上 下
7 / 21
第一章

第一章7「進む先には―――。」

しおりを挟む
「もう一回行くぞ!」

 二人は氷の上を、靴の下に付けた氷の柱で走る。
 傍から見ると遊んでいるようにしか見えないが、二人は危険から逃げ続けている。

「リア!いつまで語彙力を無くしているんだ。お前の意見も十分な道筋になるだぞ!」

「ほんと?―――確かにこのままじゃマズイ。相手がこっちを把握している限り、正面からくる可能性もある。」

「正面から!?正面から来たら囲まれて詰むぞ!?」

「私たちがこんなに速く走ってるのに追いついてきてるんだよ?連携があるやつらでもおかしくない。それかなにか特殊な魔法とかがあるのかも。」

「今のところ正面には―――。いる!三方向から囲まれてるぞ。正面に3体、俺視点で南南東、南南西に3体ずつだ。俺の考えとしては正面の3体をぶっ飛ばして突破するのがいいと思うんだが?リアは?」

「私も、同じ、相手の実力は分からないけどそうするしかない。先制攻撃を仕掛けたいところだね。」

「すまんが俺は魔法を使いすぎたっぽい。リアいけるか?」

「結構自信あるよ。この杖もあるしね。」

「そうだな。撃つ魔法とタイミングはリアに任せる。」

「了解。」

 二人は2本目の氷の橋を越える。

「もう一本いるか?」

「魔法使えそうだったらお願い。」

「頑張ってみる!―――ふぅ。イプ・グラシエス!!はぁはぁ。これ以上は無理そうだ。」

「了解。よくやってくれたよ、あとは私に任せて。」

 正面にいた3体が残り100m近いところにいる。
 リアはどうするつもりなのか。

「セイナ!目を閉じて!!――――マグ・ルックス!!」

 直後、周囲5km程が真っ白になる。
 何事かと思ったが、リアが光魔法を使ったと瞬時に判断できた。
 しかし、マグは上級魔法であると、受付の人に教えてもらっている。
 そうすると、リアは今非常に危険な状況ではないのか。
 それと、この光はあの3体に効くのか。

「リア!敵に効いている様子はあるか?!」

「うん!かなり効いてるっぽい!!」

「よくやった!マナには余裕がありそうか?」

「うーん。あと2割くらいだと思う!でもちょっとまって。」

「了解。多分代償みたいなやつだろうな。そうか。なら俺が―――、イプ・グラシエス!!」

 捨て身覚悟で3本目の氷の橋を作る。

「行くぞ!リア!!」

「うん!!」



 3本目の橋を渡り終わるころにあの町、デンテイルズが見えてきた。
 後ろを確認するが、敵は追ってきていないようだ。
 町に着き、またあの門番と話す。

「こんばんわー。ってあれ?さっきの二人じゃないですか?それにとても疲れている?」

「すみません。ちょっと聞きたいんですけど、最近戦争している王国とかってありますか?」

「あーなるほど。襲われましたか。」

「質問に答えてもらえますか。」

「そうですね。今は北の王国と中央王国が対立していて、東と中央も対立している状況ですね。」

「なるほど。では、その状況を知っているのに俺たちを止めなかったのはなぜ?」

「―――。」

「ちょっと止めなって。門番の人困ってるよ。」

「でも本当のことだろ?こいつは戦争のことを知っていて俺たちはそっちの方向に行くのを止めなかった。知らない人には気を使わない人かもしれないが、さっき黙ったことでその可能性はなくなった。こいつは目的があって、俺達を行かせたんだ。何か間違っているか?」

 リアは顔を赤くし、

「それは違う。門番の人に私たちを助ける義務なんかない。現に私たちは生きてる。しかも魔法を使う経験になった。」

「ポジティブすぎるだろ。分かった。行くぞ。」

「―――。」

 門番の人は何も言わない。
 二人は町の中へ入り、宿を探す。

 丁度いい宿を見つけたのでそこに泊まることにした。ワンルームだが仕方ない。しかも話し合いがしたかったので都合がいい。

「おいリア、さっきのはどういうことなんだ?」

「さっきのって門番の人のこと?」

「当たり前だ。」

「さっき言ったとおりだよ、あの人に私たちを助ける義務なんかない。」

「そんなに殺伐とした街なのかよ、戦争も参加してねえのに。―――分かった。この話は終わりだ。そして今日の出来事について話そう。」

 そう言い、二人はそれぞれ違うベッドに入る。

「リア、お前、上級魔法使ったよな?」

「使ったね。なんか使えた。」

「使った時、どうなるか教えてもらっていいか?」

「どうなるって?」

「例えば、俺が氷の中級魔法を一回使うと、ちょっと体調が悪いように感じる。二回目だと、全身がだるくなる。三回目だと、意識が朦朧としてくる。こんな感じだ。」

「そういうことね。えーとね。使うと、5秒くらいスタンする。目の前が真っ暗になる。5秒後には全ステータスが下がってるっていうか、全デバフを食らってるっていうか、そんな感じがする。」

「なるほど。かなり分かりやすい説明だった。ありがとう。」

「ほんと?それは嬉しいな。」

「じゃあお休み。」

「お休みー。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

元悪役令嬢はオンボロ修道院で余生を過ごす

こうじ
ファンタジー
両親から妹に婚約者を譲れと言われたレスナー・ティアント。彼女は勝手な両親や裏切った婚約者、寝取った妹に嫌気がさし自ら修道院に入る事にした。研修期間を経て彼女は修道院に入る事になったのだが彼女が送られたのは廃墟寸前の修道院でしかも修道女はレスナー一人のみ。しかし、彼女にとっては好都合だった。『誰にも邪魔されずに好きな事が出来る!これって恵まれているんじゃ?』公爵令嬢から修道女になったレスナーののんびり修道院ライフが始まる!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

処理中です...