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寸志の快感 18
しおりを挟む──がごん、と大きな音がした。
驚いた敬吾が顔を上げると、逸が肩を上下させて大きく呼吸をし、座っているのにまるで仁王立ちでもしているようだった。
「……いち?」
「………………」
ふう、と大きく呼吸を逃し、背中に回っていた腕をゆっくり前に持ってくると数回手首を振った。
その左肘が赤くなっている。
力任せに腕を引き抜いたせいでどこかにぶつけたらしい。
「──え」
そう、腕が、自由になっている。
「ちょ、ちょっ──」
「──けーごさん」
「ちょっ、待っ────」
「敬吾さん──」
──嫌だ。
敬吾の背中が冷える。
タオルが解けてしまった、なら視界もすぐに開かれてしまう。
嫌だ、見られたくない、こんな、こんな──
「やだっ……」
「ーー敬吾さん」
駄々っ子のような敬吾の声は聞こえていなかっただろう。
ほとんど同時に、重たい声で敬吾を呼ぶと、逸は熊のようにずしりと伸し掛かった。
そのまま押し倒してしまうと、敬吾の右肩と腕はベッドから落ちる。
それには気づかないまま、文字通り解き放たれた獣さながらの逸は敬吾の首にかぶり付き、鎖骨へ、胸へと舌を這わせた。
やはり見えているのだ、こんなはしたなくて浅ましい姿を晒したくはなかった──と敬吾が眉を下げて逸の頭を見る、が、その頭には間違いなくバンデージが巻かれたままだった。
「……へ? んッ、」
その間滞り無く敬吾の乳首を探り当て含んだ逸は、敬吾の動揺にほとんど気づいていなかった。
それよりも敬吾に触れたい。
思慕と本能の赴くまま、首、胸、腹と撫で下ろして足を開かせ、腰を捉えて深く穿ち、体を沈めた。
そうしてまた鎖骨に痕を残し、胸の先に吸い付く。
なぜこんなにも迷いなく──
敬吾がそこまで考えた時、逸の腰が熱く、激しく往復を始める。
「あっ……!!」
まさに欲しかった強さ、速さの快感の波に、つい今まで頭を占領していた疑問は消え去った。
ただその快楽を享受し、鳴くことしかできない。
ただ、ただ気持ちが良い。この刺すような快感に塗れていたい。
「っあ、敬吾さん、ごめん……なさ」
やっと手に入れた自由と快感は刺激が強く、一度射精しているというのに逸の限界は近かった。
もう保たないそう思って無意識に謝罪するが、それとほぼ同時に、敬吾は理性を手放し、滑らかに昇り詰めていた。
その声、感触、肌の温度と濡れ方で、逸にとっては火を見るより明らか。文字通り手に取るようだった。
そして何よりその内部の締め付け、うねり、蕩けるような収縮が。敬吾の快感の激しさのせいなのか、目が利かないせいで敏感になっているのか、いつも以上にいやらしく蠱惑的でとても堪えられるものではない。
何を考えるより早く強く穿ち、奥に吐き出して逸はそのまま敬吾の上に倒れ込んだ。
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