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彼の好み リベンジ 8
しおりを挟む「敬吾さんてバスローブ似合いそうですよねー」
「似合うも何もなくないか、そんなの」
「いや俺これ見て下さいよ」
「ぶふっ」
別段笑わせようとしているわけではないはずだが、何やら落胆したような半眼で敬吾の方に向き直る逸は確かに滑稽だった。
「なんで着たってレベルだな!」
「なんだろう……なんか着られてる……?」
「お前大概の服は似合うのになあ」
「おお……さらっとすげぇ嬉しいお言葉ありがとうございます」
逸はさほど服に拘りはないが、安物のジーンズとシャツだけでもまず様になる。
敬吾が見たことはないがスーツやロングコートの類も恐らく着こなすだろう。
そう思うから言っているだけで過度に褒めたつもりはないのだが逸はたいそう喜んでいて、しかしやはり特別なことを言った気のない敬吾はそれを無視してまじまじと逸を眺めていた。
身長も体格も顔も悪くないはずなのに何故こうもコントじみてしまうのだ。
「やっぱ敬吾さんは似合いますー」
「だぁっ、脱がすな!喉乾いた」
合わせ目に伸びた手をびしびしと叩いてやって敬吾は冷蔵庫を開け、逸は素直に離れてソファに座り、冊子を開く。
「お前は?」
「んー、ちょっとください」
「うん」
「あっ、敬吾さん!コスプレのレンタルありま」
「しねえっ」
「まあ確かにサイズがね」
「あってもしねえよ!」
「あとこう生地がなんか……ペラペラ」
ペットボトルの尻で逸の額を叩き敬吾がソファの端に腰掛けると、逸が一気にその距離を詰めた。
ばふんと敬吾が跳ねている間に伸し掛かって肩に頭を預けると、敬吾の膝にも冊子を半ば載せてそのまま眺めている。
まるで飼い主がどこへも行かないよう牽制している犬のさながら、いやらしさも何もなくて敬吾は笑ってしまう。
「犬だな……」
「……えへへ」
とは言えやはり長閑な時間は、そっと内腿に割り入る逸の指先で緩やかに終わりを告げられた。
開かれた合わせ目から胸や内腿を撫でられ、敬吾はただ瞼を俯けて早まる呼吸を零していた。
こめかみ辺りにある逸の瞳が愛おしげにそれを眺め、優しく髪を撫でている。
全く耐え難いほど甘ったるい──が。
それを理由に逸を叱りつけることが、もうできなくなっていた。
「ぁ………」
それどころかこんな甘い声まで漏れてしまう。
嬉しげに笑った逸が更に手を進め、指先で鼠径を擽ると敬吾が逸の袖口をきゅっと握った。
「敬吾さんここ弱いですよね、………」
「っや、……………っ」
「──敬吾さんほんと最近── ……嬉しい」
「…………?っなに、………っ」
快感に溶け始めた知覚の触手が、それでも不自然に飲み込まれた逸の言葉を拾い上げる。
気になる、とても気になるが──
「あ………っ」
「ひくひくしてる」
「ばかっ──」
「……ベッド行きたい?」
敬吾を覗き込んでいる逸の瞳はあからさまに意地悪げだが、弛んだ敬吾の理性の網はそれを素通りさせた。
素直に頷かれ、にやついた逸が機敏に抱き上げるとそれは流石に恥ずかしかったらしく気管あたりを一発殴る。
逸としては、それも駄々っ子のようで可愛いのだが。
ゆっくりと背中をベッドに預けられると、サテン地がひんやりしていて気持ちがいい。
心地よさそうに目を細める敬吾を見て逸は笑った。
「寝ないで下さいね?」
言いながらも優しく口づけるものだから敬吾の瞼は更に落ちる。
それを大事と見たか逸が敬吾の肩に手を差し込み、胸を晒してその先端を優しく咥えた。
途端に神経が覚醒し、敬吾の体が引き攣る。
「んっ!………………!」
舌先で転がしながら完全にはだけさせ、至るところ指先でなぞり上げる。
敬吾の体が張り詰めて縮まるのは感じ始めている証拠だ、嬉しくもあるのだが──
「……敬吾さん」
「っ、なに、っ……」
「今日我慢しなくていいんですよ?」
「………………?」
きゅ、とそこを甘噛みされて敬吾の背中が強く撓る。
叫びそうになった喉元が痛々しく張り詰めた。
また悪どく笑い、慰めるように優しく舐めてやって逸は体を起こす。
「誰にも聞こえませんから──」
自分を見下ろし、腰紐を解きながら諸肌脱ぎにローブを落とす逸を見上げて敬吾は、背中に震えが走るような気がした。
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