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本編
心の傷とこれからの事を
しおりを挟む僕は今ベットの上でレオンさんに抱きしめられている。そのレオンさんは涙を流しながら僕の名前を何度も何度も呼ぶだけでこの状況のなんの説明もない。
え…待って何事…?なんでレオンさん泣いてるの?
僕の記憶はレオンさんとの婚約パーティで各国の重鎮の方々との挨拶をしたあたりで終わっている。
なんで邸のベットに寝ているのかさえ分からない。
なにか大事なことを忘れている気もするがなんなのか分からない。泣いているレオンさんに抱きしめられながら1人頭を悩ませていると部屋の扉が開いた。
開いた扉へ顔を向けるとそこにはダルイズさん、アリルさんが入ってきた。
2人は泣いているレオンさんを驚いた目で見ていたが直ぐ僕に目を向け優しく話しかけてくれる。
「アサヒ君良かった、目が覚めたか…身体の調子はどうだ?」
「少しダルいですけど特に問題ないです」
「そうですか、良かったです。ですが1週間も寝ていたので無理は禁物です。なにか身体に不調を感じたら直ぐに教えてくださいね」
「え…1週間?…僕1週間も寝ていたんですか?」
驚きすぎて聞き返すとアリルさんは困った顔をしながら答えてくれる。
「はい、過度なストレスと薬の影響です。身体の傷は治療すれば治りますが、心の傷を治す方法は難しいでしょう。」
「心の…傷」
僕は小さな声でアリルさんの言った言葉を呟く。アリルさんが何の話しているのか全く分からないが僕が心に傷を負って1週間も寝込んだことは理解出来た。
そしてアリルさんたちと話している際も泣きながら僕を抱きしめているレオンさん…きっと僕に何かあってそれを悔やんで泣いているのだろう。
僕はゆっくりと腕を上げレオンさんの背中に回す。するとビクッとレオンさんの身体が揺れさっきまで泣きながら僕の名前を連呼していたレオンさんの声がピタリと止む。
「レオンさん…心配かけてごめんなさい。僕はここにいますよ」
「アサヒっ…アサヒっ…」
再び泣き出してしまったレオンさんの背中を撫でながら僕はこれからの事を考える。
あれからレオンさんは落ち着きを取り戻した。僕の前で泣いたのが恥ずかしかったのか少し顔が赤かった気がするなぁ…な?なんてこと考えていたらダルイズさんから声がかかる。
「アサヒ君、目が覚めて早々に悪いんだが1週間前…何があったか覚えているか?」
真剣な顔で聞かれ部屋の空気が一気に静まる。
1週間前は婚約パーティの日…うーん…思い出せない。
「すみません…記憶が曖昧で…各国の重鎮さん達の挨拶まで覚えているんですけど…その後が思い出せなくて…」
「アサヒ…無理して思い出そうとしなくていい。むしろあんなこと忘れていた方がいい」
僕の大好きな大きな手で優しく頭を撫でてくれるレオンさん。たったこれだけの事で気分が上がる。
少しほっこりしていると扉からノックが聞こえレオンさんが返事をすると執事のセバスさんが入ってくる。
「旦那様、元帥閣下がご到着されました。応接室にお待ち頂いております。」
「すぐ向かう…アサヒも一緒に来てくれ」
「うわぁっ」
そう言うとレオンさんはベットに座っていた僕をいきなり横抱きにし元帥閣下の待つ応接室へ向かい歩いていく。それに続きダルイズさんとアリルさんもついてくる。
記憶はないけど僕一応目が覚めたばかりの病人だよね!?
僕は今から何が始まるのか…気が気ではく心臓がドッキンドッキンだ。
寝巻きのまま国の偉い人と会いたくなくて、せめて着替えさせてぇえええっと心の中で叫んだが気づいた時には既に遅かった。
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