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本編

ライバル登場!?

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あれからことある事にあの女性が僕たちに接触してくるのだ。

どこで情報を得ているのか分からないが、買い物している時や飲食店でご飯を食べている時など偶然を装い無理やり同席し僕たちの時間を邪魔してくる。

話に聞くと…いや、勝手に話だした女性は隣国の第3王女、アティ・ヘスティアと名乗った。

名前を聞いた時はレオンさんと共に驚き納得した。だってわがまま王女で有名な名前だったから。


うわぁ…面倒くさそうな人に目をつけられちゃったよ…


どこぞの貴族令嬢ならまだしも隣国の王女となると国に関わってくるので下手な対応ができない。

僕はため息つきながら楽しかったはずのデートが一気につまらなく感じる。

アティ様は僕のことなんて存在しないかのようにレオンさんの隣に陣取りマシンガントークで語りかけている。

レオンさんはアティ様の話を右から左へ聞き流して無表情で当たり障りのない相槌をうつ。


あぁ…レオンさん限界が近そう…


永遠に続くマシンガントークで無の境地だったレオンさんは眉間に皺を寄せこめかみに青筋がたち始める。

爆発する前に僕は今思い出したかのように話題をふる。


「あっそうだケリーちゃんにお土産頼まれてたんだった!…僕1人じゃ好みが分からないのでレオンさん選ぶの付き合ってくれますか?」


今にも爆発寸前だったレオンさんは僕の提案に花が咲くような素敵な笑顔で「あぁ行こう!すぐ行こう!今行こう!」といってアティ様に「用事が出来たので失礼します」と一言いい僕の手を取り会計を済ませそそくさと店を出る。

店を出る際ふと後ろを振り向くとアティ様にものすごい形相で睨みつけられていた。


レオンさんの為とはいえ嘘をついたことにちょっと罪悪感を覚えしゅんとする。


「…嘘ついちゃった」


独り言のように小さく呟いたのをレオンさんは聞き逃さなかった。


「アサヒは俺の為に言ってくれたんだろう?あのまま話続けられたら俺は気が狂いそうだった…ありがとう助かった。だからそう落ち込むな。アサヒは俺を助けたんだ」

「…むぅ」


レオンさんはしょげている僕のほっぺをむにむにして満足そうに笑っている。

嬉し恥ずかしい気持ちでさっきまでのモヤモヤした気分が晴れていく。

その後も何度がアティ様の襲撃に合うが僕たちも何かと理由を付けかわし続けたらある日を境にぱったりとアティ様の突撃が無くなった。

やっと諦めてくれたのかと一安心したのもつかの間…どうやってつきとめたのか分からないが僕たちの泊まっている別荘へ乗り込んできた。

ズカズカと乗り込み自分の家かのごとくくつろぎ勝手にレオンさんの婚約者だと言い張るアティ様に僕はブチ切れた。


「なんなんですか!!さんざん僕たちのデートを邪魔したり勝手にレオンさんを婚約者だと言ったり、挙句の果ては別荘まで乗り込んできて!!レオンさんは僕の婚約者でお互いに愛し合ってます!!王女様だからって何でも思いどおりになるとは思わないでください!!」


大声で怒鳴る僕を見てぽかんと呆然とするレオンさんとアティ様。

心に溜め込んだモヤモヤを吐き出すように僕ははじめて大声で人に向かって叫んだ。捲し立てるように一息で言い切ったことで僕は呼吸が浅くなり肩で息をする。

呼吸が整ってくるとあれだけ沸騰していた頭の熱が冷め冷静になり一気に青ざめる。


ぼ、ぼく王女様に向かって…怒鳴ってしまった…


「あ、あの…」


なんとか取り繕うと話しかけたがアティ様はバンっと机を叩き立ち上がる。

アティ様は真っ赤な顔でぷるぷると震えながら怒りの形相で僕を睨みつける。


「貴方っ!平民の分際で…私に向かってなんて口の利き方なのっ!?お父様に言いつけてやるわっ!平民のくせに私に怒鳴り散らかすなんて!!後悔するがいいわっ!」


アティ様はドカドカと大きな足音を立てて帰っていく。

僕はただ呆然と後ろ姿を見つめるだけで頭の中はパニックだった。


「ど、どうしよぅ…僕、王女様に向かって…うわぁっ!?」


どうしようとオロオロしていた僕をレオンさんに突然ぎゅと抱きしめられる。ビックリしていたらそのまま顔を上げさせられ強引にキスされる。蕩けるような甘いキスに僕の脳みそはパンク寸前だった。


「あぁ、アサヒ…好きだ…愛してる」


突然の愛の告白に戸惑う僕を無視して囁き続ける。


「『愛し合っている』いいな…いい響きだ。アサヒが俺のために怒ってくれたのもグッときた…もう我慢ならない…抱き潰す」

「…へ?」


何か小声でブツブツと呟くレオンさんに僕は首を傾げて見上げると「うぐっ…」と顔を赤らめたレオンさんはガバッと僕を抱き抱えて寝室へ直行する。いまだ状況が呑み込めてない僕はされるがまま寝室へ連れ去られどろどろで深い愛に飲まれていった。




愛されすぎて寝落ちた僕は、レオンさんが魔道手紙で国王に今日の出来事を報告していたなんて知る由もなかった。






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