黒い魔物が乗り青白い光を吸っていた。



「ったく、好き勝手やりやがって・・・。」


マーシーは、懐から銃を出し構え、


「フレイムリーフ。」


静かに言うと、銃から葉っぱの形をした炎を帯びた弾が連射され、黒い魔物を包み込んだ。



「ぐあぁぁっ!!」


魔物達は苦しがり、火だるまになって空を転がる。


マーシーは、銃の転送部分を回し、止まった瞬間、


「ボム。」


 〝ドガァァン″


火だるまとなった魔物が、爆発した。



 〝バーンッ″


 〝ドカーンッ″


一つ起きれば、それは連鎖反応の様にして、あちらこちらで爆発音が聞こえる。



しかし不思議なことに、あれだけ火が出ているにも関わらず、街の家々に燃え移ることは無かった。



「ん?」


魔物達は、向きを変え、一か所に集まりだした。


「合体する気か?」


集まった魔物は、一体のの大きな魔物となって、マーシーに襲い掛かったが、マーシーは冷静だった。


「サンドゼピュロスッ!」


叫ぶと、風が吹き、銃からは手持ち花火のような火花を纏った砂粒が吹き出した。


 〝ボワッジジジッ”


風は魔物を包み込み、幾銭という砂粒は集まっていた魔物達を弾き飛ばした。


風が千切れた時、もうそこに巨大な魔物はおらず、小物達が大量に落ちていった。






「キリがネェな・・・!?」


どれだけ燃やしても、風で弱らせても、魔物達は次から次へと湧いて出てくる。


「吸い取るしか能がねぇ奴らでも、こう多いとな・・・。」


マーシーは、流れて来た汗を拭う。


「・・・!?」


マーシーの後ろから、光の玉が飛んで来た。


玉は、マーシーの横を通り過ぎ、


「グギャギャァァァッ!!」


飛行していた魔物に当たった。


「!?」


当たった魔物は、悲鳴を上げ、徐々に光の中で、その個体を削られ、やがて、塵となって消えた。


「・・・マジか・・・っ?!」


マーシーは驚いたが、すぐ後ろに第二の玉が飛んできたのを見て、屋根に飛び移った。




屋根から下を見ると、玉の飛んできた方向には、髪の長い、二丁拳銃を持ったガンマンのシルエットが見えた。


「(髪の長いガンマン・・・まさか・・・いや、だが・・・。)」


ガンマンは、右手に持っていた銃を、空に向けると、


「プラズマライトッ!」


と、よく通る声で叫んだ。


 〝バンッ″


銃から電撃をおびた玉が飛び出した。


ある所まで飛ぶと、


 〝パーンッ″


花火が弾け飛んだように、小さな玉となり、魔物達の上に降り注いだ。


 〝ジーンッ″


玉が魔物達に触れると、その動きは、氷漬けにされた時の様に静止する。


「・・・・・・。」


マーシーは、静かに見ていた。



次にガンマンは、左手を地面に向け、


「アーシースペード。」


と静かに言うと、砂地に向かって銃を放った。



「な、何をやってんだ?」


マーシーは驚き、屋根から降りようとするが、すぐに足が止まった。



 〝ズズッズシャァァァ″



地鳴りが起き、砂地から六角形尖った物体が飛び出し、静止していた魔物達を玉ごと貫いた。


玉は、シャボン玉が弾けるように、中の魔物事、塵となって風に吹かれていった。



「す、スゲェ・・・。」


マーシーは、もう感心するしか無かった。


「・・・・・・。」


ガンマンは銃をしまい、マントを翻して去ろうとする。


「お~い、あんたぁ~!!」


マーシーは呼び止めた。しかし、



 〝バァーン″



「うっ!?」


振り向きざまにガンマンに発砲され、風圧に押されたマーシーは、屋根に背を預けることになってしまった。


「・・・おいっ!」


慌てて起き上がってみたが、もうどこにもガンマンの姿は無かった。


「・・・っ!?」


皮膚が切れて、熱くなるのを感じる。


弾が頬を掠め、マーシーの皮膚を傷つけたのだ。



「やるぅ・・・。」


ニヤリと笑ったマーシーは、血が流れる頬を拭い、その舌で己の血を舐めとった。


「ザスカロス以上かもな、あのガンマン・・・。」


もう見えないガンマンの姿を暗がりで、マーシーは追った。







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