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したいこと? 5

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「よし、じゃー風呂行くか」
「えっえっ」
「なんだよ」
「しお………ふく?え?おれが?けーごさんが?」
「アホか、お前に決まってるだろ」
「………………」


呆けている逸をよそに敬吾が立ち上がる。

「今更やだとか言わねーよな」

にやりと笑いかけられて逸がびくついた。

「いやっ、敬吾さんの口からまさかそんな単語が出るとは思ってもみなくて………っていうか噴けるもんなんですか、男で」
「らしいぞ。この間風俗レポ聞かされた…………」

あまり愉快な話ではなかったらしく、敬吾がげんなりと顔を歪める。
それも逸としては少々怖い。

「ほら来い」

逸の手を引き、脱衣所に押し込むと敬吾は「脱いでろよ」と言い置いて台所へと戻った。
再び脱衣所へ来た時には水を持っていて、半裸の逸を呆れたように眺める。

「全部に決まってんだろ」
「う、」
「これ飲め」

コップを渡し、逸がそれを飲んでいる間にベルトを抜いた。
それを軽くたたんで弄ぶ姿は、控えめに見ても折檻を連想させる。
没収するようにコップを受け取ると、目で脱げと促して敬吾はそれを片付けにまた台所へと戻った。

帰ってくるまでに脱いでいなければきっと──

──ひやりとそう思いジーンズと下着を脱ぎ落とすと、戻ってきた敬吾は薄く笑った。

「後ろ向け」

よく躾けられた犬のように逸が従うと、敬吾は両手を後ろ手にまとめてベルトで縛った。
血が止まるようなきつさではないが、抜けそうもない。

「マジですか………」

敬吾は何も言わず、口の端を上げるばかり。


また敬吾の指示で逸は空の浴槽の中に座り、脚を組み合うようにすし詰めになりながら敬吾も向かいに座り込んだ。

不安と興奮と緊張がないまぜになった鼓動が苦しい。
敬吾は服を着たままだし──何と言おうか、主従感のようなものが漂っている。

裸の胸は鼓動の高鳴りを隠せず素直に上下した。
伏し目がちにそれを眺めている敬吾の表情は平坦で読めない──が、薄い唇を僅かに噛まれて逸の呼吸がさらに速くなる。
その口元が今度は月のように吊り上がった。

「お前ほんと素直だな」

そう言った敬吾の唇が近づく。

他の全てを遮断するように目を閉じて逸は、敬吾だけに浸った。

長い口づけの間、敬吾の指先が逸の中心を掬って緩く揉み始める。
頬を掠める呼気が熱い。
敬吾がくすりと笑って顔を離し、もう片手で頭を撫でてやると逸は蕩けそうに表情を緩めた。

「やばい、気持ちいい……」

そんなことを宣う辺り、まだ余裕はあるらしい。

敬吾はまた啄むように口付けてその唇を顎へ喉元へと下ろしていき、胸板からその先端へと滑らせる。
思わず仰け反った逸の肘が、浴槽に重たい一発を食らわせていた。

「ぅあはっちょっとっ敬吾さんっ!」
「んん?」
「わっ、それ……、…………!」

口の中で芯を立て始める感触が楽しい。
それを執拗に倒してやりながら逸の顔をちらりと覗くと薄く上気している。
困ったように眉根を寄せて目だけでこちらを見下ろす表情はまるで生娘だ。

思わず笑ってしまい、逸からよく見えるように舐め上げてやってからやっと敬吾は口を離す。

「お前乳首弱かったんだ」
「弱………いや………、」
「ガッチガチになってるじゃん」
「敬吾さんが……そういうことするから……」
「んん?」

基本的に敬吾はこの上ない常識人だ。
人にも自分にも厳しいし、感情に流されることを嫌う。
それでも動物である以上本能一辺倒になることは当然あるのだが、そうではなく、こうも冷静な敬吾のまま淫らな行為をしているというのは──

──ただただ、いやらしい。

ふと目が覚めてしまわないことを祈るばかりだ。

「……………お前」
「──え?」


思索から覚めて逸が視線を上げると、敬吾は少々サディスティックな笑みを浮かべていた。



「………ほんとに良い顔するなあ」
「………………へ?」






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